夜空の星空に捧げる五重奏14
握った拳を視界に入れた、わからない声を耳に入れた、そうして気付きを得た、自分での気づきかはたまた偶然の気付きかは分からないが
あぁもう一つだけまだありました
私をずっと昔から支えてくれている存在がまだもう一つだけあった
多分生まれた時からずっと一緒の存在、私の窮地を何度も救ってくれた存在、存在といっても良いのか分からないがそれでも私を確実に支えてくれている物だ
できるんでしょうか?
わからないと言うしかない、でもやってみたら案外面白い結果が返ってくるとも考えられた、思考できてしまった
やる前に失敗したことを考えたって仕方がない
だから思考を走りださせる、解釈を広げて、意味を広げて、概念を広げて、所懐を広げていく
自分の概念を壊せ、自分の解釈を壊せ、自分の意味を壊せ、自分の所懐を壊せ
壊して壊して広げて広げろ
自分の能力、固有の与えられた能力に魔力を注ぎ込んでいく、形なき物に形を与え形なき流れを注ぎ込んでいく
ルディアの周りの魔力が渦を描きながらルディアに集まり吸収されていく、ルディアのローブが魔力によって音を立てて暴れ始める
私の能力は平たく言ってしまえば「鎖」だ
鎖を射出して相手を絡みとり、固定させ、動けなくさせるという能力
だが、だがそれは誰が決めた?誰が決めて、誰が自分の能力に枷を付けた?誰が自分の能力に言葉を付けた?誰が、誰が、誰が………
…………それはすべて自分だった
勝手に自分が持っている能力はこれであると感じて、勝手に自分の能力の形を形どってしまった、神に言われたわけでもなく、誰かに言われたわけでもないのに自分の能力はこれですよと決めつけてしまっていた
だったら逆の事だってできるでしょう、自分の能力に枷なんてなくて、自分の能力に限界なんてないって考えることだって
できますよね
「応えてくださいね」
魔力は形なき物に付着し染み込んでいく、形なき物の入れ物に溜まりこんでいく
鎖とは即ち繋がりだ、繋がりを作るために道具、繋がるために、繋ぐために、繋いで、繋いで、紡ぐために存在しているものだ、だからその繋がりに干渉させる
繋ぐことができるのならば、その繋ぎに触れることだってできるだろうだから私はそう解釈して、そのように理解して、魔力を使い拡張していく
儀式に十二分に時間を使った
その間は不安しかなかった、これで良いのかとか、この考えは本当にあっているのかとか、そもそもの問題として能力に魔力を入れ込むことができるのかとか、検証すらなく一発本番の一発勝負だけどそんな不安という足枷よりも強く、強く、誰よりも強く押してくれている誰かがいた
だから私はそんな不安を置いて走り出している、押してくれる何かがいて自分の手を引っ張っててくれている何かがいる
それだけで理由は十分だった
世界は私だけ、周りの音は脳内の外に置いてきた、周りの感覚は外に置いてきた、周りの情報は外に置いてきた
真っ白の世界で相棒を強化していく
………………………………
……………
……
時間だ
「行きますよ、私の相棒、今回も助けてくださいね」
ゆっくりと目を開け、誰もいない虚空に向かってルディアは喋りかけた、その声は誰に聞かれるわけでもなくただただ虚空へと消えていった




