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[主人公たち!]  作者: 狼の野郎
少女たちの軌跡
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最後の景色には何が写っているんでしょうね。

ぽちゃりと水音が響く、湯冷めを防ぐ蓋から水滴がお風呂に落ちたようだ


自分が浸かっているお湯を両手ですくい、ぱしゃりとルディアは自分の顔に向けて水を被せる


そのために顔に付着したお湯がぽちゃりと今度はルディアの顔から水面に向かって水滴が落ちるとともに言葉を一つ漏らした


「ふぅ」


今日一日の疲れを表すかのようにルディアの口から自然とため息が零れでると共にルディアはお風呂に浸かりながら今日の出来事を脳裏で振り返った




すっかり辺りが暗くなり、星々の輝きと月明りそれに加え人工的に作られた国の活気を表す輝きが一面に広がりだした頃にいつも通りの、なんの変化も無かった魔道具展にようやく到着した、到着した後に扉を開けた先には案の定だがアルとルディア、そして今回の厄介ごとを頼んできた少女がのんびりとお茶をしていた


お茶をしているのは構わないのですが…。まぁそれはそれ、これはこれということで


「はぁ」


ルディアはため息一つと共に手を前に出しアルに向けて能力を発動する


「ちょ!?」


アルも予期せぬ行動だったのかと情けない声を出しながら問答無用に絡めとられた、ルディアはそれを行うだけで満足したのかアルに興味を見せることなく依頼を頼んできた少女の前へと立ち手に持っていた白き花「ユウゼンギク」を差し出す


「はい、これが欲しかったんですよね?どーぞ」


「あ、ありがとうございます……これでお母さんの体調もきっと良くなりますよね」


「なりますよ、きっと…というかならないと苦労が水の泡なので、治って貰わないと困りますよ」


と先ほどの白き竜との無駄な戦いを思い出し苦笑いを浮かべながらルディアは少女に対して言葉を残した


少女はもう一度満足げに嬉しそうな笑みを浮かべ感謝の言葉を贈った、そして夜も遅いということもあり、リーシャと共に帰っていた、ルドもほぼ同時にやることがあると言い残し森にある家へと足を向けていった


ルディアとアルの二人だけになった魔道具展は先程までの煩さはどこへやら、しんと静まり返った魔道具展だけがそこにあった


「疲れた」


「お疲れ様だな」


「なーにがお疲れ様ですか、こっちは本当に疲れたんですからね?」


「はは、何があったか知らんから特段何か言えるわけじゃないけどまぁ本当にお疲れ様……でだこの何にもできなくなる拘束を解いていただけると助かります」


「はー。まー気が向いたら解除してあげますよ」


そこまで大きな戦闘を行っていたわけではないがそれでも長距離の移動とともに多少なりの命のやり取りがあったために疲れを取るためにアルの事は一旦放置を決め込みお茶会があったものを片しながら風呂を焚き、現状に至るというわけだ





ぽちゃりというお湯の音がルディアの思考を現実世界に戻した、温かい温度を自身の身体に集めるようにお湯を自分に向けて集めるように腕を動かす、それによって綺麗な小さな小さな波が出来上がり、二回、三回と自分の身体にあたり逆の波長となり新たに発生した波とぶつかり波と波が互いに自身の存在を打ち消しあう


「……………………。」


暖かな水の中へと身体を沈めていく、当たり前だが衣服を着ていないために身体の至る所から熱が直接伝わってくる、心が、動いて傷ついた身体の筋繊維が修復されていくのを感じる


誰かからの言葉だったような気がする「お風呂に入るという行為は命の洗濯である」そんな言葉は案外的を得ているのだろう


「友人関係狭いですからね…。ルドさんかアルさん…。オーローンさんかシャルルさん…。」


その言葉は誰かから聞いたのでしょうね、本から得た知識というのも捨てきれないですが


「………………。」


オーローンさん、シャルルさん……。くよくよしては行けないと考えてもダメですね。どうしてもどうしても後悔が積みあがっていきますね、あれをすれば、これをすれば良かったのではというたらればを積んでもどうしようもないのに


思考をどうにか切り替える為に口をお湯に沈める、それによって当たり前だが顔半分もお湯に埋まる。少しの息苦しさとそれを超えるほどの温かさが同時に襲ってくる、そしてその状態のままルディアが口から空気を抜く、この行為に何かあるわけでない、お風呂に入った人間ならば一度なりともやったことがある、無駄な行為だ


ぶくぶくぶくとお風呂の表面に小さな泡が出来上がっては消えていく


ルディアはの目はその気泡が発生したり、消失していく様を静かに眺めていた



病んでいるわけではないんですが…。ちょっと楽しいですね、これ。


一分ほどその無駄な行為を続け、その行為が少しだけ楽しくなってきた時ふと一つの考えが自分の中に思い浮かぶ


考えても仕方がない、迷宮のような…答えがでない問、答えは存在しているのだが確証をとることができない問が無駄な行為を楽しんでいたルディアの中でぽっと湧き上がる


……………無駄な行為。


全てが終わった後のお話、これは一度幕が下がったお話の続き


私は。……。いいえ、オーローンさんとシャルルさんは世界を救いました、夢想教という宗教から…違いますね、宗教が悪いんではなくそれを悪用しようとした奴が悪いんですよね…。


元凶…。エニュプニオン…。全ての元凶はエニュプニオンにあった、何もかも全てがあいつの仕業だった


ぶくぶくぶくと考えを空気と一緒に巡らせる




これまで負けられない勝負が多すぎて、必死すぎて考えたことが無かったある一つの問題、夢想教の真なる目的、つまるところエニュプニオンがどうして人間を操り世界を掌握しようとしていたのか


………。何をしたかったのか良くわかりませんが無駄が多すぎるんですよね、人を殺したかったのならばエニュプニオンが実際に手を下せばいいんですよね。世界を掌握したいのであれば…夢想教なんて作る必要性がないような気がします…。


何もかもが突き詰められていないんですよね、エニュプニオンの行動に理由をつけると必ずどこかしらに穴が存在します。


これまで少しだけ長い時間浸かっていたからか肩や肘などが赤く火照っていた、その火照りを冷ますためにもルディアはお湯に顔を埋めるのをやめて、浴槽の縁に腰を掛ける


ルディアの顔から、胸へ、そしてお腹へと付着したお湯が自身の住処へ帰るように滴っていく


そんな水滴の挙動を眺めつつ、またもう一度だけ思考を海へと流していく


まだ考えられる可能性はある、それはエニュプニオンが何も考えていない可能性、全ては遊びであり、自分ができると感じたことをただ素直に実行していったという可能性


…………。思い出すことも憚られるがあの時、虚数空間で対面したあの時、あの瞬間、あれは頭が空っぽのやつでは無かった、そういうタイプには思えなかった、だからこの可能性はないだろう、捨てていい可能性だとルディアは思考をし、可能性を破棄する


だったら何なんでしょうね……。まぁあれですか、もう過ぎ去ったことを考えても仕方がないですよね、過去の出来事、もう過ぎ去ったお話、これ以上考えても仕方がないお話ですよね。



浴槽の縁に座っていたからか既に身体に付着していたお湯は気化し空中へと消えていった、身体は気持ちよく湯が覚め、お湯に長時間入っていたからか今日の疲れも粗方消え去っているようにも感じられた


これ以上考えても仕方がないですね……………でも。何故でしょうか。


ルディアは何も身に纏っていない自身の胸に手を置く、その胸は速くそして大きく高鳴っていた


何かの不安がそこには募っていた


「疲れですかね、はぁ」



………………………………あ、違う、アルさんの鎖を解くの完全に忘れていました

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