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[主人公たち!]  作者: 狼の野郎
前日譚 夢を見て空を見る少女 
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夢を見て空を見る少女39


何時間経っただろうか?何時間ルディアは泣いていただろうか?


ただ分かることは私の胸はルディアの涙でぐしょぐしょになっている


まぁいいけどね


時間がどれくらい経ったのか分からない、外の雨の音は一切聞こえてこなかった、いつの間にか雨は止んでいたようだ


ルディアの目は可愛らしく赤く腫れていた


そんなルディアがしゃがれた声で聞いてくる


「どうしてここを選んだんですか」


「ここだったら、説明とか省けるだろう?私がオーローンに会ったこととかね」


「なるほど……いつ会ったんですか?」


「虚数空間でな、少しだけ話をしたんだよ」


「そうですか‥‥‥」


「良い奴だったな、魔術を使うもの同士だからか波長が合うというか話は合いそうだったな」


「そうですね、アルさんとオーローンさんはきっと話が合いますよ」


静かな時間が流れる


アルはゆっくりとルディアの顔を見る、やはり目は少しだけ赤く腫れているが、憑き物が落ちたように顔は明るくなり、瞳には光が戻ってきている


「‥‥‥ありがとうございます」


「気にすんな、私がやりたいと思ったからだよ」


「それでも‥‥ありがとうございます」


「照れるなぁ」


アルは恥ずかしさという感情が溢れ出し、ぽりぽりと頬をかきながらプイっと外を見る


「ふふふ、幾らでも言いますよ、ありがとうございますって」


「照れるからやめぇい」


話を途切れさせるために乱雑に頭を撫でる、お風呂に入った後だったからか髪は非常にサラサラだった


一生触っていたいな


雲は風によって動き、徐々に徐々に日差しが地面へと落ちていく


それに伴い、部屋の室内も光が満ち溢れていく


暗かった室内が、徐々に徐々に色づいて行った


「アルさん、今度、私たちの冒険を聞いてくれますか」


「あぁ聞くよ、ゆっくりと聞いてやるよ」


光は室内を完全に照らした


それはルディアの心を映したのだろうか?それはこれからの未来を暗示したのだろうか?光は灯る、暗かった場所はいずれ明るくなる


ルディアの心の奥底はまだ晴れていないのかも知れない、知人、友人、家族‥‥身近な人と永遠に会えないという深すぎる傷は早々に治るものでもない、だけどその傷を両手に抱えながらでも前に突き進むことは出来る


アルは後ろへと向かっていたルディアに手を指し伸ばして、前へと引っ張った


ルディアは勇者であり、王様であり、主人公である、だからアルのその些細な一手で彼女は前を向くことができた


だからこそ彼女はこの光が当たっている世界で今日も笑うだろう


ルディアは笑顔で言った


「はい、楽しみにしといてくださいね」


アルはポンと了承の意味を込めて頭を一つだけ撫でた


アルとルディア、お互いの顔には笑顔があった




「アルさん、歩いて帰りませんか?」


恥ずかしいのかおずおずとルディアは聞いてくる


「そうだな、ゆっくり帰るか」


断る理由なんてないために笑顔でその申し出を了承する、空間の連続性wの否定を準備していたが、その魔法を破棄し、扉に手を掛ける


同時にルディアが手を握ってくる


「手を握って帰っても良いですか?」


「もう握ってるじゃねーか」


「そうですね、握りたかったから握ってます、」


「そっか」


片手で扉を開けた




吸血鬼の国へのそのそと帰っている途中、ふと完全に頭から抜け落ちていた事を思い出す、お披露目することなくお蔵入りになりそうな魔法の事を


これの開発で一週間ぐらい潰れたことにため息が一つ出てくる、無駄になったていうかもとより必要なかったものに時間を掛けていた、とか考えているとどうにもため息が出てくる


「な~にやってんだかね」


「こんな素敵な帰り道でため息何て‥‥これからの幸せが逃げちゃいますよ」


「そうだな、忘れることにするよ」


「聞いてあげますよ、ため息の理由は?」


「‥‥‥‥‥そうだな」


少しだけ理由を言うか迷った、ルディアのために開発した魔法がお蔵入りになろうとしているから、ちょっと落ち込んでいた‥なんていうダサい理由だから言おうか迷った


ただまぁ私に尊厳とかないし良いか!


「いやね、ルディアよ、これは少しだけ話をだね、一週間ほど戻すんだが‥‥‥‥」


オーローンとソフィアの話を加えながら、作る経緯に至った理由を話し始めた



「・‥‥ってな訳なんだ、まぁだからルディアのための魔法を一つだけ開発してそれがお蔵入りになろうとしています」


「・‥‥オーローンさん…‥‥だからモテないんですよ…………私はあなたたちの方が大事なんですから」


今言うべきじゃなかったな、失敗したか?


「アルさん、それって今私に見せることはできますか?せっかくだから見てみたいです」


「ん?あぁ?別に見せる事は全然できるぞ、それよりも…」


「大丈夫ですよ、いつまでもクヨクヨしているわけにはいきませんから、アルさんが言ったじゃないですか、楽しい思い出を積み重ねて、思い出話を語れないって、だからアルさん」


ルディアはやはり強い、多分だけどソフィアやルドと並ぶほどに強いだろう


メンタルという面において、戦闘という面において


流石は400年前の英雄


「そうだな、だったらこれを最初の楽しい思い出にしてやるよ」


アルは開発していた魔法を唱え始める


「生命よ、地面に咲きほこれ、生命よ、美しい顔で咲きほこれ、生命よ、我が声に応えたたまえ、この世界の王が私である、この世界の頂点が私である、私はそなたたち命ずる、咲きほこれ、咲きほこれ、色を統一するな、全ては貴様らの個性で表せ、貴様らの個性は何色か、私はその色すべてを許そう、いずれ生まれる花よ、咲きほこれ、死んだ花よ、咲きほこれ、全て均等に!私が!生命を授けてやる!400年前の英雄たちに手向ける私からの贈り物だ!!」


魔法は開花する


一週間かけた魔法は今、正常に魔法は発動する


魔法が発動したと同時にぶわりと一陣の風が吹く、そうすると地面からは赤色、黄色、青色、緑色、白色、黒色、と様々な色、様々な形をした花たちが一斉に、ゆっくりと咲き始める


自身を見て!と言っているように花たちは主張を激しく自身の美しさをアルとルディアの二人に見せつける


顔を動かし、目を動かしてもその光景は途切れない、綺麗な綺麗な花が一面に咲き誇った


その時大きな風が一つアルとルディアの後ろから吹いた


風が吹けば花弁が幻想的に舞うだろう


それは桜吹雪のように、花弁が舞った、空中を踊る様に様々な色、赤色、青色、黄色に、黒色、虹色の花だってあったのかもしれない、その多種多様な花弁が空中を埋め尽くした


それは二人だけしかいない観客に向けた花たちのサービスだった


色鮮やかな雨が辺り一面に広がった


「綺麗…ですね」


ルディアがぽつりと呟く


「これを見せながら、慰めの言葉を掛けるっていう予定だったんだけど‥‥ま、ルディアが強かったからな、いらなくなっちまった」


それに今日は雨が降っていたからな‥この光景は青い空のもとで見せたかった


「心が穏やかな時に見れて良かったですよ」


優しく、ひどく落ち着いた声でルディアは言った


「そっか、それは良かった、魔法が存在する意味があったってもんだ」


「魔法が存在する意味?」


「んん?あぁ口が滑った」


「何なんですか?」


「聞かなかったことにして、忘れて、恥ずかしいから」


「笑いませんよ、教えてください」


「…‥‥‥‥」


「動きませんよ、そして逃しませんよ、教えてくれるまでこの手を放しませんからね」


言いたくないから、このまま言わないで一生手を繋いでてもらおうかな


だめか


「魔法ってさ…‥‥‥‥‥やっぱ言わなきゃだめ?」


「この流れで言わないんだったらそれはそれで、笑い話になりますね」


「はぁかっこ悪いから、それは嫌だな~」


もう一度風が吹く


花たちもそれに合わせて花弁をもう一度空中へと散らす

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