第107話 暴走
さて、ここで問題です。ここから5秒でどこか遠くまで逃たげるめにはどれくらいの速さで走ったらいいでしょうか?ちなみに、加速度は1万メートル毎秒の2乗だ。
わかった人は手を挙げてね。
「まーくん……何言ってんの?」
「え?いやね、ちょっとね……あ、答えは簡単5万メートル……50キロだ」
真耶はそう言うと一瞬にしてその場から逃げ出した。そして、その数秒後に奏達の目の前をヴィヴィアンが通り過ぎて行った。
「……っ!?もう来た!?はぇぇ!」
真耶はその速さに目を丸くする。そして、さっきよりさらに早いスピードを出した。
しかし、ヴィヴィアンは魔法で自分の速さを倍にして追いかけてくる。一瞬にして真耶は捕まってしまった。
「ぐぇ!?」
「まやぁ!まや!まや!まやぁ!」
ヴィヴィアンはそう言って抱きついてくる。そして、異常なまでに胸を押し付けてくる。
「クソッ……たれがぁ!”物理変化”」
真耶は苦し紛れに叫ぶと魔法で自分の体を水に変えた。そして、何とかヴィヴィアンの緊縛から抜け出すとすぐさまその場から離れる。
「まやぁ!逃げないで!しゅきなの!まやぁ!」
「クソッ……まだ来るのかよ……!」
真耶は呻くような声をあげると右目の黄色い光に加え、白い光も放ち始めた。そして、右手を銃のような形にして右目に魔力を溜める。
99パーセントの魔力が右手に集まると、その魔力をさらに右手の人差し指の指先に集めていく。
「まやぁ!逃げないで!」
「無理だね」
真耶はそう言うと指先から水の弾丸を放った。その水の弾丸は一瞬にも満たないスピードで1キロほど移動する。
そして、真耶の体は揺らめき出し形を崩して大きな水溜りとなった。
「まや……そこにいるのね」
ヴィヴィアンはそう呟くと起き上がり再びとんでもない速さで真耶を追いかけた。真耶は先程飛ばした水の弾丸に魂を移していたことで、即座に魔法を使い体を復元した。
それも、足りない部分は空気中の水素イオンを使用してだ。だから、今体に火でも当てられようものなら、大規模な爆発が起こるだろう。
「まや!なんで逃げるの!?逃げないで!”ドラゴンブレス”」
ヴィヴィアンはすぐに真耶に追いつくと、ドラゴンのような炎の息を放ってきた。
「クソッ……そんな真面目にフラグ回収しなくていいんだよ!」
そう叫んで周りを見渡す。周りには逃げ場は無い。このまま当たればここら辺一体は無くなるほどの爆発が起こる。
そもそも、今自分の体が浮かないようにすることだけで精一杯だ。初めてやる技だったからなかなか水素イオンを水に変えられない。空気中の酸素が足りないのだ。使い過ぎれば窒息してしまう。それに、この炎を止めるために酸素を無くせば体は水にならない。かと言って、今元に戻せば体が安定せずに壊れてしまう。
「……こうなったら、古い手でいく」
そう呟いて魔法で手だけ重くした。そして、思いっきり地面を殴り壊す。すると、地面から大量の砂や礫が飛び散った。真耶はそれを手で掴むと粒子レベルに分解する。
「”物理変化”」
真耶画像呟くと、粒子レベルに分解した礫が元に戻る。そして、球体のようになった。ドラゴンのような息はその球体の中に全て閉じ込められた。
「まやぁ!つかまえたぁ!」
気がつくとヴィヴィアンが自分の真上にいた。そして、そのままヴィヴィアンは抱きついてきて今度は完全に捕まった。
「うわっ!おい!やめろ!」
「なんで逃げるのぉ!?」
「お前の目がやばいからだよ!」
そう言って目を見つめる。その目にはピンク色のハートが浮かんでいた。確実にヤバい目だ。
とにかく今は逃げないといけない。恐らく、誓約鎖の影響だろう。あの魔法は使ったあとの5分間は魔力が馴染まず暴走する。
「クソッ……!”とりあえず離れろ”」
真耶は右目に太極図を浮かべてそう言った。すると、ヴィヴィアンはかなり抗っていたが離れていく。その隙に真耶は体を雷に変え逃げた。
「……あと3分か……」
その時、冒険者ギルドが見えた。そう言えば、ここは冒険者の街だ。奏達がいたところが人気の無い場所なだけであり、中心に行けば人が沢山いる。
真耶はそのまま急降下しギルドの中に入った。
「いらっしゃいませ!本日はどんな御用ですか?」
中からそんな声が聞こえる。真耶は中を見渡すとその声がした方向に向かってかなり早いスピードで走る。
その声がした方に行くと、女性がいた。受付のお姉さんらしい。そのお姉さんは黒髪ショートヘアーで胸は大きい。
「悪いが、俺を匿ってくれ」
「え?ま、マヤさんですよね。何かあったんですか?」
「後で説明するからとにかく匿って……」
「まやぁ……逃げないでぇ……」
「っ!?チッ……もう来やがった……!」
なんと、もうヴィヴィアンが来たのだ。ヴィヴィアンは目に涙を浮かべキョロキョロと中を見渡す。そして、真耶を見つけたのか突然笑顔になる。
「やばい、見つかった。……はぁ、なんで魔法陣間違えたんだろ。あれ、ルーナに教えてもらった魔法陣なのに……」
真耶は咄嗟にお姉さんの後ろに隠れてそんなことを呟く。そして、思った。ルーナに教えてもらったってことは、ルーナが間違えていたのだろうか。いや、なんだかわざとらしいな。あまりよく覚えてないが、教えてもらった直後に私で試して、みたいなことを言われた気がする。
「ルーナ……後でお仕置な。お前の目お尻使えなくさせてやるからな。全部」
真耶はどこか遠い目をしてそう呟いた。そして、気づく。もう目の前にヴィヴィアンがいることを。
「まやぁ。逃げないでぇ。”緊縛輪”」
「っ!?まずい……!」
咄嗟に真耶はバク転のように後ろに逃げた。すると、その場に荒縄のような模様がある、紫色に光る輪っかが飛んできた。それは地面に当たるとバウンドしてお姉さんにぶつかる。すると、お姉さんは亀甲縛りで緊縛された。
「きゃ……きゃあああああああ!は、外してぇ!」
お姉さんはそう言って泣き叫ぶ。
「悪い。”物理変……”っ!?」
「まやぁ!”黒触手”」
「っ!?」
ヴィヴィアンの影から黒い触手が出てきた。その触手は出てくるなり真っ先にお姉さんに向かって行く。
「や……やめっ……!?」
そしてお姉さんは触手にから娶られてしまった。服を剥ぎ取られ両手足を釣られる。そして、そのまま触手はお姉さんのお尻の大事な部分に入っていってしまった。
「んぎぃ!やめて……!」
お姉さんの呻き声が聞こえる。しかし、その声も直ぐに聞こえなくなった。
「や……!あぁ♡やだぁ……そこらめぇ♡んん♡」
お姉さんの悲鳴が聞こえる。真耶は罪悪感で後ろに後ずさってしまった。すると、ヴィヴィアンはそれが見えたのか、触手をこちらに向けて来た。
真耶はその触手を掴もうとする。しかし、にゅぷっと抜けていく。ヌルヌルでなかなか掴めない。
(なんてことだ……こんなものがお姉さんの大事な大事なあの中に入ってるなんて)
真耶は罪悪感に包まれながらギルドの裏口から外に逃げた。ヴィヴィアンは真耶を追って外に出る。
「あと少しだ……!」
ヴィヴィアンの暴走が解けるまで、あと1分30秒……
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