第102話 空中戦
「よく来たな。不意打ちは失敗か?」
真耶は暗幕に包まれた空間で静かに聞いた。
「いや、成功」
「何……?」
真耶はモルドレッドのはなった言葉に真耶は少し目を細める。一体どういうことなのだろうか。
成功とだけ伝えられたその言葉に何か暗いものを感じる。
そして、その直後、突如目の前に剣が現れた。それは、剣先しか見えないが、紅く濡れている。
「っ!?」
その時初めて気がついた。真耶は背中から剣で刺されていることに。真耶はすぐにその場を飛び退く。そして、剣を抜いた。
「グフッ……」
口の中が鉄の味でいっぱいになる。
「ゲホッ!」
その口の中には収まりきれなくなるほどの血が溜まっていた。真耶はその血を一気に吐き出す。
そして、すぐに魔法を唱えた。
「”物理変化”」
真耶の体が少し光ったかと思うと、体の傷がみるみる修復していく。そして、服も修復していき、血まみれになっていたはずが、血など一切出なかったと言わんばかりに綺麗になる。
「さすがね。でも、次は成功する」
モルドレッドの心のないそんな声が真耶の耳元手に響いた。
「やってくれるな。まさか、お前だけじゃなくてガウェインまで来るとは。てことは、ヴィヴィアンもどこかにいるんだろ」
真耶はそう言って辺りを見渡す。しかし、モルドレッドとガウェイン以外に見当たらない。恐らく不可視化の魔法でもかけているのだろう。
だとしたら、ガウェインがここまで来れたのも不可視化の力だろう。厄介だな。
真耶は少し考えると、絨毯に手を着いた。位置を少し移動する。これで、囲まれてもすぐに逃げられる。
しかし、囲まれたら一瞬で終わりだろう。どう逃げるか……いや、どう殺すかだ。俺が逃げるなんて考えるわけないだろ。
「弱気になるな。甘さは捨てろ。俺は復讐者だ。世界を壊して創り変える。簡単な話だろ」
真耶はうわ言のように呟く。そして、自分に言い聞かせるように胸に手を置いて言い続けた。
そんな時、暗幕の中からガウェインの攻撃が飛んでくる。赤く光る剣だ。それは、真っ直ぐ真耶へと向かってくる。しかし、真耶はずっとその場で動かずに止まっている。
そして剣は真耶を突き刺した。
「死ね。”呪縛霊魂”」
ガウェインがそう言うと、その剣から黒い鎖が出てきた。その鎖は真耶に巻き付くと、呪いのような文字を浮かび上がらせる。
真耶はその文字に埋め尽くされそうになった時に目を開けた。そして、なにか小さく呟く。
「”消えろ”」
すると、胸に突き刺さって黒い鎖を出していた剣は消えた。
その光景に、その場の全員が目を丸くする。そして、すぐに真耶の方に目をやった。しかし、その目には何も浮かんでいない。どうやら目を元に戻したらしい。
これで、何かしらの能力を使用したことは間違いない。モルドレッドはそう確信して右手に魔力を溜め始めた。
「消す。確実に」
その冷酷な言葉はこの闇夜に深く突き刺さる。真耶は少し考えると、背中の剣に手をかけた。
(モルドレッド……緑色の髪の毛にロングヘアー。それに、三つ編みをしている。目は紅く、顔は整っている。背は少し低く、子供のような女の子だ。こんな形で合わなければ、ただの可愛い女の子だったのにな)
「きっと……出会い方が違えば未来も変わったんだろうな。だが、過去を悔やむことはしない。過去に囚われてしまってはダメなんだ。だからこそ、モルドレッド……君を殺すよ」
そう呟いて剣を引き抜く。その剣は、対極双剣ゲーゲンタイル。陰と陽の力を持つ剣。ある一定以上の衝撃を受ければ属性は変わる。
「……俺、お前みたいな女の子、本当は好きだよ。じゃあな、モルドレッド」
真耶はそう呟いて剣に魔力を溜めた。そして、1度空中で剣を振る。すると、風圧で剣の属性が変わり、陽の剣となる。
そして真耶はそれを確認すると、瞬き1つの間にモルドレッドの前まで行った。そして、勢いよく剣を斜めに振り下ろした。
「残念。死んで。”ディスアセンブル砲”」
モルドレッドはそう言って右手から黒いエネルギーの光線を放った。その光線は真耶に当たると、容赦なく真耶の腹に穴を開けた。
「っ!?ごフッ!」
唐突にあけられた腹の穴から紅く滲む液体がドバっと流れ出す。そして、迫り来る激痛に身悶え動けなくなってしまった。
「残念だったな。モルドレッドの魔法は普通じゃないんだ」
ガウェインは真耶に近づき、そう言って剣を振り上げた。またあの剣だ。次に喰らえば一溜りもない。
かと言って、防げるほど力もない。もうなすすべが無いのだ。どうやらここで終わり。そんな考えが頭をよぎった。
そして、その時決意した。
「仕方がない。この技を使うか……。”陰陽結合”」
そう唱えると、真耶の体が白い光を帯び始める。そして、瞬く間に真耶の体を白い光が埋めつくした。
しかし、それだけにはとどまらなかった。なんと次は黒い闇が真耶にまとわりついていく。そして、右腕がくらい闇で埋め尽くされた。
そんな状態の真耶は剣を一振する。すると、剣から白い光と黒い光を片面ずつ放つ斬撃が飛び出してくる。その斬撃は、モルドレッド達に攻撃をしかけると、真耶を逃がそうと動き回り始める。
しかし、真耶は逃げない。確かに逃げようとは思ったが、この技の本当の力は逃げることじゃない。一撃を強めることができるのが、この力でできることだ。
「さて、面白くなりそうだ」
真耶は小さくそう呟いた?
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