第127話 騒動
━━それから3時間ほどでカジノの街に着いた。かなり飛ばしてきたからこんなに早くついたが、本来は8時間ほどかかるだろう。
「さて、着いたな。……ここがジェルムの街か……」
「マヤ様、カナデ様が中で緊急事態と叫んでいます」
「は?え?どゆこと?」
フェアリルは、街に着くなりいきなりそんなことを言ってきた。幸いなことに、自分達がいるのはまだ街の外で、門から少し離れているところだから中に入っても壊されることはないだろう。
「おい、奏!大丈夫か?」
「まーくーん!緊急事態だよー!」
声がするのは風呂場だ。声からしてかなり慌てているのだろう。少し泣いている感じがする。
「どうした!?」
真耶はそう言って風呂場のドアを開けた。すると、裸でお尻の方に手を伸ばす奏がいた。
「……なにやってんの?」
真耶は8割くらい呆れながらそう聞く。すると、奏は驚きのことを言い始めた。
「それがね……こんくらいの鉄球があったんだ」
そう言って手で大きさを示す。その大きさは、手のひらサイズと言った感じだ。……どこかでそんなものを見た事がある気がする。
「で、それがどうした?」
「それがね、こういうお菓子があったら美味しそうだなーって思ってたら、急に形が変わったの。こんな小さなビーズみたいなのが着いた紐に。そのビーズが柔らかくで、隙間なく詰め込まれてるんだよ」
そんなことを言う。全く話が読めない。だが、俺はそんなものを見たことがある気がする。
多分隙間がないと言うのは紐自体が見えないということだろう。そのビーズみたいなのが連続してくっついてあるのだ。
「で?それがどうした?もしかしてケツの穴に入れたのか?」
「違うよ!そんな事しないよ!……それがね、急に動き出して口の中に入ってきたんだ……」
「はぁ?」
「最初はキツかった……でも、長くてそれが喉をスルスルと入っていって……それで、お腹の中に……すっごく重たくて、お腹の中が冷たくて、重たいの……!」
全く言ってることが分からない。口に入ってきた?そんなことがあるのか?それに、普通に入ってきてきつかったんなら吐き出せよ。
……てか、多分その口の中に入ってきたやつは俺の魔道具……というか、拷問用の魔道具だ。元々誰かを捕虜にして情報を吐かせてやろうとか思ってたんだが……まさか、こんなことになるとは。
「別に、お前から情報を奪おうなんて思ってなかったんだけどな」
「ふぇぇ?」
「それ、多分放っといて大丈夫だよ。腹の中が冷たくて重たいのは少しの間だけ。その後うねうねしながらケツの穴から出てくるから」
「ふぇぇ!?や、やだよぉ……とってよぉ」
いや、とるも何も、腹の中にあるものをどうやって取り出せと?
自然に出てくるんならそれでいいだろ。それに、勝手に人のもので遊ぼうとするからそうなる。
「尻を叩けば出やすくなるぞ」
「ひぃっ!や、やだぁ」
全部嫌じゃねぇか。提案したら全て拒否された人とと同じ気分だ。もしかして、こいつはあれか?話を否定から入るやつか?俺の嫌いなタイプだ。
「そんなんじゃないよぉ」
奏は泣きながらそう言ってきた。どうやら極限状態で真耶の思考を読み取ることが出来るようになったらしい。
まぁ、それはそうとして、さっきから奏の腹がうねうねして気持ち悪い。まるで、ドジョウかうなぎを丸ごと飲み込んで腹の中で生きていたかのようだ。
「……腹の中にバジリスクでも飼ってるのか」
「うぅぅ……わけがわかんないよ……」
奏はそう言ってついにへたりこんでしまった。それと同時にお腹がうねうねしなくなった。
「……はぁ、そろそろ出てくるから我慢しろ。そもそもな、それはムチとアメを与える拷問道具なんだよ。初めは口から入りきつい思いをさせる。そして、腹の中で重たく冷たいという不快感を与えさせる。それだけムチが溜まっている状態で、最後にお尻から出てくるという快感を与えさせる。そういう魔道具だ。大抵この魔道具を使った人は1週間くらいは感度が高くなるし、抜いた1時間後ぐらいまで痙攣が止まらない」
真耶のその言葉に奏は放心する。どこにそんな絶望する要素があったのか分からないが、やってしまったものは仕方がない。
「我慢しろ」
真耶はそう言ってみんなを引連れてその場から離れていった。多分真耶なりに気を使ってくれたのだろうが、今はずっと見ていてくれた方が安心できたのに。とか、奏は思う。
そんなことを思っていると、お尻がムズムズしだした。そして、なんだか出てくる気がする。
「や、や、や……」
「おい、まだか?」
その時、突如真耶が入ってきた。そのせいで驚いで全身の力が緩む。そして、遂にお腹の中にあった重たくて冷たいものが飛び出してきた。
「っ!?ふわぁぁぁぁぁぁぁ!」
とんでもない悲鳴をあげたあと、奏はぐったりしてその場で痙攣をし始めた。ピクピクと全身を動かす。そして、顔を真っ赤にしてただ目の前を見つめている。
「……」
真耶は気まずくなってその場を逃げ出そうとした。すると、ルーナ達がいる。ルーナ達は逃げ出そうとする真耶を捕まえて逃げないようにした。
あー、これはあれなやつだ。多分この後俺死ぬわ。うん。死ぬ。多分死ぬ。
「待て、俺は今から街に行って来るから説教はその後な」
真耶は死に物狂いで逃げようとした。さすがにそう言われたら行かせない訳にはいかない。
ルーナ達は、クロバとフェアリルの紅音を奏のところに残して真耶に付き添うことにした。
「……はぁ、なんだが見張られてる気分」
「見張ってるのよ」
「……ということは、俺がお前らにこっそりエッチなことしてもいいってことだな」
突然ジゴロのような顔をしてルーナに顔を近づけた。突然の事でびっくりして、ルーナは顔をあからめる。
「フフフ……っ!?」
その時、突如視線を感じた。真耶はすぐに周りを見渡す。しかし、誰もいない。
ここが門の前だから後ろに人がいるのかとも思ったが、いなかった。
真耶は不思議な感覚になったが、警戒しながら門をくぐり街の中へと入っていった。
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