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[主人公たち!]  作者: 狼の野郎
前日譚 夢を見て空を見る少女 
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夢を見て空を見る少女35


ルディアはあれから二日ほど目が覚めなかった、だが三日目の朝には既に起きていて私の料理を作っていた、「大丈夫か」と声をかけるが普段といや普段よりも少しだけ明るい様子で「大丈夫ですよ」とルディアは答えた


それから一週間が過ぎ去った


その一週間でルディアは店の中でお客の対応をしたり、箒で室内を掃いたりと普段通りにいつものようにいつもよりも少しだけ明るくルディアは動いていた


明確に異常をきたしていた、ただ一つだけの行動を除いて普段と変わらずに過ごしていた


「本当に大丈夫か?」


「大丈夫ですってアルさん、心配性ですね~」


「そりゃあ心配だよ、あそこまでボロボロになってたんだから」


「うぅ…情けないです…お恥ずかしい所を見せましたね…」


「お恥ずかしいって‥‥あんなやつ一人で挑むもんじゃないぜ、はぁーあんときは久しぶりに骨がおれたな」


「ふふ、本当に助かりました、ありがとうございます、あそうそう今日はこの紙に書いた物を買ってきてくれませんか?」


「あぁ…分かった、ここに書いてあるやつでいいんだな?」


「はい、よろしくお願いします、ちゃんと買ってきてくださいよー前回ちょくちょく買い忘れがあって困ったんですから」


「うぅすまん、買い物してると目が至る所に移ってな…申し訳ない」


「もう、何やってんですか、店はやっとくのでお願いしますね?」


「任された、んじゃ、行ってくるな」


「はーい、行ってらっしゃい」


可愛らしくひらひらとルディアは手を振ってくれている


私は扉に手をかけ外に向かって歩き始める


先まで手を振っていたルディアは外の光景を見ないように踵を返し店の掃除を開始していた


私はそんなルディアを目に入れながら店の扉を閉めた、店の扉は悲しそうにからん、からんとなった


ルディアは目覚めてから一回も外にでない




買い物リストを見ながら国をのんびりと歩く


「てか、あちぃ」


最近になって春が始まったばっかりかと思えば気温はぐんぐんと上がり、油断をすると汗が噴き出るぐらいの熱さがあった


「情けないわねぇ、本当に」


後ろから声が聞こえてきた、振り返らなくても分かる、吸血鬼バカのメイドが話し掛けてきていた


「うるせぇよ、熱いもんは仕方ないだろ…はぁ何か用か?」


いつも通り、汗一つ掻かないで涼しい顔をしたヒイロが話を掛けてくる


「ただ、目に付いたから話し掛けただけよ?」


「だったら、こんにちわ、でいいじゃねえか!なんで皮肉から会話を始めようとするんだよ!」


「隙を見せているあんたが悪い」


「あぁ?」


「それよりもルディアの様子はどう?」


ヒイロはルディアが目覚めてから一度だけ店に来た、その時に言葉を交わしたようだがその時に違和感を感じ取ったんだろう、あまり交流が無かったヒイロでも気づくほどにルディアの内面は無理をしているのだろう


「‥‥‥‥あんまり良くないかもな」


そう、ルディアは表面上は気丈に振舞っているが、振舞い過ぎている気がする


要は空元気ってやつを感じる


だがルディアは一言も弱音を吐かないからどうしたらいいか少し悩んでいる


「早くどうにかしなさいよね、さもないと壊れるわよあの娘」


ヒイロは脅すわけではなく、唯々真実を述べるように言葉を吐いた


「はぁ…どうにかってどうすればいいんだよ」


「どうにかするのが貴方の役目なんじゃない?私がどうのこうのしたって日が浅いから多分効き目ないわよ、多分」


「そうだよなぁ、あいつに頼まれてるし、どうしたもんか」


「あいつって?」


「あーーーんーーー口が滑った、今のは聞かなかったことにしてくれ、ま、どうにかしてみせるよ」


「そ、まぁ頑張りなさい、ルディアが治ったらおいしいお茶でも持っていてあげるわよ」


「おう、分かった、今回はありがとうな」


「私はお礼言われる立場にないわよ、今回の件に関しては私がルディアにお礼を言いたい気分なんだから、それじゃまたね」


ひらひらと手を振りながら人混みに消えていった


「どーすっかなぁ、あれだ困ったときはルドに限るってね」


一人で考えていても仕方がないということでアルは買い物を再開した




「ルーーーードーーーー」


国から少し外れた森に足を運んできた、この森にはある一人の少女は住んでいた


森の中に景観を損なわないようなデザインの家がぽつんと一つ建っている


その家にアルは足を向け、扉の前で大声で彼女の名前を呼ぶ


「うっるさいわね、あっさぱらから何よ」


木製の扉からルドがひょっこりと顔を出す


「朝じゃない、もうそろ昼だよ」


「‥‥‥‥‥‥うるさい」


バツが悪そうにルドは一言呟いた


「中に入れてもらってもいいか?」


「はぁ一体何なんのよ、ほら、おいしい物とかはあんまりないわよ」


「んにゃ、そこまで長居する気はないよ、ただ話に乗ってほしくてな」


「そう、まいいわ、上がりなさい」


「ほいほい、お邪魔するぜー」


木製の扉はゆっくりと閉まる




時間は一週間前に戻る


目が覚めた時、私はこの一か月の中で見慣れた天井が目に入ってくる、目に入ってきた情報だけでここはアルさんの家だということに気付く


「つぅあれから…どうなった?」


痛む頭を押さえながら記憶を辿る


最後の記憶はエニュプニオンが消滅したところで記憶が途切れている


「終わったんですね…」


ベットで静かにルディアは丸くなり、胸に手をゆっくりと当てた、手からは血液がとくんとくんと流れている感覚が伝わってくる


確かる様に、ゆっくりとゆっくりと手を胸に当て続けた


死というものを何回も体験し、生と死の境界線が少しばかり曖昧になっている気がする


だからこそ胸に手を当てて生というものを感じていた


400年前の騒動は終わりを迎えたはずだ


私の人生を振り返ってみると空っぽだった、私の人生にはずっと夢想教が付いて回ってきた、それが完全になくなったとなると私には何が残るのだろうか


これから私は何をすればいい?


これから私はどのように生きていけばいい?


これから私は…‥‥


まぁうじうじ考えても仕方ないですね、朝ごはんでも作りましょうか






それからルディアが地震の異変に気付いたのはすぐ後だった


私は外の景色を一回も見ていなかった、一度とたりとも意識をしなかった


今日の天気は?今日の買い出しは?など外に纏わることを無意識化で避けてしまっていた


「どうして?」


分からなかった、どうして自分がそのような行動を取っていたのかが謎だった


何も考えずにルディアはゆっくりと窓の外を見た


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


そこにはいつも通りの光景が映し出されていた、何も可笑しいことはないただただ平和の日常が吸血鬼の国が窓に映っていた


だがルディアは叫びながら膝から崩れ落ちた


鼓動が早くなった、目は大きく開かれる、胃の中に存在した朝食が口から出そうになる


とっさに口を押える


何が起きた?


バクバクバクバクと心臓が高鳴る、血液は沸騰する、お腹はきりきりと痛み、吐き気が催す


確かめるように今度はふらふらと立ち上がり扉へと歩いていく


一歩、二歩、三歩と歩を進めていく


だが歩を進める度に、扉に近づくたびにかたかたと身体が震え始める、足ががたがたと震える、ルディアはそれを無視し、扉に手を掛ける


そこで限界がきた


今まで胃と喉を往復していて、限界まで止めていたものが口から溢れ出た


「…‥‥‥‥っう」


胃に存在していたものが口から飛び出て、朝食に食べた固形物と胃液がびちゃりびちゃりと床を汚した


ここまで身体に以上をきたしているのにも関わらず、感情は一切動かなかった、感情は何も感なかった、死と生の境界線が分からなくなり、外の世界を見れなくなり、感情は壊れかけ、未来のイメージすら湧かなくなった


「………‥‥‥‥‥‥‥‥」


ルディアはじっと自身がぶちまけた吐瀉物をじーーっと眺めていた



戦闘が終わりほのぼのとし始めましたね

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