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[主人公たち!]  作者: 狼の野郎
前日譚 夢を見て空を見る少女 
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夢を見て空を見る少女36

吐瀉物をぶちまけた後からまた数日が過ぎ去り、目が覚めてから一週間が経った


以前よりも症状は軽くなった、窓に近づかなければ外を見ることは可能になったが、それでも未だに外には出れないそのため買い出しやら洗濯やらをアルさんに任せている状況だ


「暇ですね…」


ぼぉーと時が過ぎるのを待っている現状だ、今はアルさんに頼んで買い出しに行って貰っている


掃除が終わり、今は手持無沙汰となりアルさんが普段座っている店番用の椅子でくるくると回っている


何も考えることなく、ぐるぐると回っていた


魔道具店だが客はいない、てか来ない


誰も喋ることなく、この空間ではかちりかちりかちりと正確に秒針を刻み続けている時計だけが音を鳴らす、ルディアはは静かにその時間を過ごす


何も考えていないルディアの目から一筋の涙が唐突にぽろりぽろりと流れ始める


椅子の上に座ってゆっくっりとくるり、くるりと回っていた、くるり、くるりと奇妙な遊びをしていたルディアの目からただただ唐突に涙がぽろり、ぽろりと流れたのだ


ここ一週間で起きた不調の一つ、等々に涙が流れることが多くなった


私が直に感じている感情は泣きたいとは思っていない、だが涙は唐突に流れ始まる


ぐしぐしと乱暴に涙を拭くがそれでも涙は流れ続けた


ルディアは無言で涙を拭き続けた、拭いても拭いても拭いても、永遠と永遠と涙は出続けた




ぼぉーとアルさんが帰ってくるのを待っていると唐突に扉が開くと同時にお客が入ってくるベルが鳴った


「いらっしゃいませ!ごゆっくりどうぞ~」


決まり切った挨拶をする


その声は明るかった、明るさを作ったような明るさの声だった


「あらら?今はルディアさんが店番をやってるんですか?」


「あ、ツバメさん、こんにちわ、アルさんは今買い出しに行ってますよ」


「あ~そうなんですね、ま、今回はルディアさんにお話を伺いたかっただけ何で、アルさんがいるかどうかはあんまり関係ないんですけどね」


「私にですか?」


「そ、貴方にです、お話良いですか?」


「嫌です」


にっこりと拒否をする


「そ、そんなことを言わないでくださいよ!」


「ん~~でも話すことなんてないですよ、ツバメさんが知っている情報以上に情報なんて出てきませんよ」


「いや、虚数空間なる所に行っていたんじゃないんですか?その辺りの話を聞きたいんですけど」


「え?あぁ~え?‥‥‥‥‥‥‥…。」


ルディアは笑顔のまま固まる、ツバメは返事を待っているが一向に帰ってこずに困惑の表情を浮かべる


「えぇっと大丈夫ですか?」


「はぇ…あぁすいません、少しばかり意識飛んでました、ツバメさんが居るからですかね」


「因果関係!因果関係を考えて!!それ絶対に私関係ないじゃないですか」


「で虚数空間に行った話でしたっけ?あはは、そうですね、余り面白い話はありませんよ?」


「良いですよ!良いですよ!未知‥‥良いですねぇ~ぜひ聞かせてください、一語一句全てこの頭に記憶させます」


「・‥‥アルさんが言うには…たまたま虚数空間?という場所に偶然に私が飲まれてしまったらしいですよ、私は余り記憶はないんですがアルさんが救ってくれたそうですね」


顔色を変えずに明るく言葉を紡ぎながら、嘘をつく、嘘なんて付きたくないが私が体験したことは余りにも絵空事過ぎる、そして人に伝えられる話でもない


彼ら彼女らを否定されたとき私は正気を保って居られない


糞野郎がこの世界を牛耳っていたなんて過去、私は絶対に話さない


「‥‥‥‥。・‥‥‥。‥‥‥‥?それだけですか?」


「それだけです、あぁ補足をするのであればあれですね虚数空間と言っても特段目だったものはありませんでしたよ」


息をするように嘘を吐いた


笑顔を崩すことなく、声色を変えることなく、ルディアは嘘をついた


「えぇーーえぇーーでは二日も眠ってた理由は?」


「アルさんが言うには虚数空間とやらに行ってしまった代償らしいですよ…まぁ私にはよく分かりませんが」


嘘をつく


「記憶を失っていた理由は?」


「魔術によって消されていたらしいですよ」


嘘をつく


「夢想教との関係性は?」


「親関連ですね…私とはあまり深い繋がりはありませんね」


嘘をついた


「………‥‥‥‥ふむ、ふむ、ふむ、面白いお話を直接聞けると思ってたんですが…案外ありきたりですね~ちょっとだけ残念です、現実は小説よりも奇なりなんて言いますが…まぁそんな事早々におこりませんね~」


嘘をついても吐き気は催す


表情は明るく繕っているが、表情を隠しても内面はぐちゃぐちゃだ


気持ちが悪いですね…うぅ


「そうですねーあ!だったらアルさんを使って虚数空間に連れて貰ったらどうですか?」


「………‥‥。それはそれで面白い体験ができそうですね」


ツバメは話しながら器用に私の瞳をじっと覗く、その眼は見られていて不快ではない目だった、だがその目は真実を見抜こうとするように、心の奥を見られている気がした


「…‥‥すいません、今の全部嘘です」


「‥‥‥はぇ?言っちゃうんですか?」


嘘を嘘と見抜けるのは凄いですね…


だがルディアは偽るのを止めない、心配を掛けさせないように…自分の平静を少しで保つために、少しでも普段通りにお話を続けられるように


自分が狂気に陥らないように、自身の自身で偽り続ける


だが偽っても吐き気は相変わらずに止まらない


「ツバメさんだから嘘をついたというわけではないです、今回の騒動は私は誰にも言わないと思います」


「・‥‥そうですか、誰にも公表をしない、誰にも言わないとしてもですか?」


「すいません、それでもです」


「そうですか、ふむふむ…ルディアさん、大丈夫ですか?」


「な、なにがですか?何が大丈夫なのか分かりませんが大丈夫ですよ?」


ツバメはルディアに聞こえないように一言呟いた


「ここで嘘をつきますか‥‥」


「ん?何ですか?」


「いえいえ~まぁ分かりました、人が嫌がってるのに根掘り葉掘り聞くのは良くないですよね‥‥ルディアさん今度楽しいことをしましょう!」


「へ?」


「何がルディアさんを困らせているのかは分かりませんが悩み過ぎるのは良くないですよ…ルディアさんは空を飛べましたっけ?」


「と、飛べないですね、霊長類なので‥」


「私も霊長類ですよ!鳥じゃないですからね!!‥‥‥空は綺麗ですよ、青い空を見てると大抵の考え事は吹っ飛びます」


‥‥良かったです


「ありがとうございます‥‥ツバメさん、いつか連れてってくださいね」


「はい!ルディアさんぐらいだったら抱えながら飛べるので一緒に楽しみましょう…すいません、そろそろお暇しますね…」


「あ!せっかく魔道具店に来たんですかr」


「でわでわ!また今度会いましょう!」


あ、逃げた


大急ぎで身支度をし店からツバメが小鳥のように逃げて行った、当然のようにカランカランとツバメの速度に合わせうように扉についているベルが甲高くなった


笑いたいルディアだったが、感情とは裏腹にふっとルディアの表情は暗くなる





「-------っつ」


ルディアはトイレで朝食べた物を胃液と共にぶちまける


胃に入ってるものを全てぶちまけたはずなのにそれでも吐き気は止まらなかった


思い出が私を苦しませる


死んだ、殺され続けた記憶が一生フラッシュバックする


一週間前の出来事が私の身体を蝕み続ける


楽しかった思い出が‥‥もういない人たちの思い出が私を縛り付ける、感情がぐちゃぐちゃになっていた


「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


この家には私しかいない、一人だけならば泣いて良いだろう


トイレでルディアは泣く、ただ一人で誰に聞かれることなく、泣いて、泣いて、泣いて、泣いた


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