夜空の星空に捧げる五重奏
長い風呂を終え自身の部屋へと帰ったルディアは髪を乾かしながらのんびりとしていた、バスタオルを使い水を出来る限り拭き取り後は魔術を調整して紙が乾く程度の熱量を出し同時に風を送り付け髪を乾かしていく
なんてことない夜の日常、何かあるわけじゃない、夜の深い時間、皆が寝静まり始めているそんな静かな時間帯だ
そのため暖かな風の音だけがルディアの耳をくすぐっていた、その音に耳を静かに傾けながら髪が完璧に乾くまでぼぉーと自身の散らかった机を見ながら待っていた
虚無の時間、何かしらの大枠があってそれについて考えることなんてことはなく、かといって小さな考え事なんていうものもない、ただただ時間が過ぎるまでぼぉーとしている時間
この時間は無駄かもしれない、どこまで行っても考えるという行為を捨てることは悪手なのだから
…だけれども私は好きなんですよね、こーゆーのんびりとした時間も、誰にも邪魔されない時間帯、声が入らなければここはどこまでも自分だけの世界
だって世界で認識しているのは自分自身だけなのだから
髪を乾かし終え、この静かな夜の一人の時間を楽しもうと乱雑に置かれた本たちに触れようとしようと手を伸ばした瞬間、感じ取ってしまった
外からの魔力の流れ、使用された後の魔力の流れを感じ取ることができた
それも暖かいような魔力の流れではなく、苛烈で刺々しい戦闘に使用されたような魔力の流れを
「…………。」
ルディアはため息がでそうになるところを飲み込む、そして本に触れそうになりつつあった手を引く
本を読むためのポイントとしては静かな場所、またはそれ以上に自分にとって興味をそそる内容であること、はたまた自分がどれだけ集中できるかという点に抑えられるだろう
だからこそルディアは迷う、本の内容としては申し分ない、今すぐにでも読みたい、そして今の状況は一瞬の迷いもなく断言できるほどの静かな場所だ、今なお外から流れてきている魔力の流れさえ無視をすれば何にも問題なく読めてしまうだろう
「はぁ」
ルディアは一つため息を零す
無視を決め込んでここの治安維持の部隊に任せてもいいじゃないですか…。
なんて考えたがそれでも本には手が伸びなかった、それどころかクローゼットに足が向かっていた
頭の中では自分には無関係だ、自分が行ったとしてもどうする?と考えるが体が心が既に外へ向かえと叫んでいた
いつも通りの服装へと着替えつつ持っていく道具も揃えていく
「ま、明日の朝の新聞で被害者がでましたとかだと目覚めが悪くなりますからね」
と自分に言い聞かせながら窓から飛び出していった
涼しい風が頬に当たるのを感じながら夜の空を駆け回る、周りに見える景色は静かなものだ、誰もが自身の家へと帰り明日のためにと少し遅い夕飯を食べたり、お風呂に入ったり、英気を養うために布団に入ったりしている時間帯だろう、すなわち日付が変わるには早いが外に出る時間ではない
だからこそ全速力で地面を走っていても誰かにぶつかる心配なんてものはない
テンポよく、止まることなくルディアは進んでいく、景色は流れていくと同時に魔力は目的に近づいているためか色濃く感じ取れるようになってきている、強制的に魔力で筋力を上げているため普段の筋力では見ることができない速度で目に入ってくる情報が目まぐるしく変わっていく、ただ街を駆け抜けているだけであって景色がガラッと変わるなどということはない
自分自身に作られた風に揺れて服装が揺れる、服の裾は休まることなく羽ばたき続け、目に映る景色が茶色、茶色と何度かの茶色を通り抜けた所で目的の位置までたどり着いた
そこは明らかに他の場所とは大きく異なり魔力の濃度が濃くなっていた
ルディアは息を整えると同時に周りを見渡す、そこは円形に大きく広がっていた広場だった、いつもならば活気がある場所だが時間帯ということもあり人はいない
ルディアはとことこと魔力の主たちを探すために歩く、街灯は光っているため目を絞る必要はない
「さてと」
ここに来るまで音は聞こえませんでした、ということは既にここにはいないんですかね?
と思考を挟み後ろで手を組みながらのんびりと歩いていた
いないのであればそれでいいんですよ、ここが一番魔力の濃度が濃いですし、魔力が魔力を引き寄せてしまっていてこれ以上追えませんしどうしようもないですしね、ないならないで良いんですよ
周りを見渡すが戦闘が起こっていた様子は見れない、それどころか辺りを見渡してもどこかが欠けている、欠損している場所も見つからない、何一つ変わらない街がそこにあった
「あーはぁ…」
これから起こるであろう出来事を想像するとため息がでた、そしてそのため息共に全身しながら脳裏に考えを巡らしながら歩を進めた
これはチンピラ同士の抗争ではない、熟練度がある程度ある者同士の戦闘だ、自身がこの遠距離からも追えてしまうほどの魔力量を見ればその理由付けにはなるだろう、それにここで戦闘があったことは明白なのにも関わらず誰も騒ぎを聞きつけて来ていないことを見ると何かしたの魔術を展開していたことも明白
別段高度な魔術というわけではないので何とも言えませんけどね。
そしてここまで街を軽く見渡しても散らかっている様子が一つもない点を踏まえたら、もう一つの予想が立てられる
地面にいなかったという仮定、考えたくもないがその仮定がどうしても浮かんできてしまう
もう一つ安直に考えるのならば魔術で物体が破壊できないようにしたという仮定だが、それに対しての納得がいく理由が付かない
まー音を消すのはわかりますがね、余計な茶々を入れられないために自分たちの世界を構築するためにした行為というのはわかります、そこだけは納得ができますね…。ただ物体まで気を配るのは余程の理由がなければやらないんじゃないんでしょうか、余計な魔力を使いますしね。
だから安直な仮定は捨てていいだろう
とんとんとんと街灯が地面を照らしている白色の光の下を歩いていく
歩いていけばいずれ見つかるのではないだろうか、と余り良いとはいえない気持ちを持ちつつ歩き続ける
ルディアは頭の中で仮定を纏める
一つこれはチンピラ同士の戦いではない
一つこれは魔術に精通したものが必ず一人限りいる
一つこれは空を飛びながら戦闘を行った可能性がある
これだけの考察ができてしまうほどの材料が揃ってしまっているのだ、だからこそ先程のため息の理由もここにある
これを起こしたのは身内の可能性が高い
魔術は万人に扱えるものではあるが、それでも万人が自由に使えるものではない、戦闘もできる人とできない人が存在する、万人が戦闘を起こすわけではない、それに空を飛ぶという高度な技術も加えるとこの吸血鬼では片手で数えるぐらいしか存在していないのではないか?
この国はそこそこ大きいですからね…それに私もそこまで精密に把握しているわけではないのでちゃんとしたことは言えませんが。
それでもできる人は限られてくる
アルさんは先程まで縛られていたので無いとして…当てはまる人を上げていくと部分的な所を見るとルドさんにヒイロさんも一応入るんですよね…飛べるか飛べないかはさておき、まぁあの二人の底が見えないのでなんともですけど
だったら完全に当てはまる人はと考えた際に挙げられるのは国王とその妹、そして情報屋ぐらいですかね
ツバメさんがへんな事に顔を突っ込んでいなければ今回の騒動には関係ないですけど
と無駄な考えを張り巡らせていたルディアの目の前の街灯の光の下である一つの答えが倒れ伏していた、ルディアはゆっくりと近づく、それはルディアの心情を表している呆れている足取りだった
それは彼女の生命力の高さを買っていた故の足取りだった
「なにやったら今日の一日でこんなことになるんですか」
街灯で照らされている光の下ルディアは地面にひれ伏している人物に目を落とす、その人物は千切れかけている腕やら切り刻まれて痛々しい傷跡から未だに止まることなく血を垂れ流し続けていた
血の池は時が流れるにつれ世界を侵食していく
その浸食具合にも目を向けながらルディアは地面に倒れ伏せている人物に声をもう一度掛けた
「はぁー…リーシャさん、一体全体何があったんですか」
とリーシャを肩で持つ形で拾い上げながら立ち上がらせる、リーシャもなされうるがままにルディアに身体を預ける
千切れかけていた腕が重力という名の重しによって地面に向けて投下される
血が広がっていた地面へとその千切れた腕が接触した
べちゃりとそれはそれは不快になる音が鳴り響いた




