第110話 嘘というペルソナ
その時、その場の空気が凍った。そして、タイミングを合わせたように強風が吹く。そして、ヴィヴィアンのスカートが舞い上がり、ヴィヴィアンのツルツルですべすべな可愛いあれが見えた。
しかも、2回目だ。2回目に見た時は、1回目に見た時より可愛く見えた。
「や……いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!見ないでぇぇぇ!」
その場にヴィヴィアンの悲鳴が響き渡った。
「……あ、アロマ……何してんの?」
「これが試練です!マヤ様の隣に立つにはこれくらいの覚悟がいるのです!」
えぇぇ……俺そんなこと言った覚えないよ。
そう心の中で呟いた。そして、優しくヴィヴィアンの頭を撫でる。すると、ヴィヴィアンは泣きながら真耶に抱きついた。
真耶はそんなヴィヴィアンを優しく抱きしめる。すると、ヴィヴィアンは少しだけ安心したのか、泣くのを止めた。
そして、真耶はアロマを見る。どうやらアロマは今のことを誇らしいことだと思っているらしい。そんなわけないのに……
「なぁ、アロマ……覚悟はあるか?」
「へ?」
「今のやつをやりる覚悟だよ。だって、自分はされたら嫌なのに、人にやるなんておかしいだろ」
言われてみればそうなのだ。子供の頃に、自分が嫌なことは人にするなと言われたはずだ。
だから、当然アロマは同じことをされないといけない。
「アロマ、こっちに来い」
アロマは言われた通りに真耶に近づいた。しかし、その様子はどこか怯えていようだ。
「あの……許して……くれませんか?」
アロマはあざとい表情で見てきた。しかし、そんなものは真耶に通じない。
「許さん!」
真耶はそう言うと、アロマのスカートの中に手を入れた。そして、パンツを掴むと一気に下ろした。
そして、またまたタイミングよく強風が吹く。そのせいで、アロマのツルツルですべすべな可愛いあれが見えてしまった。
「いや……いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
その場にアロマの悲鳴がこだました。その叫びは静かな空間に少しの間残った。
しかし、真耶の恐ろしいところはそれだけでは無い。なんと、真耶はそのままアロマを押し倒したのだ。
まさかとは思うが、本当に押し倒したのだ。そして、耳元で小さく囁く。
「犯してやろうか?」
「ひっ……ご、ごめんなさい……」
「許してやらないよ」
そう言ってカチャカチャという音が鳴り出した。その音は、よくお風呂で聞く音……そう、真耶がズボンを脱ぐときの音だ。
「え?嘘……やめて……今はダメ……」
「なんでだ?いつもはやりたそうにしてるのに」
「だって……ここ外だよ……恥ずかしいよぉ……それに、今は気分じゃないから……」
「ふーん……ま、やらないけどな。悪いな。少しからかって」
そう言ってサッとその場に立ち上がり退く。アロマは驚きの表情を隠せなかったが、それ以上に疑問に思うことがいくつかあった。
1つ目は、ベルトだ。真耶からは確実にベルトを外す音が聞こえた。しかし、横目で見た感じ外してはいない。早着替えでもしたのだろうか。
「ベルトか?」
真耶はアロマの心を見透かしたように聞いてきた。その問いにアロマはこくりと頷く。
「波だよ。周波数、波長、振幅、速さをベルトが外れた時に合わせれば同じ音が出る。今回は1波長分の差で強め合わせたからアロマまで聞こえたわけだ」
全く何言ってるか分からない。他のみんなもわかってるのかと見渡すと、誰一人わかっていない。
もしかしたら真耶は、我々の知る言語とは違う言葉を使ったのだろうか。
「おい、アロマはまぁ分からなくても良いにしろ、姉貴と奏と紅音の3人は別れよ。こっちに来る前に奏はテストしただろ」
「……聞いてないからわかんないもん……」
その言葉に真耶は呆れて何も言えなくなった。そして、頭を押えながら
「頭痛がするよ」
と小さく呟いている。
だが、そんなことはどうでもいい。まだ疑問に思ったことはある。
2つ目は、真耶は何故倒れたのかだ。
傍から見れば真耶はアロマを押し倒すような格好になってしまったかもしれない。だが、普通は真耶はそんな事しない。
それに、押し倒されたからこそ分かる。真耶はアロマを押し倒したのではなく、ふらついて倒れてきただけだったのだ。
多分真耶は、皆んなが心配しないように、あえて嘘をついたのだ。
「ねぇ、マヤ様ってどこか怪我してたりは……」
「しー……」
真耶は誰にも気づかれないように人差し指をピンッと立て口に押し当てる。
やはり何かを隠しているようだ。よく見ると、どこか怪我をしている気がする。うーん……なんだか最近真耶のせいで疑り深くなってる自分がいるな。
アロマはそんなことを思う。そして、ジロジロと真耶の体を見た。
「アロマ……」
真耶ら小さく名前を呟くと、アロマに向かって指を3回鳴らす。すると、アロマの耳に言葉が聞こえてきた。
「……魔力が無くなってるだけだよ」
そんなことを小さく呟く。恐らく先程の、音の波?を変化させたのだろう。あーあ……心配して損……してない。全然損してない。逆に慌ててしまった自分もいる。だって、真耶の魔力量は他の人より何倍も多い。だから、無くなるわけないのだ。
「嘘……」
「しー……」
真耶は方目を閉じてウインクしながらもう一度人差し指を唇に押し当てた。
アロマはそこまでされて何も言えなくなってしまった。
だが、まだ疑問はある。3つ目の疑問は、さっきから真耶の右半身に魔力が流れてないことだ。
いつもの真耶なら体全体に深緑色とピンク色の魔力が流れている。だが、今はそれが左半身にしか流れていない。
そう言えば、さっきから魔法もずっと左で使っている気がする。
「マヤ様……」
「それも言っちゃダメ……心配させたくないからね。でもまぁ、時が来たら話すよ」
そう言って優しい笑顔を見せた。他の皆はどうやら気がついてないらしい。
いや、ルーナは気がついてるかもしれない。なんせ、博識スキルがあるから。
「マヤ様……心配させないようにしてくださってる……でも、言ってくれないと逆に心配です」
アロマは小さく呟いた。すると、真耶はそれが聞こえたのか小さく、多分アロマにしか聞こえないくらい小さな声で呟いた。
「人は、ペルソナなしでは生きてはいけない。その場に合わせて嘘をつくから。……俺も、嘘というペルソナを被った1人なのだよ」
その言葉はアロマの胸に重くのしかかった。そして、深く胸に刻まれた。そんな気がした。
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