第112話 プラズマレイ
青色の光線はとんでもない爆風を撒き散らしながら魔物達に向かって言った。
その光は、触れたものを全て消滅させる。さらに、とんでもない波動を放つ。その波動は辺りの草木を消滅させて進んで行った。
そして、ある程度の時間打ち続けると光は収まり始め消えていく。
「……フゥ、意外と簡単に出来たな。……てか、手のひらが焼け付いている」
そう言って自分の手のひらを見つめた。そこからは、もうもうと煙が上がる。そして、流れ落ちる紅い液体を見つめた。
やはり、魔力を放出しているから手が確実に焼ける。でも、手が消えなくてよかった。
「まーくん、どうなったの?」
真耶がぼーっと手を見つめていると、馬車からそんな声が聞こえた。どうやら奏達は心配してくれていたらしい。
「終わったよ」
真耶はそう言って馬車に戻った。それを見た馬車を操縦する人は馬を進めさせる。
「魔物たちはどうなったの?」
「消えたよ。まぁ、正確に言えば、蒸発したなんだがな」
「蒸発?」
「そうさ、蒸発させたんだよ。お前達は個体や液体、気体の違いがわかるか?」
真耶の問いに首を横に振る。なんで分からないのだろうか。まぁ、百歩譲ってルーナ、クロバ、アロマ、フェアリルは分からないだろう。だが、奏、紅音、姉貴、ヴィヴィアンはわかるだろ。勉強してないのか。
「……お前らってさ、授業とか聞いてた?それともあれか。あの、授業を聞くと眠くなる症候群か?」
「……うぅっ……だ、だってぇ……わかんないものはわかんないんだもん……!」
奏はそんなことを言いながら怒ってきた。しかも、涙を流している。そのせいで、なんだか真耶が悪いみたいな空気がその場を漂い始めてしまった。
だが、そんなものに屈する真耶ではない。真耶はなんにも気にせず話を続けた。
「個体から液体、液体から気体、気体から個体……そんな感じに物質の状態を変えることを状態変化という。それでだ、この個体が気体になる時昇華って言うんだけどな、それを起こしてるんだよ」
そうは言うものの、他の皆はわかっていないらしい。ポカーンとして真耶の顔を見つめている。奏に関しては放心している。
「……はぁ。原理で言えばな、俺の手から高密度で圧縮した魔力を放出するだろ。それを魔法で炎に変えるんだよ。するとだな、高密度に圧縮された魔力が炎になったことで一瞬でその炎は高火力となる。一定以上の温度を超えた炎はプラズマ化するんだ」
そこまで説明すると、みんなウンウンと言った感じで頷いている。どうやら理解したらしい。
「そのプラズマ化した炎に触れたものは一瞬で分子間の動きを大きくされる。だから蒸発してるんだ」
真耶がそう言うと、やっと納得したらしい。ニコニコ笑顔で見つめてきた。
「ま、それを使いすぎると俺の手が消えてしまうがな」
そう言って焼けただれた右手の手のひらを見せた。かなり治ってはいるが、まだ赤い。それに、皮もまだ治っては居ない。
まぁ、そこは治しながら打てばいいだけなんだがな。今回はどれくらい魔力を使うのか分からなかったがやらなかったが、あまり魔力を消費しなかった。
次かはは治しながら撃つことにしよう。
それにしても、魔物の量が半端ないな。どこを見ても魔物しかいない。それに、全員凶暴化している。
だが、所々に凶暴化してない魔物もいる。見分け方は、目が赤く光っているか光ってないかの違いだ。
「近接戦闘になったら少し気をつけないといけないな」
真耶は小さくそう呟いた。
━━それから5分が経過した。すると、また魔物が道を塞いでいた。当然その魔物も排除する。
━━それから5分が経過した。すると、またまた魔物が道を塞いでいた。これも、当然排除する。
━━それから5分が……
「いや多すぎだろ!絶対に何かある」
いや、それより空と千春はどうしたんだよ。こんなに魔物がいてなどうやって乗り切ったんだ……て、そういうことか。
「どうしたの?」
「いやね、なんでこんなに魔物が多いのかなって思ってさ、その理由がわかったよ」
「なんなんですか?」
「多分空と千春が魔物から逃げるように急いで行ったんだと思う。だから、道に残った魔物がいる訳だ」
なんともはた迷惑な奴らだ。仮にもあいつらは勇者パーティ、かつ、レベルは300を超えていた。俺よりレベルが高いんだ。もっと戦えよ。
「そう言えばさ、お前らのレベルって今なんなんだ?」
「レベルですか?……私は200丁度です」
「私は142です」
「私は78です」
「私は423です」
「私は611だよ」
「私は300ちょうどだよ」
「私は702なんだよー」
皆は口々に言ってきた。今のをまとめるとこんな感じ。
奏……702
ルーナ……200
クロバ……142
アロマ……78
フェアリル……423
姉貴……611
紅音……300
と言う感じだ。皆かなりレベルが上がっているらしい。こんな感じだと、勇者は多分レベルが1000を超えているだろう。
シュテルは前に見た時は確か800だった。恐らくシュテルも1000を超えている。
だが、俺のレベルは未だに10だ。あれからほとんどレベルが上がっていない。
経験値は恐らくここの誰よりも稼いでいる。だが、必要な経験値の量が桁外れでレベルが上がらない。
「……なんで俺のレベルってぜんぜん上がらないんだろうな」
「どういうこと?」
「いや、何でもないよ」
真耶はそう言って自分のステータスプレートを取り出し、見つめた。
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