狂った少女は夜に照らされ静かな笑みを浮かべる5
アルとルディア、リーシャはソフィア通りをゆっくりと歩いていた
「で?リーシャはなんでルディアに勝負なんて挑んだんだ?」
「なんで‥か、っふ、我の強さを確かめたかった、我の強さがどの程度、ルディアを喰らうことができるか確かめたかっただけだ」
片目を手で覆いかぶせポーズまで取りながらリーシャは口を開いた
「‥‥うそこけ~お前そんな戦闘狂じゃないだろ、その思考を持つのはお前の所の頭の悪いメイドぐらいじゃないか?…もっと他に理由あるだろ?」
「っは、それぐらい気になるのであれば考えてみたらどうだ?魔道具店店主よ」
人混みの中でも口を開きながらのんびりと歩いていた
「それよりも!!どーしてついてきてるんですか!!」
「どーしてとは?」
リーシャが小首を傾げる
「どーして!?どーして!?っていう言葉が貴方の口から出るのが驚きですね!!なんでいきなり命を狙われた人物と仲睦まじくショッピングをしないといけないんですか」
「楽しいからに決まってるからだろ?」
「もーわけが分からない!」
「まぁまぁ」
「はぁ、本当に何なんですか?アルさん?この中二病ちみっこは」
「ちみっこ言うほど小さくないだろ?お前とあまり変わらないぞ」
「ちょい引き篭もり気味なルディアの妹だよ」
「っふ、そんなに我の事が気になるのか、ならばブロマイドを貴様にやろうではないか、一族に代々受け継がせるがよい」
「いりませんよ!!リーシャさんが描かれた紙切れなんぞ誰が欲しいんですか!」
「ケツ拭く紙切れぐらいにはなるんじゃないか?」
「なりませんよ、ちゃんとした紙で拭きますよ」
「そこまで言わなくても…」
リーシャの瞳が潤んでいく
「あーあ、ルディアが泣かせた」
けらけらとアルは笑い続ける
「あーあ、泣かないでー‥‥なんであんなトチ狂った行動できるのに涙もろいんですか、あーもぉぽろぽろと、泣かないでくださいよ」
ルディアはぽろぽろと涙が出ているリーシャにハンカチを優しくあて、拭いてあげた
その間もアルはけらけらと笑っていた
ぶらりぶらぶらとルディアとアル、リーシャでわちゃわちゃ歩いている中で空から一人の少女が降り立つ
それは見知った顔だった、少しだけ大きな茶色の帽子を被ってい、黒い髪が見え、腰には鳥の形が装飾された剣を携えた少女がそこにいた
「あれー?皆さん?どうしたんですか?ニートですか?」
「最初から良く飛ばすな、焼き鳥」
「あ~おはようございます、ツバメさん、元気そうでいいですね」
「っふ、こんばんは?か、それともはたまたおはよう?か、我らは同じものに属する者…我らこそは運命に繋がれた仲であるから挨拶なぞ不要だったか」
「リーシャさんが訳わからないのは通常運転ですけど、ルディアさんはどうしたんですか?なんかやつれていますが…」
「いや、まぁ、はい、はぁーーー」
「なんかあったんですね、まぁちょいと気になりますが大変そうなので聞かないでおきますよ」
「ありがとうございます、私にも説明できないので…はぁーー」
「ていうか焼き鳥こそどうしたんだ?最近忙しそうじゃねーか?」
「その呼び方を定着させないでください…そうですね、最近はちょいとある事件を追ってまして、それであっちへ行ったり、こっちで行ったりとしているうちに時間が溶けまして…」
「あーあれか?殺人未遂鬼みたいなやつか?」
「あれ?知ってるんですか?珍しい、俗世に興味がないアルさんが知ってるなんて」
「お前、私のことなんだと思ってるんだよ」
「ニート?」
「んだとこら、というかお前もあんまり変わんねーだろ」
「酷いことを言いますね~ちゃんとした、仕事ですよ」
「っは」
「あー!?鼻で笑いましたね!?鼻で!?」
「いくらでも笑ってやるよ、ほれほれ~アルさんの笑いだぞ~お金払ってくれてもいいんだぜ」
「アイドルでもないんですから、一銭にもなりませんよ、っとこんなくだらない所で油売ってても仕方ないですね、では」
「待って、ツバメさん」
ルディアが悲壮な声でツバメの事を呼び止めた、そうそれはひどくやつれた声であった、ルディアの顔を見てもそれは悲壮な顔に満ち溢れていた
いや、それは恋する乙女の顔だったのかもしれない
それよりも似合う言葉がある、それは告白という言葉がお似合いだったのかもしれない
そのような甘いような、はたまた不安そうな雰囲気をルディアは醸し出していた
「えっと、どうしたんですか?…何でしょうか、雰囲気とは反して何か嫌な予感がするんですか」
「お願いですから行かないでください、私には今ツバメさんが必要なんです!!」
がしりとルディアはツバメの手を握る、暑苦しく、そして恋焦がれる乙女のように
「えぇ、いきなりどうしたんですか、ルディアさん、ちょっと照れるんですが」
「私にはツバメさんが居ないと生きていけないんです!」
「へぇ!?本当にどうしちゃったんですか!?」
「どうしたですか……そうですね…今日という厄日を経て、私にはツバメさんがいないとダメなんだなと思いましたよ、えぇ、えぇ本当に、このメンバーを見てください、ツバメさん…何か思う事ありませんか?」
「えぇっと?うーんと…珍しい人を加えてるなーーぐらいですかね」
「ツバメさん!!それでもあなたは情報屋なんですか!!貴方の目は節穴なんですか!!」
「えぇ…そこまで言われますか…で?ルディアさんは伝えたいことは一体何なんですか?」
「良いですかツバメさん、この二人をよく見てください…そうなんですよ、アルさん、リーシャさんは圧倒的なボケなんです、アルさんは私がいるところではツッコミをしないんです、そう!そうなんです!!今この場に必要な人材なのはツバメさん!!貴方なんです、常識あって、どちらかというとツッコミって‥‥あ!?待って!!」
ルディアの言葉を最後まで聞くことなくツバメは自身の能力を最大限使い誰も追いつくことができない速度で大空へと逃げ出していた
それを追うようにルディアの声が響いた
「ツバメさんがいないと突っ込み続けて過労死する未来しか見えないんですよ!!ツバメさん!行かないで!!私もボケがやりたいんです!!」
ルディアは手を伸ばしながら救世主に訴えるが、ルディアの声は、その悲惨すぎる声は空中へと消えていった




