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モブオタクの異世界戦記  作者: 五三竜
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第120話 救世主

 モルドレッドに向かって溶けた鉄が襲う。しかし、モルドレッドは動かない。


「この雌豚が!お前は終わりなんだよ!」


 黒騎士はそう言った。果たして本当に終わりなのだろうか。モルドレッドは死ぬのだろうか。


 普通はここで主人公が助けに来る。だいたいお決まりの展開だ。だが、現実的に考えてみよう。ここにいるのは偶然でかつ、この城の中には大量の敵が居る。


 そう、その状況から考えると、ここに来れるわけないのだ。だから、真耶は来なかった。


「ぎゃあああああああああ!いだぁい!あづい!おしりがぁ!おしりがぁぁぁぁぁぁ!」


 モルドレッドの悲痛な叫びが聞こえた。その叫びと同時にモルドレッドのお尻から紅い鮮血が飛び散る。


「ぎゃははははは!いい声出すじゃないか!もっと泣け!叫べ!」


 そう言ってその熱して溶けた鉄でモルドレッドのお尻を叩く。すると、ジュッ!という音と一緒にバチィン!という音が鳴った。


「いぎゃああああああ!もう殺してぇぇぇぇ!いだいのやだぁぁぁぁ!」


 モルドレッドはそう言って泣き叫ぶ。それから5分程経ったが、その間散々遊ばれた。5分程経つと、急に溶けた鉄を顔の前に持ってきた。


「その顔も醜くしてやるよ」


 そう言って顔につけようとする。しかし、途中でやめてモルドレッドを仰向けになるように蹴飛ばした。


「いいや、止めた。お前には一生トイレが出来なくなって貰う。ケツの穴だけじゃないところも焼いて溶かしてやるよ」


 そんなことを言い始めた。その時、本当の本当にモルドレッドは思った。


 これが本当の死なのだと。


 自分は見にくい体にされて、色んなところを溶かされて殺される。やっぱりこの場所は自分の墓場だったらしい。


「もぅ……死にたい。……殺して……」


 モルドレッドは小さくそう呟いた。気がつけば、黒騎士が目の前にいる。


 やっと死ねる。これで本当にさようならだ。


「いいや、違うな。さよならじゃない。そもそも終わりじゃない。これは始まりだよ。絶望と復讐のね」


 突如、どこからかそんな声が聞こえてきた。そして、黒騎士の動きが止まる。気がつけば、溶けた鉄の棒は消えている。


「”物理変化ぶつりへんか”」


 呪文が聞こえる。それと同時にモルドレッドの傷が治っていく。


「何っ!?……クソォッ!」


 黒騎士は背中の剣を抜くと、モルドレッドに向かって襲いかかった。しかし、その剣がモルドレッドに当たることは無かった。なぜなら、その剣は途中で真耶に止められたからだ。


「っ!?」


 黒騎士は驚きのあまり言葉を失った。なんせ、突然真耶が現れたからだ。さらに、自分の得意の剣まで止められた。しかも片手で軽々と。


「やぁ、初めまして、黒騎士さん。そして、さようなら」


 真耶がそう言うと、突如黒騎士は闘技場の反対側まで吹き飛ばされた。


「ガハッ!」


 黒騎士はあまりの唐突な出来事に言葉を失う。そして、すぐに理解した。目の前の男は自分より数段上の存在だと言うことに。


 なんせ、この闘技場は形は他の街にあるものと同じだが、大きさが全然違う。他の街にあるものの2、3倍の大きさはある。


 真耶はそれだけ距離があるのにもかかわらず、黒騎士を吹き飛ばしてしまった。


「モルドレッド……こんな姿になって……ん?」


「真耶君……ありがとう……!ありがとう……!」


「フッ、別にいいさ。それよりさ、お前をこんな姿にしたのはあいつだろ?どうしたい?」


 真耶は少し怖い表情をしてそう聞いた。モルドレッドは少し悩むと自分の体を触り始める。


 手、足、腕、お尻、胸、顔……


 大丈夫、治っている。お尻はまだ痛いけど治っている。


「どうしたい?」


 真耶はもう一度聞いた。すると、モルドレッドは少し俯いて涙を流すと言った。


「……殺して欲しい」


「良いね。待ってろ、すぐに終わる」


 真耶はこれでもかと言うほど不敵な笑みを浮かべると背中のアルテマヴァーグを抜いた。そして、少し降って準備運動をする。


「モルドレッド、ディスアセンブル砲の準備をしろ」


 真耶はそう言い残すと一瞬にして消えた。モルドレッドはそれを見てすぐにディスアセンブル砲の準備をする。


 そして、準備が完了するとすぐにディスアセンブル砲を放った。


 赤黒い光線が真っ直ぐ黒騎士に向かっていく。黒騎士はそれを見るとすぐにその場を飛び去った。


 しかし、すぐに気がつく。目の前に真耶がいることに。


「何っ!?」


「終わりだね」


 真耶はそう言ってアルテマヴァーグを勢いよく振り下ろした。


 アルテマヴァーグから高密度に圧縮された波動が放たれる。その波動は触れただけで消滅してしまうほどだ。


 黒騎士はその波動を真正面から受けた。そして、体を両断された。


 しかし、その波動はそれだけでは止まらなかった。なんと、波動はディスアセンブル砲を巻き込んだのだ。


 当然ディスアセンブル砲を巻き込んだ波動はそのまま地面にあたる。しかし、この時忘れてはいけない。この波動は真耶の魔力で生み出したものだということを。


「”曲がれ”」


 真耶は左目に太極図を浮かべながらそう言った。すると、波動はブーメランのように向きを変える。


 赤黒い光を放つ波動はそのまま黒騎士の首を切り飛ばした。


 黒騎士から紅い鮮血が飛び散る。そして、黒騎士は完全に動かなくなってしまった。


「終わったな。ったく、手間かけさせやがって。お前のせいでモルドレッドにトラウマが出来たらどうするんだよ」


 そんなことを言って黒騎士の体を蹴り飛ばす。そして、未だに消えてないディスアセンブル砲をまとった波動を呼び寄せた。


 そして、その波動は黒騎士にぶつかると大爆笑を起こした。その爆発では赤黒い光が爆発的に増加し黒騎士を飲み込むと一瞬にして消してしまった。


「俺の大切なものに手を出したものは許さない。誰であろうとな」


 その言葉は静まり返った闘技場に大きく響き渡った。

読んでいただきありがとうございます。

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