第128話 カジノの恐怖
門をくぐった先にあったのは、謎の石像だった。
どうやらこの街は地下に宿や武器屋があるらしい。そして、上にはカジノがある。どちらも階段で移動できるみたいだ。
だが、それ以上に謎なのは、この街は入ってすぐに橋がかけてあるのだが、その橋の端の方に女性の石像が所狭しと並べてある。どの石像も、まるで生きているかのようだ。
「悪趣味な像だな」
真耶はボソリと呟いた。すると、突然何かとぶつかった。気がつけば、目の前に人が立っている。その人は、そこら辺によく見るご老人だった?
「あ、悪い」
「……」
2人はそんな会話だけして別れる。
「っ!?」
その時、男からとんでもないほどの殺気……いや、殺気と呼べるのかも分からない謎の気を感じた。
「どうしたのですか?マヤさん」
「ルーナ、お前は何も感じなかったのか?」
「何も感じなかったですよ」
どうやら真耶にだけ感じさせるような何かを飛ばしてきたらしい。
その時、初めて真耶の頬に冷や汗が垂れた。そして、真耶の胸の奥からふつふつと何かが湧き上がってくる。
「……フフフ……フハハハハハ!」
その時の真耶はとんでもなく気分が高揚した。なぜなら、初めてまともにやり合える男を見つけたかもしれないと思ったからだ。
そして、それと同時に警戒心を最大にした。この先何か良くないことが起きる。そんな気がしたからだ。
「はやく、行きましょうよ」
ルーナはそう言って真耶の手を握った。そして、走って真耶を引連れていく。真耶はそんなルーナに置いていかれまいと、少し小走りで追いかけた。
いざ、階段を上がってみるとそこは楽園だった。どこを見渡してもゲームしかない。まるでゲーセンだ。
それに、どうやらコインを出す条件は緩いしルールも優しいみたいだ。なぜか、皆儲けている。
「そんなに簡単なのか?それとも皆強いのか……」
そんなことを頭に思い浮かべる。確かに、皆ゲームに強かったと思えばいいのだが、それにしても異常な光景だ。
どの人を見ても儲けている。損している人など見当たらない。
「ん?」
その時、真耶の視界にあるものが写った。それは、VIPルームに入ろうとする女性だった。どうやらその女性はコインの量が基準を超えたから入れるみたいだ。
「マヤさん、遊ばないのですか?」
ルーナが聞いてきた。どうやら俺が遊ばないから誰も遊んで無かったらしい。
「いや、遊ぶよ」
真耶はそう言ってそこら辺のスロットの台の前に立った。どうやらスロットには一人一人椅子があるらしい。真耶はそれに座ってスロットマシーンにコインを入れた。ちなみにこのコインは入った時にボーナスとしてもらったものだ。
━━それからは酷かった。正直に言って、酷すぎた。まさか当たりが1つも出ないとは思わなかった。
あれから真耶はスロットマシーンで遊んでみた。すると、全く当たりが出ない。ルーナ達は当たりが出まくって騒いでいたのに、真耶だけ当たりが出ない。
そのせいで、スロットマシーンはただのコイン掃除機となってしまっていた。
「何でだ?」
真耶は半分呆れながらその場に立ち上がると、周りを見渡した。やはり、他の人はかなり儲けている。
だが、よく見ればここは女性ばかりだ。中には男性もいるが、全く儲けていない。
何か裏がありそうだ。これは調べる必要があるな。
「悪ぃ、俺ちょっと武器やとかに寄りたいんだ。だから、一旦カジノから出るよ。何かあったら呼んでくれ」
真耶はそう言ってカジノから出ていった。ルーナ達は、顔を見合せて真耶を追いかけようとしたが、なぜか体が動かない。
それどころか、勝手にカジノに向かって行ってしまう。そして、ゲームの廃人となってしまった。
一方真耶は、カジノから出て直ぐに神眼で建物を見た。変な魔力とかは無いらしい。だが、1つ気になるものがあった。
橋の石像だ。なぜかこれにはかなりの魔力が込められている。それも、人一人分の魔力だ。
「……もしかして……」
「そこの君、何をしてるんだ?」
突如後ろからそんな声がした。振り返ると、奇妙な笑みを浮かべるおじいさんがいる。
「……いや、この石像の子が可愛いなぁって思ってさ」
「フォッ、フォッ、フォッ……もしかして君は……」
「なんでもないですよ。ただの旅人です。それじゃあまたどこかでお会いしましょう」
真耶はそう言ってその場を離れた。そして、階段をおり、宿に向かう。
真耶はその道中橋を見上げた。すると、さっきのおじいさんが奇妙な笑みを浮かべてずっとこっちを見つめている。
やはり何かあるみたいだ。試しに時眼を使おうとしたが、あの爺さんに邪魔された。
多分だが、あの爺さんは俺の能力を知っている。そして、あの石像に何か秘密がある。だから、俺を警戒して何も差せないようにしてるんだ。
真耶は少し警戒しながら宿に入った。そして、部屋を取り外に出る。まだ見ている。真耶はさらに武器屋に入った。
「いらっしゃい」
「悪いな。鉄くずをくれないか?」
「鉄くず?そんなんいくらでもくれてやるよ。なんでそんなのが必要なんだ?」
「俺は錬金術師でね。鉄くずで武器が作れるんだ」
「なるほどな」
「それと、1つこの街について聞かせてくれないか?」
真耶がそう聞くと、武器屋のおじさんは目を見開いて恐怖心を煽るような顔をした。
しかし、真耶にそんな顔は通用しない。それを悟った武器屋のおじさんは少し笑って言ってきた。
「フッ、どうやらお前には通用しないみたいだな。いいぜ、教えてやるよ」
「助かるよ」
「フッ、あれは少し前だな。世界がめちゃくちゃになったあと謎の爺さんが来てこの街をカジノに変えたんだ」
武器屋のおじさんの話はそこで止まった。
「それだけか?」
真耶は純粋に聞いた。すると、武器屋のおじさんは周りをキョロキョロと見渡しながら小声で言ってきた。
「なぜかこの街のことは誰にも話しちゃいけないんだ。それに、あの石像に関しては俺も知らない。気がついたら増えてやがるんだ。それも、カジノで大儲けした人がいた次の日にな」
そんなことを言って冷や汗を垂らす。別に、そんなホラーな話じゃないんだから冷や汗なんか垂らさなくていいのにな。
だが、なんだかこの話はよく聞く話だ。だとしたら、俺の予想通りでいいだろう。そして、俺の知ってる対処法でもいいはずだ。
「まぁ、知ってる対処法って言っても、ただ悪いやつをぶちのめすだけだがな」
だが、まぁ、今の話でだいたい確信した。まず、ボスはあの爺さんだ。そして、あの石像は生きている。だが、何となくだが時眼は効かない気がする。
「早急に何とかしないとだな」
真耶はそう呟いて武器屋から出た。上を見ると、爺さんはもう居ない。そのせいか、ルーナ達のことが突然心配になった。
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