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モブオタクの異世界戦記  作者: 五三竜
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第109話 勝負

「おい待てよ。俺達が弱いって言うのか?」


 空は少し怒り気味に聞いてきた。どうやらさっきの言い方が尺に触ったらしい。


 だが、実際のところそうなのだ。空はめちゃくちゃ弱い。恐らくパンチ1発で倒せる。


「まぁ、俺はそう言ったつもりだったんだが……すまんな。お前らがこんなに耳が悪いとは思わなかった。悪い悪い」


 真耶は煽るようにそう言う。その言葉に空と千春は怒りの頂点を迎えた。


「あ!?殺すぞ!」


「私達舐めてると死ぬわよ!」


 そう言って怒鳴りあげる。その怒号が静まり返ったギルドに大きく響いた。


 しかし、真耶はそんなことなんとも思っていない。後ろで奏達が怯えているのを一瞥すると、空と千春に近づいた。


「まぁ、そう怒るな。自分達が強いと思っているなら感情的になるな。常に冷静でいるものこそ強者なのだよ」


 再び煽るようにそう言う。しかし、今度は怒鳴りあげることは無かった。代わりに、千春が殴ってきた。


 真耶はその手を体を反らし難なく避ける。そして、そのままバク転のように後ろに回転しながら2人を蹴った。


 蹴られた2人は発泡スチロールのように飛んでいく。そして、後ろにあった机や椅子などをバキバキに壊した。


「あ、悪い悪い、君達勇者の仲間がこんなに弱いとは思わなかったよ」


 不敵な笑みを浮かべた真耶はまたまた煽るように言う。


 さすがに勇者の仲間と言えど、ここまで煽られれば誰だって怒らずにはいられない。ついに怒りの沸点を迎えた空と千春は真耶を指さして言ってきた。


「決闘だ!」


「決闘よ!」


「しない。今はそれどころじゃないだろ」


 即決だった。あんなに熱くなっていた2人は、その言葉を聞いて一瞬で冷める。しかし、すぐに熱くなって言ってきた。


「ビビってんのか!?雑魚め!やはりお前は俺達より格下なんだな!」


「なんとでも言え。だが、口に出す以上俺より強いと証明してみろ。口に出すだけの口だけ男が勇者の仲間なんて、ダサいにも程があるぞ」


 今度は、煽るような素振りは見せず、声を低くして言った。その言葉に、さっきまで熱くなっていた空は急に冷める。


 そして、静まり返ったギルドの中ではこの3人に視線が集まってきていた。


 そんな緊迫した状況に空と千春は間が持てなくなる。そして、千春は辺りを見渡し始めた。恐らく逃げ場を探しているのだろう。


 だが、そこに逃げ場は無い。まるで蛇に睨まれたカエルのように2人は動かなくなった。


「なぁ、知ってるか?蟒蛇うわばみ蝦蟇がま食べる時に1口で丸呑みするらしいぜ」


「……そ、それがどうしたって言うんだ!?」


「いやね、まさにあんたらの事だなって思ってさ。あんなに威勢が良かったのに、今は逃げ場を探している。俺と決闘するんじゃないのか?」


「グッ……!い、いいぜ!やってやろうじゃねぇか!」


 そう言って声を張り上げる。本当に威勢のいいだけの男と女はからかいがいがあるな。


 だが、そろそろ俺も言葉の責任とやらを取らなくてはならないな。俺はこいつらより強いと言ったからには、証明しないといけない。


「フッ、まぁ俺も決闘したいけどさ、今は状況が状況だ。だから、どっちが先にインベルの街にいる黒騎士を倒すか勝負だ」


『っ!?』


 その言葉にギルド内の冒険者全員が目を丸くした。そして、すぐにざわめき始める。そんな中真耶は言った。


「別に、怖くて嫌ならやらなくてもいいぜ」


 今度はまた煽るように言う。当然怒りっぽい空と千春は感情を昂らせる。


「いいぜ!どっちが強いかはっきりさせようじゃねぇか!」


 空のその言葉でギルド内の冒険者達にも火がついた。


 やれ!や、いけ!など言って野次を飛ばしてくる。


「決まりだな。お前らは何人で行ってもいいぜ。ここにいるヤツら全員でもな。俺らもこんだけ人数がいるしな」


 そう言って振り返る。まぁ、どうせ戦うのは真耶だけになると思うんだがな。


 人数が多い方が有利になってしまうのなら、向こうも人数を増やしてフェアにした方が良い。


「あと、死ぬなよ」


 真耶は振り返りざまに一言そう言ってギルドを出た。


「まーくん、いいの?あんなこと言って」


「そうですよ。マヤ様は煽りすぎです」


「ふふん、私の弟がこんなにイケメンになるなんて……感激だわ」


 皆は口々にそう言ってくる。1人だけ言ってることが違う気もするのだが、気にしないでおこう。


「あのなぁ、俺にも考えはあるよ。アイツらを行かせたらエンカウントする回数が減るだろ」


「でも、勝負なんだから先に行って倒さないと」


「初めて戦う相手になにか対策が出来ると思うか?先にアイツらを戦わせて相手の情報を掴むんだよ」


 なんとも姑息な手だろうか。姑息すぎて奏達は言葉を失う。そして、軽蔑の目で真耶を見た。


「いや、そんな目で見るなよ。辛いだろ」


 そう言ってアロマに近づく。アロマだけがこの中で軽蔑の眼差しを向けてこなかったのだ。


「え!?」


 真耶は突然アロマに抱きつく。そのせいでアロマは驚きを隠せなかった。


 当然その行動は他のみんなにも驚きを与えた。玲奈以外は皆驚いている。玲奈は何故か誇らしげにしている。


 そして、真耶も何故か驚いていた。それは、まさかのヴィヴィアンが悲しそうな顔をしているからだ。


「なんでお前が1番悲しそうな顔してんの?」


 真耶はそう聞いたが、答えてはくれない。しくしくとわざとらしく泣き始める。


「あのなぁ……」


「あの……」


「ん?」


「マヤ様……は、恥ずかしいです……」


 アロマが顔を真っ赤にして言ってきた。どうやら恥ずかしかったらしい。


「そうか……悪かったな」


「あの、なんでこんなことを?」


「……軽蔑の目で見られて辛かったから……」


 真耶は顔を横に向けてどこか遠い目をしながらそう言った。その言葉にアロマは悲しみの表情を見せる。


「うぅ……マヤ様が悲しいと私も悲しいです……うぅ」


「抱っこしてやろうか?」


 真耶は少し楽しげにそう聞いた。当然そんなことを言われたら抱っこされたい気持ちが溢れ出てくる。アロマはその欲求に耐えきれず真耶に飛びついた。


「あぁ〜〜!わ、私がされたかったのにぃ〜〜!」


 突然ヴィヴィアンがそんなことを言う。すると、アロマは真耶の腕から飛び降りてヴィヴィアンの前まで来た。


「ヴィヴィアン……マヤ様に抱っこされるためには試練が必要なのですよ」


 突然そんなことを言い出す。別に試練など課した覚えはないのに。


 そんなことを思っていると、なんとアロマが驚くべきことをした。


「え……」


 なんとアロマはヴィヴィアンのスカートの中に手を入れて、下着を脱がしたのだった。

読んでいただきありがとうございます。

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