第101話 空の支配者
「それはな、この剣がアーティファクトだからだよ」
「どういうことですか?」
「アーティファクトにはな、物体を合成させる力があるんだよ。恐らく、アーティファクトが古いから壊れないように自動的に修復しようとしてるんだ」
「だから、その力を応用したってこと?」
その問いに小さく頷く。
真耶曰くだが、この世界の武器にはそう言う性質があるらしい。例えば、神器なら全て浄化する。遺物なら魔力を吸収する。
そして、アーティファクトは物を吸収する。そういう能力がある。
真耶はその力を応用した。元々、真耶に神器は作れなかった。それを作る素材がないからだ。だから、真耶はアーティファクトを作ろうとした。物を吸収する能力は強化するのに使えると思ったからだ。
それに、アーティファクトが1番代償が小さい。神器の場合、神に対し敬意を払わなければならない。
神に忠誠心を示し、神の犬になるなんて嫌だからな。
「……神……いつか殺さなければならなくなるんだよなぁ……」
そんなことを呟いた。その声が聞こえたのか、奏が少しこちらを見る。しかし真耶は、そんなこと全く気にせずに剣を鞘に収めた。
「……もう行くのか?」
「そうだな。今から行けば、すぐに行けるだろう」
「まさか、空を飛んでいこうなんて考えてねぇろうな。もしそう考えてるならやめときな。いくら隠密の魔法をかけたとしても、奴らの索敵スキルの範囲内に入ればたちまち落とされるぞ」
その言葉に真耶は目を見張った。隠密スキルが通用しない。考えられないが、相手がラウンズならありえないことも無い。
だとしたら、世界中の監視はラウンズの誰かが行っているということだ。怪しいのは……アーサーとランスロット、モーガン・ル・フェイ以外の奴らだな。
マーリンか……いや、恐らくガウェインかヴィヴィアン、モルドレッドのうちの誰かだろう。
狙撃して落としてくるのならモルドレッドだな。目に見える範囲で潰すならガウェイン、罠ならヴィヴィアン、さて、誰が来るだろうか。
「おい、まさか返り討ちにするつもりじゃないだろうな。そりゃやめとけ!相手の力は未知数だ。何も出来ずに死ぬぞ!」
「……そうだな。だとしても、ここから黒騎士のいるところまで歩いていけば、1週間はかかるぞ。それに、恐らくどこかで魔法を使えばバレてしまう。俺は狙われてるから瞬く間に蜂の巣だ」
そう言うと皆はブルっと体を震わせた。その様子がなんだか可愛い。食べたいくらいだ。
「……あの……マヤさん?どうしたんですか?」
「ん?いや、お前らを食べたいなーって思ってさ。胸とかいっぱい揉んで、食べたいなーとか思ってさ」
平然と出てきたその言葉に、その場の女性全員が顔を真っ赤にする。それは、奏達だけではなく、その店にいたお客もだ。
そして、男性陣はその言葉を聞いて言葉を失う。中には笑う者や、怒るものもいたが、そんなことは全く気にしない。
「ま、ま、ま、マヤ様!か、からかわないでください!」
「からかってなんかないよ。俺は本当にお前らを食べたいと思っている。お前らはそれくらい可愛くて可憐でもちもちとした肌をしていると言うことだ。多分、1週間はずっと抱きついていられる」
その言葉に、さらにその場の女性陣は顔を真っ赤にする。中には倒れる人も出てきた。
「も、もぅ!まーくん!どうしたの!」
「急に褒めだしても何も出ないですよ!」
「何かを求めているわけじゃない。この世界は等価交換だ。俺はお前らから可愛さを貰う。だから、俺はお前らに褒めるという代価を支払っただけだ」
「かっこよく言ってるけど、要するに、私達に抱きつきたいってこと?」
奏は半分呆れながら聞いた。すると、真耶は1度目を閉じるとゆっくりと喋り出す。
「違うな。それは間違っているぞ。抱きつきたいし、一緒に寝たいんだ」
平然と真耶は言いのけた。その言葉に女性全員が顔を真っ赤にして倒れる。真耶はそれを見て困って頭をポリポリとかいた。
まぁ、そんなことは一旦置いといてだ。とりあえず今は作った武器の試し打ちがしたい。空を飛んでいたら何かしらの敵に出会うらしいから試し打ちの相手はすぐに見つかりそうだ。
「フフフ……なんだか面白くなりそうだ。チョックラ行ってこようかな」
「え?どこに……?」
「ゲーゲンタイルの実力を試す」
真耶はそう言って不敵な笑みを浮かべた。
━━それから数十分が経過した。真耶は外に出ると、空を見上げて魔法の絨毯の上に立つ。
周りには人々が行き交っている。建物が所狭しと並んでおり、人々はその店に出たり入ったりしている。真耶はそんな街を見ながら地面に片膝をつきてをついた。
そして、魔力を込める。すると、絨毯は浮き上がり空へと飛んでいく。
「じゃ、行ってくる」
真耶は下を見つめてそう言った。
真耶の見つめる先には、奏達が心配そうに真耶を見つめていた。真耶はそんな奏達に微笑みかけると凄まじい速さで空を駆け抜けて行った。
「さて、どんなやつが出てくるか……」
真耶はそんなことを呟く。一体なぜこうなったのだろうか。あの20分間の間に真耶は奏達に言った。
「なぁ、とりあえず誰が敵か確認しとこうぜ。あわよくば倒せればめっけもんだろ」
「要するに、この剣を試したいから行かせてくださいと?」
「……」
「許さない」
「……許して……」
真耶は小さな声でそう呟いた。そして、少し暗い顔をする。そんな真耶に見兼ねた奏は渋々首を縦に降ったのだ。
だから今こんなことになっている。無謀だとわかっておきながら戦おうとするのだ。
「ま、誰が来ようと結局地上戦に持ち込むんだがな」
とか呟いていると、突然殺気を感じた。真耶は絨毯を上に移動させる。すると、その下を黒い光線が飛んで行った。
「あなたは……」
くらい闇から出てきたのはモルドレッドだった。
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