第104話 対極双剣ゲーゲンタイル
その場を沈黙が包み込む。4人はその沈黙の中静かに見つめ続ける。
「……行く」
最初に動いたのはモルドレッドだった。九つに別れたディスアセンブル砲が真耶を襲う。真耶はそれを飛んで避けた。そして、絨毯の上に着地しようとする。
しかし、その着地に合わせてガウェインが剣を投げてきた。
「ちっ……”物理変化”」
真耶は落ちながら魔法を使い、空気中の炭素原子を使って地面を作り出した。真耶はその地面を軽く蹴って上に飛ぶ。そうすることで、ガウェインの剣を避けることが出来た。
しかし、避けた先には何故か壁がある。見えない壁だ。よく見れば、自分のいる場所から半径5メートルが見えない壁で囲われている。
「壁……やられたな」
「さようなら。”ゴッドフェニックス”」
ヴィヴィアンはそう言って炎の不死鳥を放った。真耶な少し考えると炎の不死鳥が向かってくる方の壁まで進み、触れる。そして、魔法を唱えた。
「”物理変化”」
すると、壁は消え、その部分に穴ができた。
「っ!?何をする気なの!?」
思わずヴィヴィアンはそう呟いた。真耶はその問いには答えずに自分の手首を噛みきる。そして、流れ出る血に魔法をかけた。
「対抗策は考えてあった。使う機会がなかっただけだ。”シャイニングフェニックス”」
真耶はそう言って光る不死鳥を作り出し、放った。
ヴィヴィアンの放った炎の不死鳥と真耶の放った光の不死鳥はまっすぐ突き進む。
炎の不死鳥は空気中の酸素を吸収して威力を増大させる。光の不死鳥はかりのスピードで突き進む。
2匹の不死鳥はその威力やスピードを落とすことなく正面衝突した。すると、とんでもない爆発が起こる。爆煙に爆風、さらに光まで加わった爆発だ。真耶はそれを見た瞬間に魔法でヴィヴィアンの創った壁をアダマンタイトに作り替えた。
ヴィヴィアンはガウェインとモルドレッドを引き寄せ結界を張る。2人はそうすることで、爆発から身を守った。
「……危ねー」
爆発が止むと、真耶はそう呟いて壁を見た。アダマンタイトの壁はドロドロに熔け、1部壊れている。
「……」
真耶は毎度の事ながら、それを見て呆れてしまった。
「あなたもよく生き残ったわね。結界を張る動作もしなかったけど、素晴らしいわ」
「フッ、嫌味か?」
「賞賛よ」
2人はそんなことを言う。そろそろ戦いを終わらせてもいい頃合になってきた。夜はまだ開けないが、恐らく1時間程度は戦っているだろう。
だったら最後の一撃にかけて見よう。もしこれで俺が倒してしまえばそこで終わり。倒せなければ、まだ何かしらの縁があるわけだ。
「これで終わらせるよ」
真耶はそう言って再びゲーゲンタイルを構えた。剣を1度振り陰を陽に変える。そして、ヴィヴィアン達に向かって突き進んだ。
ガウェインも負けじと剣を取り出す。そして、2人は甲高い音を上げながら空中で高速戦闘を繰り広げた。
甲高い音が鳴る度に真耶の剣は色を変える。その色はまるで夜空を煌めく星のようだった。
その時、どこからかディスアセンブル砲が飛んできた。それは、全方位から7つほど来ており、逃げ場は無い。
しかし真耶は、それらを全て弾いた。7つ弾いたから7回剣の色が変わる。
「これも防ぐなんて……」
「天才。恐怖」
ヴィヴィアンとモルドレッドは思わず口からそんな言葉がこぼれてしまった。
「フッ、全員で来いよ」
真耶は挑発的にそう言う。しかし、誰も動かない。と言うより動けない。恐らく接近戦になればランスロットと同じ、もしくはそれ以上だ。
そうなれば、アーサ王と同じということになる。ヴィヴィアンとモルドレッド、ガウェインはそう思った。しかし、それは見当違いだ。
「そう、俺はアーサー王と互角じゃない。それ以上だ」
真耶はそう言って剣に魔力を込めた。
「終わりだな」
そう言って真耶は剣を横に振り払った。幸いなことに、3人が同じ高さにいたから出来たことだ。
いや、これも真耶の作戦。最後にこの技を使うために場所を移動したのだ。3人は真耶の攻撃を防ぐことが出来ない。その斬撃は容赦なく3人を襲った。
真耶はその斬撃を静かに見つめる。上が白く、下が黒い斬撃は高エネルギーを溜めながら空気を切り裂いていく。
そして、ついに3人に到達した。その瞬間とてつもない爆発が発生した。
暗幕が張られた空に花火とも思えるような閃光が放たれた。煌めく空は闇に覆われていた大地を照らし、影を無くす。
そして、その数秒後に閃光の中に闇の球体が現れ光を全て飲み込んでいく。その闇はとてつもない吸引力を持っており、辺りの雲など全てのものを吸い込んでいく。
真耶は、その闇に吸い込まれていく雲を見ながら左目に掛る髪の毛を退かした。そして、左目を見開く。その瞬間、自分の目の前にディスアセンブル砲が飛んできた。
「さすがだな。だが、俺には届かなかったようだ」
真耶はそう言ってゲーゲンタイルを振り上げた。そして、一気に振り下ろす。
斬撃が飛び出した。その斬撃で空が切り裂かれる。そして、左肩から右の脇腹にかけて深く切り裂かれたヴィヴィアンが闇の中からでてきた。
「……あぅ……や、やだ……」
悲鳴にも似た呻きが聞こえる。真耶はゲーゲンタイルを1度振ると、背中の鞘に収めた。
すると、ヴィヴィアンの切られた部分から大量の血が流れ出る。ヴィヴィアンはそのせいで涙やヨダレが垂れてきた。そして、血が足りなくなったのか、意識を失って落ちていく。
真耶はそんなヴィヴィアンを空中で捕まえる。そして、お姫様抱っこのように抱き抱えた。
「俺の勝ちだ」
そう言って再び空に閃光の爆発が起こった。
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