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[主人公たち!]  作者: 狼の野郎
アルさんはいつも通りに失敗する
52/109

世界は無数にあるようです1

朝目覚めると、そこはいつもの天井だった、いつも通りのアルさんの家だった


窓の外を見るといつも通りに、いつもの風景、人々が太陽の下を歩き、目的地に向かって様々な方向へと歩いていく


「おはようございます、いい朝ですね」


誰に言うわけでもなく、ただ世界に語り掛けるように朝の呪文を奏でる


いつも通りに朝の支度をしようとベットから降り、顔を洗うために扉に手を掛ける


扉はいつも通りに子気味良い音を立てながら廊下との空間を繋げようとするが‥‥


目の前の空間はいつも通りでは無かった


壁は生き物のようにどくん、どくんと脈動し続け、それに加え家の大きさを無視しているほどの縦、横が巨大になっている廊下だった


「はぁーーーーーー」


私は一つため息をつきながら扉を閉め、もう一度、扉をゆっくりと開ける


夢だったらどれだけ良かったでしょう


扉を閉めて、開けても目の前の光景は一切変わらずに壁は脈動し続け、廊下の長さは宮廷を思い描かせるほどの長さを持っていた


私は顔を洗いに行くことを一旦諦め、寝間着から普段着へと着替え、ある程度戦闘がおこることも予想し、戦闘時に使っている杖も持参していく


この家の主を少しばかり恨みながら…



どくん、どくんと脈打つ壁を視界に入れながら、生理的に受け付けない空間に立ちながら、この家の主を呼び出す


「アルさーーーん!!」


この現象を起こした張本人、元凶に聞こえるように声を轟かせる


「アーーーーーールーーーーーさーーん!」


もう一度響かせる


なぜ元凶がアルさんだと決めつけているかというと以前にもこのようなことがあったからだ


以前にはこの家が魔獣に溢れかえったことがあった、他には朝起きたら原っぱにいたことがあった…だだっ広い原っぱに一人ぽつんといた


その原因はどれもこれも、アルさんが開発した魔道具だった


はぁ…もう慣れた


「っと、その声はルディアか?」


何処からともなくアルの声が聞こえてくる、、声は反響を重ね、声の位置が何処から聞こえてくるのかが分からない


「アーールーーさーーん??」


「えっと、ほら、あれだ、まぁなんだ、楽しんでいこうぜ?」


「アーールーーさーーん」


「すまん、本当にすみません」


「またですか」


「すいません、はい、私の魔道具ですね」


「で、今回も破壊すればいいですか?」


前回も、前々回も開発した魔道具を破壊することで騒動は収まりを見せた


「そうですね、はい、そうです」


「で、その魔道具は何処にあるか分かりますか?」


「えっとですね、分からないかな、魔道具が暴走したと思った瞬間にはすぐに何処かに魔道具が飛んだからな、ついでに私も何処にいるかは分からないな、助けて」


「んーーーーーこの」


「ほんっとうにすみません」


「いえ、まぁいつもの事なので…いいんですが…これってどーゆう風に声を私に届けているんですか?」


「あーそうだな、魔道具の影響なのか声自体が空間を超越しているというか跳躍しているというか…まぁあれだ、私たちは距離的には離れているが声は絶対に届くような空間になっているらしいぞ」


「はぁ~便利な空間のような騒がしい空間のような…」


「面白い空間だよな」


「めんどくさい空間ですね」


「はい、そうです、ごもっともです」


どくん、どくんと永遠と壁は唸り続けている、その鼓動を縫うように一つの微かな音が聞こえてきた


「それでね、ルディアさん、なるべく早く合流したいんだけど…魔道具の影響なのかは知らない…知りたくもないんだけど、ね」


ばさり、ばさりと廊下の奥から大きな大きな翼が空気を叩きつける音が聞こえてきた


あぁ嫌だな、見なくないな


きっと、きっと……はぁーー


「はぁーーー」


それは今から見る物へのため息か、これから起きる事へのため息だったか、はたまたそのどちらに対してものため息だったか、大きなため息がルディアの口から出る


ばさりとローブの音を鳴らしながら音がした方向を振り向く、目の前には初めて見る怪物がいた


それは男性の大人以上の身長を優に超え、廊下を埋め尽くさんばかりの大きさを持っていた


ばさり、ばさりと翼の音はその怪物から聞こえ、それはソフィアの翼と酷似しているようにも感じられる、つまるところ蝙蝠の羽に似ているように感じる


全身には羽毛の代わりに鱗が生えていた


怪物の特徴はまだある、それは長い首だった、長く曲がりくねった首から当然のように頭は生えているが、頭に繋がる頭部は馬に似た形をしていた


その怪物は長い舌を見せ、ルディアの事を嘗め回すように瞳を輝かせる


「いっ!」


嫌悪感からか、はたまたルディアの口からは悲鳴のような声が漏れる


「別次元からの魔物が入り込んでいるから逃げるか、撃退してね、ごーめんね」


「後で一発殴らせてください」


ルディアはすぐさま踵を返し走り出した、早くアルさんと合流するために…





ルディアは走り続けた、走って、走って走り続けたが、廊下の終点は未だに見えず、それに加えアルとの合流は未だにできていなかった


走っているのにもしっかりと訳がある


最初に出会った大きな怪鳥が未だにしつこく追っかけてきていた


魔力は温存しときたいんですよね


「あぁそうそう、大きな鳥には捕まるなよ?やられたことないから分からないが宇宙空間にある玉座に連れてかれるからな」


「それを!早く!言ってください!!」


なんでそんな重要そうなことを言わないんですか!


走り続けるのを止めてくるりと真後ろを向く、そしてすぐさま魔力を練り上げる


未だに、魔力を使う…戦闘を行う行為の前は少しだけ身体が震える、やっぱり殺された時の記憶は身体に絡みついてくる、痛い思い出はやっぱり、ずっと覚悟を決めていても身体は小刻みに震えてしまう


だけどそれを押しのけて目の前の戦闘に全てを向ける


「アイス・ソード!」


ルディアの突き出した右腕が光り輝き、そのすぐ後に腕を中心として綺麗な透明な氷の剣が幾つも出現し、怪鳥を突き刺しに動きだす


だが怪鳥も一筋縄ではいかない、その攻撃を大きな身体でも一撃も受けずに全てを躱し怪鳥の後ろに存在している壁に全ての氷の剣が突き刺さる


「んな!」


こいつ!図体の割に案外避けますね!


「kyaxaaaaaaaaaaaaaa」


躱した体制から聞きたくもない、耳が拒否するような声を放ちながら、怪鳥がルディアに突っ込み翼で攻撃してくる体制を見せた


それをルディアは先ほど自身で作り、一降りだけ手に持っていた透き通るほどの氷の剣で向かい打つ


斬り伏せる技術はないが防ぐぐらいの技術は持っている


ルディアの氷の剣と怪鳥の翼が凄まじい勢いでぶつかるが華麗に威力を殺し、怪鳥の攻撃を見事に防ぎきり、鍔迫り合いの形に持っていく


「kayaxxxxxxx!!」


短いながらも鏡のような、すりガラスをひっかくような声で叫ばれる


「うっるさいですね!でもこれで必中ですね」


にやりとルディアは笑う


そして彼女の右手の甲が彼女の思考に応じるように光り輝き始め、空中から幾つもの鎖が怪鳥を絡めとり、完全に動きを封じ込める


「raaxxxxxxxxxxxxx!?」


「喰らってください!!白き世界!!」


普段通りに、いつも通りに、思い出の魔術を使う


ぴしりとルディアの魔術で世界が一瞬で止まる


唱えた瞬間にルディアの魔術は世界を変える、世界という名のアルの家が真っ白に染まる、壁は白く染まり、怪鳥も白く染まった、床も白く染まる


ルディアはふぅーー、と一つ息を吐く


その息は周りの世界に影響されて白かった、真っ白の息だった


「寒いですね」


ルディアは一つ言葉を投げ捨てた


怪鳥は動きを封じ込められ、綺麗な綺麗な氷の彫刻を一つ創り出していた


「その鳥の名前、シャンタク鳥らしいぞ」


「はぁ、どうでもいいですよ」


ルディアはため息とともにまた歩き出した

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