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[主人公たち!]  作者: 狼の野郎
夜空の星空に捧げる五重奏
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夜空の星空に捧げる五重奏5

身長が小柄な二人、壁に背を持たれながら二人はぼぉーと眺めている、眺め続けていた、何かあるわけではない、何か目新しい景色が見えるわけではない


何故現在時間を持て余しているかというと、こんな頭で外に出たところで碌なことは起きないと思っているからだ


簡単な話、お湯を沸かした場合そのお湯の温度は大体100度に達しているという事実がそこにはあるということだ、沸騰をした後の行動なんて誰もが同じ行動する、お湯の火を止めるだろう


火を止めた後のお湯はどうだろうか、お湯は数十分、数時間は自身の温度を保ち続けるだろう、つまるところそういう事だ、頭だって沸騰した後にまた火をつけて温度を上げればまた簡単に沸騰することだろうだからこその休息の時間


まぁ…だからといって何時間も待つということはしませんが


リーシャが徐々に回復していく様子を眺めながらそんなくだらないことを考えていた、隣にいる吸血鬼の王様も同じ様子を眺めているようだった


私には彼女の思考はわかりませんがね


「………さてと」


小さく呟いたのと同時にルディアは腰を預けていた壁から離れ、静かに集中している人に気づかれないように外へと出向いた


扉に手をかける直前に一つだけ呪いの言葉をかけながら


「約束守ってくださいね」


そんな呪いの一言をリーシャに掛けた



当たり前だが外は真っ暗であった、所どころに街頭がついていて完全な暗闇というわけではないがそれでも星明り月明かり、街頭だけでは国全体は明るくはならない


だからこそ暗い道の中ルディアは歩き出す


「…始めますか」


今日は国の騒がし者の討伐、誰に頼まれたわけでもなく、誰かに称賛されるわけでもない、誰かが観測するわけでもない、先ほどまでにいた吸血鬼の王様からの依頼でもない、ただの自己満足の討伐


「ま、夕飯前の運動ってだけですけどね」


いまだに出来上がっていない夕飯についての言葉を募らせながら、自身の真の感情を隠すように言葉を一つだけ吐きながら暗い夜道を一歩二歩と歩を進めていく、そうして心に理由をつけながら歩きだし始めたところで扉の開く音がした


その扉は普段使っている扉だった、ルディアは音がした方向、すなわち魔道具店の扉へと目を向けた


そこには当たり前だが吸血鬼の王様が立っていた


「でしょうね……どうしたんですか?あぁもうお帰りになさるんですか?ソフィアさん」


「いや、なに…あーそうだな…。」


先の事もあって話しずらいのだろう、そんな様子が手に取るように分かった


しょうがないと割り切りため息を吐いた後にルディアは話始める


「ソフィアさん、ギクシャクしてもこれ以上仕方ないんですからもう先ほどのことは流しませんか?私もお腹が減っていて判断を誤りましたから」


「お腹が減っていたって、猛獣か何かかよ」


「妹馬鹿よりかはマシだと思いますがね」


「…………………………。」


「…………………………。」


冷ややかな空気がお互いの間に流れる、普段絡まない二人だからこその煽りあいそれはさぞかし冷ややかなものだった、というか冷ややかなものにしかならない


これ以上くだらない話をして手が出始めたら今度こそ誰も止める人がいないために収集がつかないことになる


そんなことになる前に話を進めたほうがいいと判断し、ルディアは用件を聞く


「不毛ですからやめましょう…。ソフィアさん、私に何か用があるんじゃないんですか?それともただの私の勘違いですか?」


「あーいや、お前に用はあるよ、ちゃんと」


「お前じゃなくて私の名前はルディアです」


駄目ですね、なんか根本的な所から相性が良くない気が……元から私は魔王とかとはあまり良い縁ではないですから、そのせいですかね


ソフィアも言いたい事を喉の奥へと押し込み、気持ちを一旦彼方へと飛ばして物語を進める


「……ルディア、お前に渡したい物というか預かりものだな、これをアルから投げ渡されてな」


”これ”というものをソフィアはルディアに投げ渡した


「おっとっと」


それを落とすことなく大事に手に取り、それをまじまじと見つめる、それは手に収まるほどの物であり、一言で言うならば小さい羅針盤その中心から伸びた針があり、それは一点を示していた


「これは?」


ルディアはさも当然の疑問をソフィアに投げかける


この瞬間にアルさんがただのコンパスを渡してくるわけがない、と思ってるんですけど…。


「さぁ?なんなんだろうな」


「………。」


「いやさ、そんな顔されても分らんもんはわからんからな、私は頼まれたことをやったまでだ、アルがなんの意図を組んで渡したのかなんて私にわかるわけないだろ」


「はぁ、そうですか、そうですよね…。まぁどうでもいいか」


ルディアはそれを受け取った後、また歩き出す


「…ちょっと待て、今の時間からどこに行くんだよ」


ルディアは歩みだした足を止めソフィアと顔を合わせるように向き直る、当たり前だが魔道具展の前にいた吸血鬼の瞳が目に入る


王様の瞳、真っ赤な真っ赤な瞳がルディアの目に入る


それは妹と同じ色をしていた、その瞳の形はリーシャと同じ形をしていた、だがそれでも妹とは分厚い壁を挟むほどに違っていた、それは吸血鬼という多くの物語において悪役に挙げられるであろう種族なのにもかかわらずその吸血鬼の目は真っ直ぐな目をしていた、一切曲がらずに自分が間違いなんて起こすはずがないと言わんばかりに真っ直ぐだった


全てから、何一つからもそらさない目だ


その目に見透かされる、見透かされている


「ただの散歩ですよ、どーせ夕飯ができるまでもう少しだけ時間がかかりそうですし」


「そんな殺意でか?さぞかし面白い夜になりそうだな」


「面白くないですよ、新しい事なんてないし、楽しい事でもない、誰かに頼まれたわけですしね」


「散歩は頼まれてやることではないだろ」


「それはそうですね……揚げ足取りが上手ですね、嫌われますよ全人類から」


「全人類は言い過ぎだろ………その散歩に私を混ぜろ」


「はぁ?」


「そうだな、だったらこれはあれだ、王様の命令だ、国民なら従え」


こいつめ


ひとりでやってろ、と言いたいのを十二分我慢し、というか出かけた言葉を喉元に押し込んでげんなりとしながらルディアは次の言葉を出す


「どうしてですか、国王様が出る幕じゃないですよ」


「そんなのは知ってる、そんな事は私が一番知っている、こんな問題は国に任せればいいんだ、任せないといけないんだ、だけど私は妹に手を出されて黙っていられるほど温厚ではないんだ」


「はぁ…まぁ、はい、ついてくるのは勝手ですが自分の身は自分で守ってくださいね?」


「そんなものは端から承知だよ、むしろ私がお前のことを守ってやろうか?前みたいに」


「……守られていませんし、守られようとも思いませんよ。私は私の足で立つだけです、王様も足元掬われないように気を付けてくださいね、吸血鬼の弱点って銀のナイフでしたっけ?」


「やれるもんならやってみろ、敵が二、三人いたところで大した問題じゃねぇ」


吸血鬼は不敵な笑みを見せ、普通の魔術使いは瞳を鋭くする


二人の視線、吸血鬼の赤い瞳とルディアの青い瞳が交わった、青色と赤色、その二つに関係性なぞ余りないがそれでもその二人の色は相反していた


混ざりあわずに自分の色を突き通しているためか、混ざりあうことがなく、お互いがお互いを牽制していた


だからこそこの二人が奏でる音は鳴り響き続けた


最初は二人、二重奏だ

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