第129話 VIPと悪魔
真耶は慌ててカジノへと戻って来た。すると、ルーナ達がVIPルームに入っていくのが見えた。
「ルーナ!待て!」
真耶は慌てて駆け寄る。しかし、VIPルームの扉の前では男の人が立っており、入れさせてくれない。
「おい、退けよ」
「相応のコインを見せてください」
「黙れ。早く退け」
「相応のコインを見せてください」
その男はまるで壊れたラジオのように同じことをただ繰り返すだけだ。どうやら何があっても真耶を中に入れたくないらしい。
いや、真耶を入れたくないというより男性を中に入れたくないみたいだ。
「あの、すみません……」
すると、後ろから声をかけられた。2人の女性だ。どうやらVIPルームに入りたいらしい。
「あ、すみません……」
真耶はその場から離れると、VIPルームの門番を見た。どうやらコインを見せれば良いらしい。だが、偽装は出来ないみたいだ。何かの魔法で確認している。
「ねぇ!私も入れてよ!私もこんなに手に入れたのよ!」
突然女性が慌てて門番の前に来た。その女はコインを見せ門番の男にすがりついている。
「……偽物ですね。罰を与えます」
突然そんなことを言い始めた。どうやら偽コインだったらしい。だが、罰とはなんだ?
「……ん?」
なんと、影から人がでてきた。その人は、その偽コインを使った女を捕まえると、その場で服をぬがし犯し始めた。
「……チッ……」
まずいな。これでは俺も偽コイン作戦が使えない。さっきあの男が確認していたのは何かしらのマーキングだ。だが、俺はそれがどこにあるか分からない。
もしバレたとして乱闘になっても困る。多分勝てるが、VIPルームには入れなくなってしまう。
「……こうなったらあれを使うか……」
真耶はそう呟いて1度外に出た。そして、さらに街の外まで出て誰も見てないところまで行くと体を女体化させた。
「よし。真耶ちゃん2回目だな」
そう言って街の中に入っていく。すると、やはりあの爺さんがいた。爺さんは真耶の顔をジロジロと見つめると、にっこりとして見送ってくれた。
そして、すぐにカジノへと向かう。カジノに着くと、前に来た時と同じようにコインが貰えた。
「だいたい1000コインか……」
真耶はコインの数を見て、すぐにポーカーテーブルへと向かう。ここが1番早く稼げるからな。
「ようこそ。何枚ベットしますか?」
「1000枚ですわ」
そう言って持っているコインを全て出す。すると、カードが配られてきた。ここは、普通のポーカーとは違う。勝ち負けを気にすると言うより、役を出せば良い。
ロイヤルストレートフラッシュを出せば大量のコインを貰える。
真耶は上に書いてある役の種類を見ながら配られたカードを見た。
「っ!?……フッ、勝ちですわ。もういいですわよ」
「わかったわ。じゃあ、カードを表にしてね」
そう言われたからカードを見せた。その役は、ロイヤルストレートフラッシュだ。
「っ!?すごいわ!10万コインのプレゼントよ!どうする?このままダブルアップする?」
そういえば忘れていた。ここにはダブルアップというものがあるらしい。看板に書いてある。3枚のうち1番高い数字を当てれば良いらしい。
真耶はすると言って、目の前に出されたカードの右のやつを選んだ。それは、1番高い数字だった。
成功だ。その次もした。成功だ。その後も、その後も、何回も繰り返した。その全てを成功させ、いつしかコインは1億以上のコインとなっていた。
「ここで止めさせていただきますわ」
「はい。すごいわ!1億以上のコインを稼ぐなんて!」
「お褒めに預かり光栄ですわ。あの、VIPに行くにはこれで十分でしょうか?」
「当たり前じゃない!足りすぎて余りが出るくらいよ!」
そう言って親指を立てて笑顔を作ってきた。どうやらこのバニーガールはフレンドリーな人らしい。
真耶はコインを持ってVIPルームの前まで来た。
「お願い致しますわ」
真耶がそう言うと、男は確認し始めた。そして、その場を退いてもんを通っていいという仕草をする。どうやら成功したらしい。
真耶はそのまま中に入らせてもらった。
中に入るとそこは、VIP感が凄かった。壁や床、天井は全て金でできており、椅子やテーブルも全て金だ。
「金かけてんな」
その様子につい男のような口調が出てしまう。真耶はその様子に半分呆れながらもルーナ達を探した。
「……あれ?居ない?」
「誰を探しておるのかのぉ」
「っ!?」
後ろから声がした。急いで振り返ると人がいる。さっきの爺さんだ。
「いえ、先程私の友達がこちらに入ったのですが、見当たらなくて」
「当たり前じゃのぉ。なんせ、石になっとるからの」
そう言って指を指した。その先には、なんと石になったルーナ達がいる。
「っ!?貴様!何をした!?」
真耶はそう言ってすぐにその場を離れた。
「フォッ、フォッ、フォッ……お主の正体に気づかんと思ったのか?わしとで……いや、俺もそこまで馬鹿じゃない」
そう言って爺さんの体は黒いマントを着た若い男へと変わった。
「さぁ、始めようか。戦い《ギャンブル》を」
男はそう言って手を前に突き出した。すると、スロットのようなものが現れる。そのスロットは3の数字を揃えると、突如炎を出てきた。
その炎の威力はかなり大きかった。広範囲に広がるせいで、逃げ遅れ服が焼かれる。そのせいで、女体化真耶のつるつるすべすべの白く綺麗な体が顕になった。
「ほぅ、女体化してたのか。胸までちゃんとあるとは……予想外だ」
「お前も、爺さんに化けるとは洒落てるな。”物理変化”」
真耶は体に魔法をかけ男に戻る。そして、ついでに服も元に戻す。
「……すぐにあいつらを元に戻させてもらう。”世界を裁け、悪を断絶しろ、金色に光る制裁の矢……断罪之矢”」
真耶は一瞬で詠唱をして金色に光り輝く矢を形成した。その矢は一瞬にも満たない速度で男に向かっていくと、すぐに突き刺した。
そして、後ろの壁にぶつかり壁すらも消滅させる……と、思ったがまさかの消えることは無かった。それどころか、男は消えていない。
金色に光る矢は男には全く通用しなかった。
「ガッカリだな」
そう言って男は1を揃えた。その時、真耶の右手が切り裂かれた。肘よりちょっと上から真耶は右腕を失う。
「っ!?”物理変化”……
何!?」
なんと、腕が回復しない。なぜか新しく作れないのだ。
「残念だったな。もうその腕は俺を殺さないと治らない」
そんなことを言って気色の悪い笑顔を作る。
「絶対絶命じゃないか……」
苦し紛れに真耶は小さく呟いた。
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