第100話 変化する剣
━━━━━━━━━━━━━━━━━……その少女はくらい闇の中もがいていた。出口はあるのに近づけない。逆に遠ざかることは出来る。何もしないと流されて、出口から遠ざかっていく。
(助けて……)
その少女は心の中で呟いた。しかし、誰も助けに来ない。少女はいつしか泣き出してしまった。
その涙は流れ落ちると闇の中に消えていく。
(あぁ……いつしか自分も、この涙のように消えるんだ)
少女の頭の中にそんな考えが浮かんできた。そして、その少女は出口に近づくことを諦め、何もせず、闇の中に流されていってしまった。
そしてもう一度、今度は声にだて、
「助けて」
と、呟いた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……真耶は武器屋に来ていた。あれから何時間か逃げ回ったが、皆は諦めて帰って行った。真耶はその隙に武器屋に来たのだ。
「あんたも大変だね。一体何したんだい?」
「知らねぇよ。ちょっと奏にお仕置きしただけなんだけどな」
その言葉を聞いて武器屋の亭主は呆れる。絶対にお前が悪いだろ、という顔をしてため息を一つついた。
「なぁ、なんでここに来たんだ?」
「は?」
「いや、お前、武器持ってるだろ」
武器屋の亭主はそう言ってきた。それに対し真耶は黙り込んでしまう。
「あ、悪い。言っちゃいけないことだったか?」
「……いや、いい」
真耶は静かにそう言った。それを見た武器屋の亭主は何かあると気づく。そして、そのことについて話しかけてきた。
「おい、話せ。一体お前の武器がなんだと言うんだ?」
「……これは誰にも話すなよ。アルテマヴァーグやアムールリーベは問題ないんだが……どうも残り二つの剣が代償が大きすぎる気がしてな」
真耶はヒソヒソと奏達に聞こえないように言う。武器屋の亭主も奏達に聞こえないように小さな声を出す。
「どういうことだ?一体何が起こるんだ?」
「試しに使ってみたが、片腕が吹っ飛んだ。だから、下手に使ってダメージを負う訳にはいかないんだ」
「それと武器を買うのになんの繋がりがあるんだよ」
「あと武器を一つだけ合成させたら代償が無くなるんだよ」
真耶がそう言うと武器屋の亭主は静かに武器を差し出してきた。そして、悪かったな、と言わんばかりの顔をする。
真耶はなんやかんやあっても大丈夫だよ、と言いたそうな顔をしたつもりで全然違う顔をしながら剣を受け取った。
「怒ってる?」
「は?怒ってねぇよ。なんで?」
「……顔が怒ってんだよ」
「あぁ……それは悪い」
真耶は少し呆れながらも申し訳なさそうに謝った。
━━それから1時間が経過した。真耶は剣を3つほど買うと、奥の工房を借りる。そして、魔法を使……わずに手打ちで剣を合成させた。
この世界の剣は日本と同じで叩けばできるんだが、真耶の持っている剣は違う。上に重ねておけば、徐々に取り込まれていき合成することが出来る。
真耶は一打ち一打ちに心を込めて打ち続けた。そして、叩く度に出ていた火花は大きさと量を増していく。
ついに、金色に光る火花が散った。そして、剣から神々しい光が発せられた。これは大成功だ。その場の真耶以外の人は全員そう思っただろう。だが、これは失敗なのだ。なぜなら、この剣は神々しいオーラを出すやつではなく、禍々しいオーラを放つものだから。
真耶はそれを見て失敗だと思ったのだろう。だから真耶はハンマーで思いっきり剣を叩いた。すると、剣は突如として色を変え禍々しいオーラを出し始める。
『…………え?』
その場の一同が声を失った。なんせ、剣の色さえも変わっているのだ。形は変わらないとしても、属性、色、オーラ、形以外のものが全て変わっている。
「これだ……これがこの剣の本来の色。黒陰斬剣オンブルヒタムだ」
真耶はそう言って剣を手に取った。確かにオンブルヒタムになっている。だが、明らかに別の何かを感じる。まるで闇の中に光が侵食していくようだ。
真耶はその時何か気づいたのか、ハンマーでもう一度剣を叩いた。すると、剣は再び神々しい光を放つ。
「なっ……!?」
その場の一同は再び言葉を失う。なんと、また形以外のものが全て変わったのだ。
その時、ふと真耶は思った。そう言えば、なんの剣を合成したかと。
そして、よく良く考えてみれば合成した剣の能力があれだったかもしれない。たしか、変化と神化、異化だったな。
神化と異化は真耶の魔力を注ぎ込むことで強化させた。元々は進化だったものだ。それに、陽の魔力と陰の魔力を注ぎ込むことで変化した。
どうやらその能力が適応されたらしい。陰の魔力しかなかった剣に陽の魔力がつき、さらに、変化をするようになった。
そう、もうこの剣はまえの剣とは違う。新しくなったこの剣はオンブルヒタムでは無い。
「フフフ……フハハハハハハハ!俺はつくづく運のいい男だ!オンブルヒタムは神化した!この剣は対極双剣ゲーゲンタイルとなった!」
そう言って高々と剣を掲げた。その剣は、くらい闇と同時に神々しい光を帯びていた。
「あ、そう言えばだけど、なんでまーくん武器の錬成とかできるの?」
「ん?そんなの簡単だろ」
「まさか!?スキルが増えたの!?すごいじゃん!」
奏はそう言って目を光らせる。他の皆も尊敬の眼差しで見てくる。だが、そんな中真耶は言った。
「違うぞ。俺が他のスキルを手に入れれるわけないだろ」
真耶は自慢げにそう言う。それを見て奏達は目を丸くした。
「じ、じゃあどうやって」
「それはな……」
奏のその問いに、真耶は自慢げに静かに答え始めた。
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