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[主人公たち!]  作者: 狼の野郎
少女たちの軌跡
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ただの吸血鬼とただの魔術使い少女の異世界生活10

ルディアとリーシャは明るい夕日に照らされつつのんびりと上空を滑空しながら帰路に着いていた


「はぁ、ようやくユウゼンギクが取れましたね」


数本の白い花ユウゼンギクを大事に持ちながらルディアはそんな事をぼやいた


「っは、全く持って余裕だったな」


「あー?何言ってるんですか、あんだけボロボロになったのにその言い草はもはや中々の物ですね」


「なんのこったか、私にはそのような記憶は存在していないな」


「よく言いますよ、今着ている服だって私が直さなければボロボッロだったじゃないですか」


「この服は完全修復機能がついているからな、そんな事をしなくても勝手に修復を始めていたぞ」


「そんな分かりやすい嘘をつかないでください‥‥はぁ、疲れた」


その一言を聞き終わり、リーシャはクヒヒと楽しそうに笑った


飛び立つ前にルディアに飛ぶ速度についてこっぴどく釘を刺されたためにリーシャはこれでもかという速度で飛行していた


リーシャは家に帰るまではまだまだ時間がかかりそうだなとそんなのんびりとした思考をしながらルディアの言葉に耳を傾けていた




まだまだ夕日は落ちる様子はない


だが優しい影は時間が傾くごとに近づいてくる、それによって肌寒く感じ始める、その肌寒さが先ほどまで戦闘を起こして火照っていた二人の身体にとって気持ちが良かった


「はぁ‥‥‥上手くいって良かったですね」


「そうだな、ルディアの方針を聞いたときは少しだけ驚いたよ‥‥‥ドラゴンを殺さないっていったもんだからな」


「私とリーシャさんが本気を出せば多分ですけど倒せます‥‥いいえ、そうではありませんね、殺せますが正しい表現ですね」


「だろうな‥‥‥私がいなくともルディアはやれるだろうさ、それで?」


「本気を出しちゃダメなんですよ、殺し合いでは」


ルディアを抱えながらリーシャは首を少しだけ傾げた、ルディアの言葉の意図が汲み取られずに


「?私は本気だったぞ」


「‥‥‥‥まだなんですよ」


「まだ?」


「リーシャさんはまだ本気ではないんですよ」


本格的に意味が分からなくなり、リーシャはもう一度首を傾げる


自分はあの時全力だった、全力を出して負けたんだ、本気で絶対に負けたくない思いで白きドラゴンと戦っていたのだ


だからなおさら他人であるルディアが自分の気持ちを見れている意味が分からなかった


他人なのだから人の気持ちなんてものは分からないだろう、それに加えて舐め腐った態度で挑んでいたわけではない、それだけは絶対な自身があった


だがそれでもルディアが根拠もなく、そんな事を言わないことも彼女を少なからず見てきたリーシャには理解できた


だからこそルディアの言葉の意味が一切理解できなかった


それでもこの空気間に触れてからか、それともこののんびりとした飛行速度だからだろうか?どれが起因したか分からないがルディアの回答をせかす気にはなれなかった


だからリーシャはただ待った


その様子を見てルディアは言葉を続けた


「・‥‥すいません言葉が悪かったです、リーシャさんが本気でやっていたのは分かりますが…‥本気にも度合いが存在するんです」


ルディアは何かを思い出すような、自分の体験を思い出すような、はたまた少し昔を思い出しながら遠くを見つめる


それは数秒だけだった、そのすぐまた後に言葉を続ける


「命が戦闘に乗るほどに本気も比例しますからね、命に近づくほどに本気の外側に行き始めるんですよ、だからこそなんですかね、リーシャさんは強いためかはたまた生命力が高いためか外側まで行けてないんですよ、客観的にですけどね」


ルディアは小さく「あなたはそのままでいて欲しいですけどね」と言葉を漏らした後、そのまま続ける


「すいません、少しだけ話が逸れましたね、本筋に戻すと命のやり取りが極限までいってしまうと戦闘は苛烈になっていきます、戦闘が苛烈になるほどに取り返しのつかない怪我が増えることでしょう、もしもです、もしも実力が天と地ほど離れていればそんな怪我を被らずに終わることができたでしょうけど、今回はそうではなかった」


ルディアはそのまま続ける


「あの白いドラゴンは竜という括りの中では多分上位に位置しています。私もあまり情報を持っているわけでは無いのでしっかりとしたことは言えませんが」


「それはわかるぞ、我も手を抜くなんて考える暇なんて無かったからな」


「そうですよね、だからです、本気で戦闘を起こして命のやり取りをして‥‥‥取り返しのつかない事をしたくなかったんです。それに無駄に命を散らしたってあんまりいい気分でもないですしね」


「だからか、あのような方針を立てたのは」


「まぁ、それもありますけど、あとは単純に骨が折れそうだなと思った面もありますね。正直リーシャさんの作った剣が通らなかった時点でドラゴンの鱗の硬さは並大抵のもんじゃないですし、そうなると私の魔術が通るかも怪しかったですしね」


ばさり、ばさりと黒い翼を折り曲げ高度を維持しながら飛び続けているリーシャは一つ思い至る


「だからか、大きく外したのは」


「はっへ?‥‥‥あー…そうですね、そういう理由です」


理由なんて幾らでもあった、できるならばドラゴンを殺したくなかった、無用な殺生をしたくなかった、だからこそ外した、それにリーシャとドラゴンの実力は拮抗していた、本気を出していればどちらかが…いや確実にどちらも生涯消えない傷、またはもう取り返しのつかない出来事へと変貌する可能性があった


それに相手はドラゴンだ、一定以上、寧ろ人間よりも知能が高い可能性がある存在だ、殺すまで行かずとも実力を見せつければ手を引いてくれるのではないかという思考があった


だからこそのドラゴンを殺さないっていう行動方針が取れた


それにしてもとルディアはため息交じりに思考を中断し言葉を放つ


「そ・れ・に・し・て・も、リーシャさん?私言いましたよね?ドラゴンの行動を回避するだけで良いって?な~んで一番危ない選択しを取ったんですか」


「あ~あ~‥‥‥ふっ、かっこよかっただろう?」


「ぶん殴りますよ」


「‥‥プライドが許さなかったんだよ、私だって避けるだけの出番なんてやだよ」


「‥‥‥‥‥‥そうですか、まぁ分からなくもないですが、はぁ本当に心配したんですからね」


「はっはっは、上手く行ってるからいいだろ?」


「はいはい」


ルディアの言葉は諦め半分、笑み半分の声で会話を締めた


夕日が傾き始めているがまだ落ちる時間ではない、いつかは落ちてしまうだろうが彼女たちが帰るまでは保ってくれるだろう


ルディア達の目には綺麗に照らされた綺麗な真っ赤な夕日と夜に変身しようとする宇宙の青色、地面を見れば荒廃し廃墟となり苔がついた建物群とそれを殺すかのように木々の緑色の土地が広がっていた


赤色と青色、緑に灰色、そのどれもが自分の色をこれでもかと主張していた


それはきっと、きっと綺麗に映っていただろう


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