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[主人公たち!]  作者: 狼の野郎
前日譚 夢を見て空を見る少女 
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夢を見て空を見る少女30

ルディアは眺めている事しかできなかった


見たことが無いほどに悍ましく、空を突き破るほどの巨大な化け物が出たと思ったら、アルさんは私をレーザーが守った時と同様に盾を出現させ、化け物の拳を全て防ぎ切り、聞いたことが無く、魔力の動きも見たことが無い詠唱を始めたと思ったら


触れるのも憚られるほどの赤い剣をいつの間にか握っていた


その剣を振るう度に赤いレーザが飛んでいき、触れた場所から全てを無に帰し、化け物を剣から飛び出るレーザーによって溶かし、消し去った



彼女のローブ姿がばさり、ばさりとたなびく姿が目に入ってきているだけだった、後ろ姿しか見えなかったがアルさんは本当に主人公のように感じられた、きらきらと光っていた


彼女のような力が私にあったのならば、オーローンさんは、シャルルさんは死なずに済んだのかな


目の前にいたアルさんが音もたてずに消えた


消えると同時に少し離れた位置で”彼女”エニュプニオンとアルさんが派手に戦っている音が聞こえてくる


それを見て私にできることは何なんだろうと思った


私が今できる事、あいつを倒すために私ができる事


20秒ぐらいは拮抗できるが、20秒しか持たないだろう、その20秒で何ができるのだろうか…


不甲斐ない自分に嫌気がさす


「考えていても仕方がありませんね、見極めますか…私にできる事を…」


ルディアはアルとエニュプニオンの戦闘を眺めていた





アルは紅い剣をエニュプニオンに振るう


剣術なんて才能はないが武器が剣術を上回る、武器だけで戦闘能力を向上させる


剣を振るう度にレーザが放たれ、目の前で対峙しているエニュプニオンの身体を消し飛ばす


だが吹き飛ばすと同時に目を見張るほどの回復が始まり、エニュプニオンからの攻撃が放たれる、炎や溶岩、水や猛毒、氷と多彩な攻撃をくり出してくる


それを剣で防ぎ、「アイギス」の盾で防ぎ、魔法で防ぐ


魔法で打ち消す、剣で打ち消すこともしているが大方、大体は「アイギス」で攻撃を防いでいる


だが「アイギス」も万能ではない、想定以上の攻撃を加えられる、剣技の極致、奥義などをぶつけられる、魔法並みの威力を持って攻撃を加えられる、または聖剣で打ち付けられれば容易く突破されてしまうだろう


「終わりが見えないな、その回復能力の高さ少し羨ましいぜ」


エニュプニオンは何も発さない、遊ぶ隙など見せず、ただただ一秒でも早くアルをこの世界から消すために動いているように感じた


エニュプニオンが大きく二歩、三歩、四歩とバックステップを繰り返し、アルからかなり距離を取ったそして


エニュプニオンがバッと手を真横へと突き出すと、徐々に徐々に影が集まっていった、その影たちは徐々に形を形成していき、禍々しいデザインを作っていった、その突き出した片腕には黒い、真っ黒い色をした鎌が握られていた


ひやりと汗が伝う、見たことがない形状だった、見たことがない武器だった


エニュプニオンは体制を前傾姿勢に移行し、エニュプニオンは私に向かってトントントンと詰め寄ってくる


トントントンと武人が海を渡るかのように、子気味良く、テンポよく詰め寄ってきた


私は少しでも距離を取るためにバックステップを取りながら牽制目的で火の魔法を放つ


手から炎の球体が複数個放たれる、が着弾するか否かの間際の所でエニュプニオンは全ての球体を見事な身体捌きで鎌によって全てを切り裂かれる、その勢いで私に詰め寄ってくる


手が触れ合うか否かの所で魔法を発動する


「アイギス!!」


私と彼女を隔てるように、直線状に絶対的な防御力を持つ盾を出現させる


だが彼女は止まらなかった、アイギスで攻撃を止められているのを何度も何度も何度も見ているのにも関わらず彼女は私に、アイギスに突っ込んできた


エニュプニオンの顔には殺意しか乗っていなかった、殺意を乗せながら鎌を振るう、剣技を乗せ、身体を乗せ、命を刈り取るためだけに身体を使う


それは直感だったのだろうか、私が生まれ持った洞察力なのだろうか、嫌な予感は身体を走り回る


アイギスとエニュプニオンの鎌が触れ合う


「…!」


アルはその瞬間に鎌から逃げるように「空間の連続性の否定」を発動させ、距離をとった場所に現れる


その同時刻に鉄と鉄が重なり合い不愉快な音が鳴り響いたのちに、パキンと何かが割れた音と共にその音は終わりを迎えた


アイギスが崩れ去っていったのが目に入る


勢いを殺さずに鎌は大きく振られ、私が元いた場所を見ると大きく、大きく地面を抉り取られていた


「はは!アイギスが破られるって中々だな!トラッキングレーザー!」


体制を整え、アルは魔法を放つ




私の頭上、何も無い空間上に大人の男性ほどの大きさの光の球体がいくつも出現する


光の球体は光の魔法を放つ


光のレーザーはカクン、カクンと予測がつきにくい動きをしながら高速でエニュプニオンに向かっていく、エニュプニオンも鎌で光のレーザーを切り裂いていくがレーザーは止まらない


レーザーはエニュプニオンを焼き切る程に光線を浴びせた後、役目を終え消える


エニュプニオンはぷすり、ぷすりと煙を至る所に上げていた、皮膚は爛れ、所々焼け落ちていた、だが瞬時に目を見張るほどの再生をしていく


何度か再生を見てきて分かったことがある


魔力が一切流れていない、魔術においても魔法においてもどう転んだって魔力は必要だ


魔力を使用すれば、空気中に存在している魔力も連動し微弱でも動きはある


だが回復時にはその動きが全く見えない


だから魔術や魔法ではないことが分かる


だったらと考える


種族的な者なのだろうかと一瞬考えるが、最も再生能力が高い吸血鬼すらも超えている、彼女はソフィアやその妹と比べるとやはり違うように感じられる


種族でもなし、魔法や魔術でもなし、だったら


最後…


能力を使用していることが考えられる


能力、生まれ持った時に与えられるランダムの才能


黒い人型を生み出した時だって、超巨大の化け物が生み出された時だって魔力の流れは無かった


だから彼女の強さ、エニュプニオンの強さは能力なのだろう


虚数空間にあるはずもない空間を作り出す


化け物どもを生み出す能力


私の剣と同格のランクの鎌を生み出す能力


自信を際限なく回復する能力


能力‥‥ふむ、どれだろうか



アルは鎌で追いかけられながら、ぐるり、ぐるりと思考を駆け巡らせる


空間の連続性の否定で空間を飛び回り、赤い剣で抗戦する


空間の連続性の否定で跳躍し、剣を直に斬りつけに行く、だが鎌で防がれる、剣と鎌が重なり合う度に衝撃波が世界を揺るがす


その衝撃波は神と神の戦いだ、もしくは英雄と英雄の戦いの余波なのかもしれない


世界を揺るがす


衝撃が世界を揺るがす


その衝撃波は予想以上に世界にダメージを与えていたようだ、空間に物理的にひびが入り始める、真っ黒い、真っ黒い細長い線が幾つも世界に入り始める


世界は自身の身体を保たせるために、ひびはすぐさま修復されていく


エニュプニオンは顔をしかめる


対照的にアルは笑う、楽しく笑顔に戦闘を楽しむ


何度も、何度も、何度も、何度も剣を打ち込み、赤いレーザーが放たれる、鎌はそれを切り裂く、剣を振るえば鎌で押さえつけられる


鎌と剣がお互いの刃を折ろうとすると、刃から火花が散り、爆破のような衝撃が放たれる


「お前、中々面白い能力持ってんな」


「は?」


「ふふふ、お前の能力は具現化する能力なんだろ?羨ましいな」


アルは紅い剣を打合せながらエニュプニオンに話を掛ける


答え合わせをする子供のようにエニュプニオンに話をかけた


「てめぇに答えると思うか?」


「ま、答えないだろうな」


けらけらとアルは笑った、楽しそうに、友人に話をかけるように

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