狂った少女は夜に照らされ静かな笑みを浮かべる12
「おやおや~最近良く出会いますね~ルディアさん?」
そんな掛け声をかけてきたのは頭よりも一回りほど大きい茶色い帽子を被っているツバメだった
「こんな真昼間からぶらぶらして暇なんですか?というか二ーt」
「ニートじゃないですよ!ちゃんと仕事をしてますよ!!」
「ふふ、嘘ですよ、ツバメさんもあれですか?殺人未遂鬼ですか?…もてもてですね」
「えぇ、今、この吸血鬼の国でホットな話題ですからね、追わなければ情報屋としての名が廃れちゃいますよ、っと、そちらのお方は?初めましてですよね?こほん、この吸血鬼の国で生業として情報屋をしているツバメです、どうぞ御贔屓に」
「初めまして、一か月前からこの国で滞在している、超絶探偵ダリアです!以後よろしくお願いしますね!」
「おぉおう‥‥よ、よろしくお願いしますね…‥‥ん?」
ツバメはダリアの勢いに引き気味になりながら、微妙な笑顔を浮かべた
「ルディアさん、ルディアさん、今この方は情報屋って言った?」
ルディアの裾をくいくいと引っ張り注意を向けたダリアが耳元で聞いた
「はい、そうですよ、目の前にいるのは情報屋さんのツバメさんです、情報を得るという点だけを見れば腕は確かですよ」
ルディアの話を聞いたダリアは大いに目に光を宿し、興奮気味で言葉を繋げる
「情報屋!今欲しい人手じゃない!ツバメさんちょっと情報交換しない?」
とんとんとんと華麗なステップを踏みながら彼女はツバメに近づいていく
「!‥‥えぇ、えぇ!いいですよ、私も貴方に興味がありますから~ちょうどいいですね」
ダリアとツバメは不穏な笑みをお互いに浮かべる、ルディアはそれを苦虫を嚙み潰したような笑顔を浮かべるしかなかった
新しい交友関係が広がるのはいいことだけれども、けれども!け・れ・ど・も!!
あぁこれは・‥‥‥
ルディアはぎんぎらに光っている太陽が存在している青々強い空に顔を向ける
その眩しい世界に苦々しい笑顔とともに瞳を細めて一つの思いを胸に馳せた
そう。
あぁこれは、この流れは‥‥‥今日の一日は護衛で終わりそうですね。くそぅ
と、アルに対しての不満を抱えながら青い空を仰いでいた
昼間であるのにも関わらず一切日が当たらない部屋で一人の少女は黙々と作業をする
以前来た時には書物やら機材やらで足の踏み場すらなかった汚い部屋が彼女が来てからか幾分かましに整理されている
そんな部屋に一人の黒髪の少女が自由気ままに
「あんた一体何してるのさ、ていうかルディアちゃんは?」
いつの間にかアルの自室に入ってきていたルドが机の前に座っているアルに向かって話しかけてきていた
「あ~?ルディアは今は仕事中だな、というか勝手に入ってくるんじゃね~よ」
「ま、いいじゃない、そんなことはどうでも」
「そんなことでは・‥‥はぁ、へいへい、ルドさんの言うとおりに」
「で?質問の答えは?」
「ん~、以前に作った人探しの機の改良中」
ルドに視線を向けずにアルは手元に持っている図面と睨め会いながら話を続ける
机の上には作業途中の機材やら、他には幾つもの書類が散らばっており、その一つ一つに奇妙な図形やらそれに対しての備考欄、はたまた文字だけで形成された書類などなど、一枚一枚余分に文字を書くスペースがないほどに何かしらが書かれていた書類が机を全て埋めるほどに幾つも乱雑に散らばっている
机の隅にはランプがその仄かな光で自身の命を燃やしながらその乱雑に散らばっている書類やら、機材やら、アルの手元を照らしている
「人探し機?何のた・‥‥あ~あんた遠回りな解決の仕方をするわねぇ、何?今度はツンデレ属性でもつけたの?」
「うるせぇ!いいだろ別に!というかなんだよ、ツンデレ属性って!私はそんなもんはつけた覚えはない!」
「だってそうでしょ?あんただったら空を飛んだり、魔法を使ったほうが早いでしょう?」
「あんな~それでやりすぎて痛すぎるしっぺ返し食らったの覚えてないのかよ」
「あったわねそんなこと、あんときのあんたは飢えた狼みたいなぎらぎらした目をしてたわね」
けらけらと笑いながらルドはアルの頭をポンポンと叩く
アルの視線は相変わらずに資料に向いているがその見ている顔はサクランボのようにピンク色に染まっていた
「うるせぇよぉ、もうお前帰れよぉ、進まないからぁ~」
「まぁいいじゃない、どれどれどの辺が困ってるか教えなさいよ」
その言葉を聞いてアルは一つ大きなため息を吐いたのちに見つめていた資料の一つをルドに渡す
その紙にも様々な図形とそれを補足する文字が所狭しと並べられていた
「・‥‥ここなんだが」
「へぇあんた、中々いいもん作るじゃない」
「うるせぇ」
アルのその言葉ににこりと楽しそうにルドは受け取った
暗い世界、ランプが一つだけ灯っている世界で金髪の少女と黒髪の少女は頭を寄せ合い一つの資料とにらめっこを始める、その世界は緩やかな時間が流れていただろう、暖かな空気が流れていただろう
ルドとアルはお互いに言い合いながらも楽しそうに議論を重ねていく、彼女とそのまた彼女はこの時間は嫌いではなかった
「ふむふむふむ、いい感じに情報を交換できましたね」
ツバメはほくほくと笑顔でにこやかな顔を見せつける
「私のほうはあまり有益な情報を出せなかったけどいいの?ツバメさん?」
「いいんですよ、私は私が知りたい情報を得られたんですから、えぇえぇふふふ、本当に良かったですよ、特にあなたのことが知れて私はほくほくですよ」
「ま、ツバメさんが良いっていうのであればいっか、また今度情報交換しましょう?」
「えぇ良いですよ!良いですね!!そうですね‥‥今度会う時は私の事務所で、またそこで有益な情報交換をしましょ?」
お互いの会話が終わり、暫しばかりの静寂が世界を覆った、その世界で最も退屈にしており、なおかつ暇すぎて魔術を用いて起用に石畳の地面に向けてお絵描きを始めていたルディアが口を開いた
「えっと、終わりましたか?長かったですね」
「…居たんですか?ルディアさん」
ツバメは冗談交じりの口調で冗談を口にする
「土に埋めますよ?」
「いっひ!おぉ怖いですね、ふふ、じゃあまぁ見るものや、やることをやり終えたのでお暇しますね、ではでは」
「ツバメさん、以後よろしくね~」
はいはい~と悠長に、いつも通りにツバメの性格を表すかのような返事をしたのちにツバメは風の魔術を展開し飛び立とうと姿勢を変えた瞬間に何かをふと思い出したようでその姿勢を一時的に止める
「おっと、そういえば」
そしてツバメはくるりとダリアに向き直り、ダリアに向かって言葉をかける
「ようこそ、吸血鬼の国へ。…きっと貴方はこの国が気に入るでしょう、だからこそ、私たちは十二分に貴方の入国を歓迎しますよ、”探偵”さん」
その言葉を紡ぎだしたツバメの目は鋭かった、全てを見透かし、全ての事象において思考を蔓延らせている、そんな雰囲気を相手に受け取らせるほどに彼女の言葉は異様な雰囲気を持ち合わせていた
だが声とは裏腹に彼女の顔には小さな笑みが浮かんでいた
・‥‥‥心の底から侮ることができない、だからこそ、腕は確かと言えてしまうんですよね
「‥‥‥ありがとう、ツバメさん」
「い~え‥‥‥ではでは~ルディアさん、ダリアさん、また今度」
先ほどの雰囲気はどこへやら、ツバメはいつも通りの明るくでも少しだけ気の抜けた声だった
そして少しだけ日が傾き始めている空に向かうために、彼女は風の魔術を使用し、鳥のように静かに余波というものを一切に見せることをなく華麗に飛び、ルディアたちの視界から完全に消え去った
ポケモンsvマジで楽しそうですね、いつか絶対買うような気がします




