第121話 オーブ
「終わった……はぁ、長ぇよ。そもそも、城がでかいだけじゃなく空と千春がやられてるのはどういうことだよ」
真耶はそんなことを言いながらモルドレッドに近づく。そして、手を出した。
「大丈夫か?」
真耶はモルドレッドの顔を見ながらそう聞く。すると、モルドレッドは突然泣き出してしまった。
「まやくぅん!怖かったよぉ!」
そんなことを言いながら抱きついてくる。真耶はそんなモルドレッドを優しく抱きしめた。そして、流れるままにキスをした。
その唇は甘く美味しかったが、少し血の味がした。それに、なんだかぷにぷにしているのに、舌を入れると口の中に少し切れているところがある。
「だいぶ傷つけられたんだな」
真耶はそんなことを呟くと魔法を使った。
正直なところ、真耶に回復系の魔法は使えない。だから、これはただ物理変化で増やしているだけ。普段自分は優眼を使うから忘れていたが、この技は激痛を伴う。
優眼である程度は痛みを和らげることが出来るが、それでも痛みが伴う。
流石だよ。ラウンズの名は伊達じゃないみたいだ。それに……
「よくここまで耐えたな」
「うん……私、頑張ったよ……」
真耶はそう言って疲れきったモルドレッドを優しく抱いた。そして、静かにその場から離れようとした時、あるものを見つけた。
それは、金色だった。そして、綺麗だ。なんだか見とれてしまうほどに綺麗だ。だが、真耶はそれをどこかで見たことがあった。
どこかで見たことがある。どこかは思い出せないがどこかで見たことがある。なんだか、日本にいた時に毎日見ていたような……
「っ!?これは俺の”光明閃玉じゃねぇかよ」
「え?どういうこと?」
「これは俺のものだってことだ。突然無くなった不思議に思ってたんだよ」
そう、このボールは真耶が作ったものだ。真耶が日本にいた時に試しに作ってみたのだ。
だが、それが何故か今ここにある。しかも、謎の能力までついている。確かにの能力は自分が予想したものと同じだが、それが逆に怖い。
なんせ、これをここに呼び寄せたやつは自分のことを知っているやつということになるからだ。
「知ってるやつじゃなきゃこの能力をつけることが出来ないしな。見た目で考えたらどちらかと言えば、目くらましだしな」
……いや待て、いるじゃないか1人だけ。俺の事をよく知っててこの世界にいるやつが。
その人物ならこれを持ってくることも簡単だ。そして、多分その人物が所属している国ならその能力をつけることも容易いはずだ。
「あ!まーくんいた!」
「マヤ様!早すぎですよ!」
あ、元凶が来た。さて、元凶が来たところでお仕置を始めるか。なんでこうなったのか今の流れで全部わかったからな。
「あ、真耶、助けられたのね。良かったわ」
「姉貴、これ持ってきたの姉貴だよな?」
「……」
玲奈は無言でぷいっと顔を横に向けた。そして、無言で立ち尽くす。真耶はそんな玲奈の前まで歩いていくと、顔を掴んで無理やり顔を真耶の方に向けさせて言った。
「お仕置な。尻をだせ」
「すみません。ごめんなさい。許してください」
玲奈は流れるように土下座を決め込んだ。
「……なぁ、お前が持ち込んだのはこれだけか?」
しかし真耶は冷静に玲奈に聞いた。いつもみたいにいじったり怒ったり、お仕置をすると言った行動をせずに、ただそのオーブを見つめながら聞いてきた。
玲奈はその様子に少し怯えながら首を横に振る。そして、指をおって数を数え始めた。
「えと……だいたい15個持ち込んだよ」
「っ!?」
真耶はその言葉を聞いて突然顔を険しくさせた。そして、とんでもないほどの殺気を飛ばしてくる。
その殺気は強すぎたせいか、地面を裂き、壁を壊し、ピリピリとした空気をその場の全員にぶつけた。
当然その場にいた奏達も、その殺気を受け動けなくなる。そして、その殺気を1番近くで受けた玲奈は身体中がびしょびしょになるほど汗を垂らした。
「ご、ごめんなさい……!真耶がそんなに怒るなんて思わなかったの……」
玲奈は慌てて謝るが真耶は殺気を緩める気は無いらしい。少しだけ顔を上げると、真耶はまるで自分を殺すのかと思う程の目で見ていた。
「やってくれたな……この落とし前はどうつける?」
真耶は声すらも殺気を交えて話しかけてきた。その声がとてつもなく恐ろしく、玲奈は何も言えずにただ額を地面に擦り付けるだけだ。
真耶はそんな玲奈の前まで歩いて行き言った。
「どうするつもりだ?お前のせいで世界はめちゃくちゃだ」
そう言ってオーブを顔の前まで持ってきた。
「このオーブがなんの能力を持ってるか知ってるか?どうやらこれは俺の望んだ能力を持っている。その能力は、全ての闇を払うという《《スキル》》だ」
真耶はそう言って玲奈の頭を鷲掴みにした。
その時玲奈は疑問に思った。なぜ、真耶はスキルという言葉を強調したのかと。魔法でもスキルでもあんまり変わらないはずなのだが……
「わかってないようだな。なら、これをお前のケツの穴にぶち込んでやるからその間に考えろ」
真耶はそう言って玲奈のズボンをぬがし始めた。しかし、玲奈は抵抗できずに服を脱がさせられる。
「キャッ……!っ!?やだぁ!やめてぇ!」
突然玲奈は泣き叫び始めた。なんと、真耶が玲奈のズボンと下着を脱がせてオーブをケツに当てたのだ。そして、そのままねじ込もうとする。そんなことが出来るのはギャグかそっち系のやつだけだ。
「お前のせいで、本当に世界はめちゃくちゃだ!アーサーを呼び出して!ラウンズを呼び出して!オーブまでこの世界に呼びやがったな!」
「ごめんなさい!ごめんなさい!!!こんなことになるなんて思ってなかったんです!」
そう言って泣き叫ぶ。しかし、真耶の怒りは収まらない。しかし、真耶は冷静に考えてた。ここに光明閃玉があるならこれを使って戦えば良くね、と。
だがしかし、それには大きな壁がある。まずこのオーブはスキルだということ。だから、1日の回数制限がある。これも、真耶が想像した通りだ。だから、相手側も同じだろう。
それに、このオーブは光属性。闇属性の”暗黒闇玉”と影属性の”隠遁影玉”と相性が悪い。まぁ、相手側も相性は最悪だがな。
それらを加味して考えても、あと14個のオーブを持った敵と戦うのはきつい。それに、もしラウンズが持ってたら……いや、確実に持ってるだろうが、その時は終わりだ。
「……なんでこの空がこんなに暗いのかわかったよ。これはダークオーブの力だ」
「え?急にどうしたの……?」
「世界を暗くする力があるんだよ。オーブには。日本にあった時は俺の想像だけで済んでいたのにな。お前が持ってきたせいで現実になったじゃないか」
「すみません!すみません!何でもします!お仕置も何でも受けます!だから許してください!」
「ならお前、俺が良いって言うまで裸な。それと、朝は毎日お尻100叩きだからな」
「はい!わかりました!謹んでお受けします!だから許してください!」
「フッ、わかったよ。そこまで言うなら許してやる」
真耶がそう言うと、玲奈はすごく明るい顔になって抱きついてきた。……この人は本当に自分の姉なのだろうか……
まぁ、それはそうとして、1体どうしようか。これを使えば空の闇も晴れるのだが……
「1発じゃ無理だな。各地で何回か連続使用しないといけない」
「え?でも、ほかの冒険者達は1日でこうなったって言ってたよ」
「なら2重……いや、3重発動だな。其れをさらに2倍する。6回分位で世界は闇に染めれる」
「なら、こっちも6回使えば……」
「バカか?これの使用回数は3回。しかも、この闇は30回分位の力を持っている」
真耶のその言葉に全員黙り込んでしまった。そんな時、奏が言ってきた。
「まーくんはオーブ作れないの?」
その言葉は、その場の真耶以外の全員の意表を突く言葉だった。
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