夜空の星空に捧げる五重奏15
「ソフィアさん!!どうでもいいので!!止めてください!」
ルディアの叫び声が耳に入ってくる、どうやら何かしらの策があるようだ
ある意味では寂しいけれども幕引きか
最後の斧と剣の衝突音が夜空に響いた
「五分間って案外短いんだな」
ソフィアが一歩二歩三歩と後ろに軽やかに移動し距離を取りながらサガリに話を掛ける
「そうでございましょうか、私には永遠とも感じられるほどの長い時間だと思いましたが」
サガンは大きく肩で息をし疲労をどうにかごまかしながら言葉を返した、巨大な身体は疲労が色濃く出ており斧が震えていた
「そうか、だったら次で最後にしようぜ」
自分の中では既に憂さは晴れていた、というか悪魔に身体が乗っ取られている時点で既に怒りは消え去っていた
てかあれだろうちの妹は喧嘩吹っ掛けて負けただけだろこれ
そんなところも可愛らしいところではあるが
まぁだからこの勝負はもう後腐れなく終えることはできる、ついでに言うのであればこれ以上は要らない蛇足の部分だ
勝敗はすでに決しているのだろう
「最終通告として一応聞いとくがその娘から出ていく気はあるか?あるんだったら見逃してやらんことはない」
「すいませんね、こちらもこのような機会はそうそうないのでね、諦めるという選択肢は端からありません」
「じゃあしょうがないな……さ、て、最後の打ち合いと行こうぜ」
牛は息を整えている、肩が大きく上下に揺れていたがそれも徐々に落ち着きを取り戻してきていた、息を一つ、二つ、三つと吐いたあと牛がようやく姿勢を整えた
「それは残念です、打ち倒すまで行きたかったのですが」
「だったらあと数百年間ぐらい腕を磨くんだな」
ソフィアは小さく笑った、そうして二刀の剣を構える、一刀はやはり桜色の剣、もう一刀は真っ赤な剣その二刀の剣がソフィアを守るように構えられた
サガリも斧を構える、これ以上の戦闘はもうすでに無意味だからこそ、この一撃に全てをかけるというような構えだった
だからこそ私も最高の一撃を放ってやろうと思った……というかこれを免罪符にしてやろう
「ふぅーーー」
ソフィアはゆっくりと息を吐いた
これ以上の言葉は要らなかった、これ以上の会話は要らなかった
最後の思考の時間だ
これが最後の打ち合いだ、この一瞬、この一撃を楽しもうじゃねーか
そして思考を断ち切った
真っ白な世界が広がる、目の前にいるのはサガリだけだ、それ以外の情報はない、要らなかった
気配を消し、音を消し、視覚を消し、目を消し、耳を消し、触覚を消す、全てをそぎ落とした後の残ったものだけに集中する
感じられるのはすでに二本の剣とそれを斬る相手だけだ
静かな時間、静かすぎる時間、誰かが手を振り下ろすことはなく、最初の掛け声を掛ける審判がいるわけでもなかった、二人は静かに立ち構えている




