1.宇宙に飛び出せ!地球はどんな星?
地球を離れること三百万光年の位置に、トルバ星はあった。
このトルバ星では、惑星に住まうほぼ全員が脳筋であり、空を飛び、光線を出し、至近距離でのバトルをも得意とする戦闘種族だった。
そのトルバ星のスティール一家の、端正な顔立ちをした少女エルザ・スティールが、街の訓練施設で他の利用者を本気でボコボコにしていた。
「スティール……おめえ……ちったあ手加減しろよ……」
「そう言うのは私に指一本触れられてから言うことね」
その時だった。
町内放送が流れ、エルザが王宮に呼び出される。
「国王様、なんでしょうか?」
「聞け、エルザ・スティール。最近、我が恒点観測員が、三百万光年離れた銀河の太陽系内に生命の住む星を発見してな、お前にその星を調査を命じたいのだ。行ってくれるか?」
「ええ、構わないですけど」
「行ってくれるか!」
国王の興奮の後、横に立っている大臣が口を開いた。
「準備をする故、二、三日待っていてくれ」
「はい」
エルザを王宮を出ると、エルザは家に帰った。
「お母さん!」
「あら、おかえり」
「私ね、遠征に選ばれたんだ!」
「え?」
「王宮に呼ばれて、新たに発見された惑星の調査に行くことになったの」
「そう。王様直々の命令なのね」
「うん」
「宇宙には見たこともない生物もいるかもしれないわ。気を付けるのよ」
「うん」
エルザは部屋に入った。
「あ、おかえり姉さん」
部屋にいた双子の妹、ミーネアが声をかけた。
外見こそ似てはいるが、ミーネアはエルザとは逆で、戦いを好まない性格である。
「私、新たに発見された惑星の調査員に選ばれたんだ」
「そうなの?」
「二、三日で出発よ」
「気をつけてね」
「うん」
三日後、エルザは王宮に設置された発射スペースにやってきた。
「エルザよ、惑星に住人がいれば、聞き慣れぬ言語を話すかもしれん。これを持っていけ」
大臣がエルザにラップに包まれた卵焼きを渡した。
「これは?」
「翻訳卵焼きだ。これを食べればあらゆる言語を翻訳することができる」
「なにそのドラ○もん設定」
エルザは卵焼きを荷物にしまう。
「じゃ、行ってきます」
エルザは宇宙船に乗り込み、トルバ星を飛び立った。
「三百万光年か。とてつもなく遠いな……」
「これより、ワープに入ります」
宇宙船が音声を発して、ワープ航法に突入した。
辺りは星々が輝く真っ暗闇から、色とりどりの華やかな世界に変わる。
ワープ航法とは、発達したトルバ星の科学で作り出した、異空間に入り込んで目的地まで最短距離で移動する、いわゆる瞬間移動のような技術である。これを使うことにより、例え光速で何百年何千年といった、果てしなく遠い場所でも、数分で辿り着くことができるのだ。
「間もなく、ワープを終了します」
異空間を抜け、宇宙船は地球の前へと飛び出した。
(なんて美しい惑星なんだ……)
宇宙船が地球の大気圏へと突入する。
空気抵抗で宇宙船が炎に包まれる。
物凄い速度で落下する宇宙船は、豪快に海へと墜落し、その機体が大破してしまう。
「うわああああ!」
エルザは爆発の衝撃で吹っ飛ばされ、空中に静止する。
「マジですか……」
エルザは、無事に地球から帰還できるのであろうか。