第132話 四聖獣
奏達は、入ってすぐに驚いた。なんと、石像があったのだ。しかも、その石像はルーナ達のもの。それを見て言葉を失ってしまった。
すると、その時じいさんが話しかけてきた。その話によれば、その石像は最近できた新しいものらしい。だから、まだ完成形では無いとのことだ。
よく見れば、他の石像は首がもげてたり、服を剥がされ乳房が丸見えだったりと、とんでもない姿の石像になってた。
(もしかして……ルーナちゃん達が帰ってこなかったのってこれのせい?)
そんなことを思いながら3人は街の奥へと入っていった。
━━一方その頃真耶は、入る場所を探して壁を歩いていた。その道中にわかったことだが、この街には正面の門以外に出入口が無いらしい。
だから、あの門から入るかもしくは……
「壁を壊すかだな。多分それが1番無難だろう」
そう言って壁に手を触れた。神眼で材質を確認したところ、どうやらこれは壊せる材質らしい。
ちなみに、あの金ピカのVIPルームの壁は、何かしらの効果が付与されていた。だから壊れなかったようだ。
「フッ、天眼なしのジャッジメントアローだとなんにも聞かなかったしな。恐らく何かしらの妨害効果でもついてるのだろうとは思っていたが、ほぼ俺対策だな。粒子化激減……無効にしなかったのは愚かだ」
そう言って壁に手を置いた。だが、やはりこの壁を粒子化させるのは困難だ。魔法を使っても、静電気力が強くてなかなか粒子が離れない。
だったら、離すんじゃなくて消してしまえば良い。この世界からその事象が無くなってさえしまえば、いくらクーロン力が強くても関係ない。
「フッ、”消えろ”」
真耶はそう言って壁を消した。すると、中が丸見えになる。それに、警報もならない。どうやら成功したらしい。
真耶は周りを1度確認すると、中に入っていった。そして、壁を元に戻す。これで証拠は無くなった。真耶は中に入るとすぐに奏達の居場所を確認した。
どうやら橋は通過できたらしい。じいさんが何も疑わずに石像を見つめている。
クソ……俺のルーナをそんなエロい目で見やがって。必ずその目を潰して口から放り込んでやる。
「さて、変なことは考えないでさっさと始めるか」
そう言って誰にもバレないように街に降り立つと、真耶はカジノへと入っていった。
カジノに入るとそこは大変なことになっていた。なんと、既に奏達がゲームにはまりこんでいるのだ。やはり、ゲームなどさせるべきではなかった。
「おい、奏なんでゲームしてんだよ」
「え?だって、楽しいんだもん」
「……はぁ」
真耶は小さくため息をついた。なんで俺はこんなことをしているのだろうか?早くルーナ達を助けないといけないのに。
「あのなぁ、お前らこんなところで……っ!?」
その時、突如視線と殺気を感じた。それはまるで、何百人もの生物を殺し続けてきた魔王のような殺気だ。
まぁ、真耶よりは小さいな。だが、それでもこの中で真耶にだけ向けてきているということは、それだけの実力者だということだ。
「……お前か?」
真耶はかなり遠くにいたこちらを見つめる男にそう言った。カジノの中はかなりうるさい。こんなにうるさいと、声もろくに聞こえない。しかし、その男は頷くとこちらに向かってきた。
その男は、どこか変だ。なんせ、体が真っ白だから。それに、白い光を放っているし、虎の毛皮のような服を着ている。
「何者だ?」
「……」
真耶の問いに答えない。代わりに目を指さしている。目?……何かしらの目の力を使えということか?
「もしかして……なぁ、奏達はこいつの姿が見えるか?」
「え?誰のこと?」
「やはりな」
真耶は何かを確信すると左目を白くした。魂眼だ。真耶はその目で男を見た。
『フッ、ようやく話せるな』
男は安心したように笑うと話を始めた。
「そうだな。それで、俺になんの用?」
『ちょっと、クロエから頼まれてな』
「何?」
『お前に力を与える。この俺のな』
男はそう言って青い塊を真耶に投げてきた。それは、真耶にぶつかると吸い込まれるように真耶の左目の中に吸い込まれていく。そして、目の前に文字が現れた。
【特殊スキル、想像眼、解放しました】
『それを使って世界を救え』
男はそう言って消えていった。その後微かにクロエの気がした。その気はだんだんでかくなっていき、目の前にクロエが現れた。
クロエは何故か露出の多い服を着ている。たしか、日本で童貞を殺す服とか何とか言われていた服だ。
「……恥ずかしいなら着るなよ」
『だってぇ!』
「てか、あれ誰だよ。それに、急に力をくれたんだが」
『彼は白虎よ。四聖獣の白虎』
ほぅ、かなりすごい人だったな。まさか、白虎とは思わなかった。
「お前、よくそんな人と仲良くなれたな」
『彼はマヤに会いたかったらしいからね。あなた、死人の世界では有名よ』
なるほど、どうやら俺は生きている人に対してはモブが発動するが、死んでいる人には発動しないらしい。
「それは良い事だな。それで、クロエは何しにきた?」
『遊びに来た』
「じゃあ帰れ。これ以上お前がここにいて魂まで消されては困る」
『今回の敵はそんなに強いの?』
「相手がどんな技を使うかわからん。攻撃パターンが93通りあるからな。どんな攻撃が来るか俺でもまだわからん」
真耶はそう言うと奏達の方を向いた。そして、小さく手を振ると奏達のいる場所まで歩いていく。クロエはその背中を静かに見送った。
「あれ?まーくん誰と話してたの?」
「クロエだよ」
「えぇぇ!?クロエちゃんいたの!?そうなんだ……良かったね。会えて」
「いや、会おうと思えばいつでも会える。そんなことより、お前らいつまでゲームをやってるんだ?」
真耶がそう聞くと、4人は黙ってゲームをし始めた。これは、お仕置が必要だな。
「お前ら後で裸で30キロ走ってもらうからな」
真耶がそう言うと、いつもは泣きながら土下座してくるのに、何故か泣きながらゲームをする手を止めない。
なるほどな。このゲーム自体に何かしらの魔法をエンチャントしているわけか。
真耶はそう思って神眼を発動した。すると、やはり謎の効果がエンチャントされている。真耶は、てくてくと奏たちに近づきその台を破壊した。すると、奏達の目が覚めたようだ。はっとしてすぐにキョロキョロと周りを見た。そして、即座に土下座を決め込んできた。
「目が覚めたか?」
「はい……すみません……」
「よろしい。……フッ、いい感じに騒げたからそろそろ行こうじゃないか」
真耶はそう言ってVIPルームに向かって歩き出した。
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