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[主人公たち!]  作者: 狼の野郎
アルさんはいつも通りに失敗する
54/109

世界は無数にあるようです3

アルはルディアをグイっと引っ張り、自身が放つ魔法の範囲内に潜り込ませる


「アイギス!」


アルはルディアを抱えながら絶対的な防御力を持つ魔法を放つ


魔法は正常に動作をし、ルディアの前に綺麗な盾が出現しケルベロスから放たれた炎の光線を見事に防ぎきる


ただし盾が防いでいる範囲だけだ


「あぁ!!アルさん!私のローブが!!私のローブが!!」


盾からはみ出たローブの先っぽが炎の光線によって無惨にも焼かれ、ルディアはあたふたとしていた


「魔術あるだろ!魔術!」


「ウォーター!ウォーター!ウォーター!うぅ、お気に入りなのに………」


「ま、また買いに行こうな」


「同じものあるといいですね………あって欲しいなぁ」


部屋の至る所で炎が燃えていた、それは種火も何にも関わらずにぱちぱちと小さい物や大きい物がゆらりゆらりと燃え盛っていた、その様子を見るだけでケルベロスが放った炎の威力が窺い知れる


だがそれでもアルとルディアを殺しきれなかったことでケルベロスは新たな攻撃姿勢へと移る


「garagagagaaaaaaaaaaaaa!!」


「もぉーうるさいですね」


「っと、また来るな」


先に放った、炎の光線を出した顔とは別の顔が動き出す


その犬の顔が大きく口を開け、その口の奥に、眩い黄色に近い色を溜め込み始め、そしてそれは大きく膨らみ、口の中のバケツがいっぱいになった瞬間にケルベロスの攻撃が始まった


それは眩い電撃の光線だった、落雷のように飛んでくる光線は途切れることなくアイギスに命中する


その光線は空気に触れる度にバリバリと轟音を鳴り響いていた


アイギスはそれでも一切ヒビ入ることなく、全てを弾き返す


「あーアルさん?あの時の赤い剣は出せないんですか?」


「あー?エニュプニオンのか?」


「そうです、そうです、あれです」


「あれかぁ、あれなぁ…あんまし使いたくないんだよなぁ」


「何か理由でも?」


「デメリットが大きすぎるんだよ‥‥あれは聖剣つってな、まぁ人間が作ることができない物を半ば強引に作ってるからな、失敗するとシャレにならないし、この世界の聖剣っていうものがあんまり良くないものだからな、火力はでるけど…」


ケルベロスの電流によるレーザービームを片手で悠々と止めながらアルは説明する


その説明をルディアも慌てる様子もなくただただゆっくりと聞いていた


説明を終えた数秒後にケルベロスから放たれていた電撃のレーザービームが途切れる


だがケルベロスの頭は三つ、電撃のレーザービームが途切れる数秒前から攻撃するために口の中で今度は水色の光を貯め始め、途切れた瞬間と同時に今度は白色に近い色の光線が飛んでくる


それは全てが凍り付くような光線っだった、触れた者、近づいた者を容赦なく食い散らかし、容赦なく凍り付かせる光線だった


ある一定の周囲は凍り、ある一定の周囲は炎でめらめらと燃え、ある一定の周囲の空気は電流によってぴりぴりとひりついていた


だがそれでもルディアとアルは動じない


「どうするんですか?」


「ん~どうにもこうにも…ケルベロスを倒すのは簡単なんだけどな、ケルベロスほどの巨体を倒すとなるとほら魔法や魔術にそれなりの出力が必要になってくるだろ?でだ出力ミスってこの空間を破壊したらさ、その影響で元の空間に戻った際に家が半壊なんてことになりかねないからなぁ、知らんけど」


「知らないんですか…そうですね…だったら私がやりますよ、アルさん、私を飛ばすことってできますか?できるのであればケルベロスの頭上でお願いします」


「何かあるのか?」


「あるからお願いしてるんですよ、行けますか?」


「任せっとけ!この空間自体が広いからな、ミスることもないだろうし!」


「分かりました、だったらもう少しだけ盾で攻撃防いでください」


「あいよ、ま、準備できたら言ってくれ」


アルとルディアが会話を続けている中でも攻撃は一切止まらなかった、氷のビームが終れば次は炎のビームが、それが終れば雷のビームが、と間髪入れずに攻撃がくり出され続ける


そのために空間は攻撃を重ねるごとに禍々しく変貌していく、周囲は燃え盛り、周囲は凍り付き、周囲は電気を帯びバリバリと音を立てている


ルディアは静かに準備を始める


最高の一振りを作成するために、最強の一振りを創り出すために


腰横に収納している短剣を取り出し、その短剣で手を軽く傷つけ、少量の血液を手から床へと垂れ落とす


そしてルディアは急ぐ必要がないためにゆっくりと詠唱を始める


詠唱を一節、二節、三節と重ねていく、言葉を重ねるごとに魔力は踊る、自分が使われる喜びによって魔力が空中で踊りだす、一節、一節重ねるごとに地面に垂れ落ちた血液は形を創り出していく


血液は徐々に徐々に徐々にだが麗しい形へと変貌していく


そしてルディアは最後の一節を唱える


「ブラッド・ソード」


ルディアは静かに詠唱を終え、ルディアの目の前には血液で形創った剣が一振り現れる


その剣は赤く氷のように透き通っており、全てを斬り伏せられるような鋭さを持ち合わせていた、それは魔道具を壊そうとし、お座なりに作り投擲した一本ではない、自身の血液を使い、詠唱を一節一節唱え、魔力の流れをきちんと把握し作り上げた最高の一振りだ


その剣をルディアはゆっくりと手に取る


詠唱を続けている間もケルベロスの攻撃は止まることはなく、アルはそれを暇そうにしながらそれを防ぎ切っていた


「さてと、出来ましたよ」


アルはルディアに向けて手を差し伸べる、ルディアは躊躇わずにその手を取った


「んじゃ、行くか」


アルはにっこりと笑い、そしていつも通りに見慣れた魔法を唱える


「空間の連続性の否定」


一言アルが魔法を唱えると、その場から手を繋いだ二人は消え去る


消え去るのと同時にケルベロスの頭上に二人は現れ、ケルベロスに向かって自由落下を始める


すぐさまアルはもう一度、空間の連続性の否定を使用し、自由落下から離脱した


ルディアはいつも通りの魔術を自由落下しながらケルベロスに向けて空中で使用する


「白き世界!!」


ルディアの左手から魔術が放たれる、手から瞬時に伸びた魔術は辺り一帯に霜をまき散らしながらケルベロスを一瞬で凍り付かせる


ケルベロスは氷の彫像と化した、だが氷の彫像となったケルベロスはそれでも小刻みに動きがあった


だがルディアは自由落下を止めずに、むしろその勢いを利用し、勢いを一切殺すことなく一直線にケルベロスに向けて落ちる


「やぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


気合を乗せ、速度を乗せ、声を乗せ、一切動けないケルベロスの背中へ剣を降り下ろした


その剣は見事に動かないケルベロスへと深く深く突き刺さった、だがその瞬間にケルベロスの表面を凍らせていた氷が全て地面へと落ちた


「kuraxaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!」


同時に鼓膜が悲鳴を上げるほどの咆哮がケルベロスの口から放たれた


それは痛みによるものだろうか、はたまた攻撃を加えられた怒りによる叫びだったかは分からない、だがそれは確かに凶悪な叫び声だった


ケルベロスはすぐさま動き出す、刺さっている赤い剣を抜くために、それを刺した人を地面へと振り落とし噛み殺そうとするために大きく大きく動き続け、ルディアは振り落とされないように必死になって赤い剣に片手でしがみつく


「うぅ」


ルディアの口から声が漏れ、力を入れるためにぎりりと歯を食いしばる、ルディアはケルベロスの動きによって右へ左へと揺さぶられ続ける、振り子のようにブンブンと身体が宙に浮く


振り落とされたら面倒なことになる、こんなくだらない事で致命傷なんて食らいたくない!


だがそれでも一人の少女は一切弱音を見せずに、一人の少女は一人の魔法使いを信じ続づけ手を空中へと手を広げる


「アルさん!!」


そして彼女は魔法使いの名を呼ぶ、信じ続けている魔法使いの名を呼んだ


「おーらい、任された」


その声は楽しそうな声だった、これから何が起きるのか楽しみになっている声だった


瞬時にアルは空間の連続性の否定を使い、ルディアの横へと現れ、大きく揺さぶられている中でもアルとルディアは手を繋いだ


そしてアルはもう一度、空間の連続性の否定を使用し、アルとルディアは幽霊のように、音を発さずに、ケルベロスの背中から消える


そしてほぼ同時刻に地面へと二人は足をつけた


「先までいた場所から一瞬で移動するって、相変わらずになれませんね」


「ははは、楽しいだろ?」


「楽しいかって聞かれると…まぁ楽しいですね…‥…それじゃあアルさん最後まで守ってくださいね」


にっこりとルディアはアルに笑いかけた


「あいあい」


ケルベロスはルディアの笑顔とは対になる様に凶悪過ぎる顔を浮かべ、その巨体には見合わない素早い速度でルディアとアルに突っ込む


それを見越してアルはルディアを守る様に大きく大きく一歩前に出る


「犬っころは私と遊ぼうな、室内戦闘自体が苦手だけどお前にやられるほど柔くないぜ」

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