第130話 死闘の末の撤退
真耶は、無くなった自分の右腕を見つめた。そこからは大量の血が流れ落ちる。恐らくこのままでは出血多量で死ぬだろう。
まぁ、血は増やせるからいいけどな。だが、右腕が治らないとなると困る。片腕でどこまで戦えるか……。
そもそも、なぜ右腕を切られた?あのスロットのようなものが1を揃えた瞬間に俺の腕は切られた。確か、あのスロットのようなものからなにか出ていたな。
「斬撃か……」
真耶は小さく呟いた。そして、右目を開いてクロニクルアイを発動させた。そして、右腕の時間を戻す。しかし、腕は治らなかった。
どうやら時間を戻しても無駄らしい。やはり、あいつを倒さなければいけない。
「チッ……」
真耶は小さく舌打ちをすると、クロニクルアイの力で右腕の時間を止めた。右腕を深緑色の光の球体が覆う。そして、その球体をいくつかの文字が好転し始めた。
「”物理変化”」
真耶は魔法を使い左手の手のひらに高電圧の雷を作り出す。
「そんなもので戦うのか?」
男は聞いてきた。真耶はそれに対し不敵な笑みを浮かべて言った。
「まぁな。死ね。”虎雷”」
真耶はその雷を虎のような形に形状を変化させ飛ばした。ちなみに、この雷は自分の魔力を変化させたものだから、遠隔操作が可能だ。
真耶のはなった虎は、ジグザグに移動しながら男に向かって飛んで行った。しかし、男は平然とその場に立ち、スロットのようなものを回した。
スロットのようなものは、3の数字を揃える。すると、真耶のはなった虎は跳ね返って来た。
「”物理変化”」
跳ね返ってきた虎は一瞬で消される。なんせ、作るのは簡単だし、消すのも簡単だからな。
だが、そんなことはどうでもいい。今のでわかったことは、こいつには魔力を帯びた攻撃は通用しないということだ。跳ね返されたらたまったもんじゃないからな。
それに、この部屋の壁は以上に硬い。恐らく倒壊させるのを狙っても壊れはしないだろう。
「逃げるか……」
「おっと、逃げてもいいのか?お前らの大切な仲間がどうなっても知らないぜ」
「……”吹っ飛べ”」
真耶は左目に太極図を浮かべながら言った。すると、男は突然壁まで飛ばされ壁に叩きつけられる。
「っ!?」
どうやら突然の魔法には対応できないらしい。だったら、不意打ちを狙い続ければ……いや、不意打ちが2回も来れば対策をするのは簡単だ。
だったら、防御不可能の技を使えばいい。例えば、直接精神を破壊する魔法とかだ。だが、それさえも跳ね返されれば元も子もない。やはり肉弾戦か……
真耶はそう考えると、すぐに走り始めた。そして、一瞬で相手との間を詰める。そして、もう一度手のひらに雷を発生させ貫こうとした。
しかし、当然のようにスロットのようなものを回す。しかし、遅い。
「っ!?グハッ!」
真耶は男の胸を手で貫いた。
手を引き抜くと、血が流れ落ちる。男はそのまま膝から崩れ落ちた。
「さて……っ!?何!?」
なんと、男は再び立ち上がった。胸の穴は塞がっており、傷1つない。そして、スロットのようなものをよく見ると、9の数字が揃っている。
どうやら傷を治したらしい。真耶は男を神眼で見た。体の細胞が早いスピードで不満烈している。どうやら再生したと言うより、体の細胞分裂を早めたと言ったかんじだ。
「残念だったな」
男はそういうと、真耶を蹴り飛ばそうとした。真耶はそれをスレスレのところで避けると、顎を狙ってバク転しながら蹴り飛ばす。
感触はあった。しかし、男には当たっていない。スロットのようなものを見ると、数字がまばらだ。どうやら、揃わなくてもあたりらしい。
「また奇妙な技を使いやがって。……”断罪之矢”」
真耶は詠唱無しで金色に光る矢を作り出した。そして、その矢を間髪入れずに放つ。しかし、その矢は通用しない。
やはり、どこも消すことが出来なかった。
「やっぱ片手じゃ威力は落ちるか……」
このままではいずれやられる。どうやってこの男を殺すかが分からない。逃げるのが先決だ。
そう頭の中で考えていると、突如胸に痛みを感じた。よく見れば、男の腕が胸を貫いている。しかも、左胸を……
そして、スロットのようなものを見ると、7が揃っている。
「残念、フィーバータイムだ」
「残念なのはお前だよ。”時喰い”」
このまま時間を喰って殺してやろうと思った。すると、驚きのことがわかった。
なんと、時喰いは通用するらしい。男も苦しい顔をしている。このまま吸い尽くす……
「クソがァッ!」
「っ!?」
男はとんでもない方向をあげると真耶を吹き飛ばした。なんという力の強さだ。だが、もうここまで……俺の限界が来た。一旦逃げるしかない。
真耶は左目を見開いた。そして、空間の扉を作り出す。ついでに右目も見開いて、時喰いの呪いをルーナ達につけた。これで、ルーナ達に触れる者の時間を間接的に喰らうことが出来る。
「じゃあな。また来るよ」
真耶はそう言い残して空間の扉の中へと入っていった。そして、空間の扉はすぐに閉じ、その場に静寂がもたらされた。
━━一方その頃、奏達は……
「なんだか嫌な気がします」
「ふ、ふぇぇ?」
「ほんとですね。なんだか、マヤさんが片腕を失って吐血しながら血の涙を流して帰ってきそうです」
「そ、そんな怖いこと言わないでよ……え?」
その時、4人の目の前に謎の空間の扉のようなものが現れた。それは、青く光っており、どこかで見たことがある。
「クッ……」
その中から、突然真耶が飛び出してきた。真耶は右腕を失っており、血まみれだ。それに、出てくるなりいきなり吐血をして、血の涙を流す。
「言った通りになっちゃった……」
クロバは小さく呟いた。
「そんなこと言ってないで、早く傷を塞がないと!」
突然奏がそう言って起き上がると、真耶に魔法をかけ始めた。そして、すぐにベットの上に寝かせて治療を始めた。
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