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[主人公たち!]  作者: 狼の野郎
前日譚 夢を見て空を見る少女 
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夢を見て空を見る少女22

「はは、良くそんなに口が回るな、さっさと悲鳴をあげて泣き叫んで、痛みに悶えながら死んで、私の前から消えてくれない?」


「いきなり辛辣ですね、自身の世界に呼んでおいてお茶の一つも出せないんですか?」


「私のおもちゃにお茶なんて出さないでしょう?」


「おもちゃにやられた400年の気分はどうでしたか?さぞかし楽しかったんじゃないんでしょか?」


「っは、その間はオーローンとシャルルを殺した時の感覚を永遠と楽しんでたわ、あの時の感覚は忘れられないわ・・シャルルの血は綺麗だったわ、本当に」


彼女は衆悪に恍惚に、残忍にうっとりと笑う


「400年もの間、同じものをリピートし続けるなんて暇なんですね」


ルディアは吐き捨てるように、興味がなく、ただただ憎悪を乗せながら言葉を綴った


「お前は魔法の触媒になってただけだろ」


先までの恐怖はどこに行ったのやら、ふつふつと勇気が湧いてくる、ふつふつと怒りが湧いてくる


「っは、魔法の触媒に私がなってたとしても、貴方は負けたんですよ?まぁ?人間様に手を掛けたから、雑魚の貴方が私たちにちょっかいを掛けるから400年も暇になるんですよ、ばーか」


ルディアは彼女に向けてぴしりと中指を立てる


勇気の風がルディアの服をなびかす


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


一瞬だけ彼女の顔は険しくなるがすぐに彼女は余裕のある笑みになる、これからどうしてやろうか、これからどのようにしようと、考えている様が伺いとれる


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


もう言葉はいらない、というかこいつとは喋りたくない


始まりなんて誰も言わなかった、始めましょうなんて言わなかった


お互いが拒絶している、心が拒絶している、最初から理解してもらおうなんて一切考えていない、最初からお互いが殺意を出し、牙を出し、相手を傷つけることしか考えていない


魔力を回し続ける


オーローンさんが魔術で勝てなかった相手、シャルルさんが武力で勝てなかった相手


だからこそ私は勝つ、オーローンは”青い空”を唱えてくれた、シャルルは私の背中を押してくれた


だからこそ、だからこそ、この彼女を殺す










最初から全力、周りの被害なんて一切考慮しない!


ルディアの魔力であたり一面にぶわりぶわりと風が巻き起こり始める、ルディアを中心として空気が揺れ始めた


ルディアを中心としてばちりばちりとルディアの魔力が空気との弾き合いで火花が飛び跳ねる


ばさりばさりとルディアの服は風によって声を上げる


魔力はルディアへと集まっていく、全てをルディアは食らい尽くす


詠唱なんてものは取っ払う、詠唱という名のストッパーを付けていたって仕方がない


「白き世界」


ルディアは冷たく、感情を、殺意を乗せて、普段の明るさなど一切ない声で呟く


そう唱えた瞬間、須臾の時間、刹那の時間、瞬きよりも早く、音よりも早く、光よりも早い時間であたり一面全てが氷付く、彼女すらも凍り付ける


地面はルディアを中心として分厚い氷に包まれる


瞬時に魔力を回し、次の魔術を放つ


「光の剣!!」


ぶわりとあたり一面に魔力を使用した際に生じた衝撃、風が吹き荒れる


魔力を大幅に乗せて、魔術を使用する


ルディアの手が光り輝き、その光は一つの束へとなり一つの細長い円柱と化す、その長さは天にも届きそうな、空を両断できるほどの光の刃だった


「やぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


喉が枯れるほどに、身体の中の空気がなくなるほどに声を出す、全ての気合を乗せて放つ、一閃


普段の出力を大幅に超えているため何が起こるか分からない


だからどうしたんですか!!


剣を横一直線に、氷の壁を一刀両断する


スッと豆腐に包丁を入れるかの如く、分厚い、分厚過ぎる氷に剣の一閃が入る


瞬間、パンと弾ける音と共に、氷は空中に浮かんだ、剣を入れられた上部がは弾け飛んだ


まだ!!!


光の剣を瞬時に解除する


光の剣は魔術の主に解除されたために、光の粒子となり空中に霧散していく、その景色は夜空に浮かんだ無数のホタルを思い起こす光景だった


だがルディアはその光景に一切目をくれずに解除、と同時に一秒にも満たない時間で身体中に魔力回す


次の魔術に入る


次の一秒後にはぶわりと魔術が回ったこと知らせる風がルディアを中心にして吹き荒れる


「プロメテウス!!!!」


全力全開


イメージを思い起こす、それは惑星であり、小惑星でもある、幾つもの流星で宇宙空間を彷徨っている惑星、数多に輝く流れ星


その全てを具現化させます!!


ルディアため込んでいた魔術を空中に放ち、それは、その魔術は何もない空中に形作る


ぶわっと瞬間的に空中が・・・天高い位置に座している空が真っ赤に一斉に燃え始めた、それはルディアが唱えた魔術だった


空中には惑星にも引けを取らないほどの大きさの、炎だけで構成された球体が無数に降り注ぎ始めていた


空高くから火の球体が降り始めている時点であたり一面の氷はどろりどろりと解け始め、あたり一面を水のステージへと変貌させていた


無数の球体は空から降り注ぐ、球体は轟音を喚き散らしながら地面へと降り注ぐ


落ちろ!!


爆音ともに炎は着弾する、着弾と同時に炎の球体は周囲一帯を無に帰す爆発を何度も、何度も、何度も起こした、触れるだけで身体が消し飛ぶ熱量、見るだけで目が焦げる熱量、その熱のエネルギーを全て用いる爆発


息とし生きるもの全てを無に帰す爆発だった


それ故にあたり一面に残っていた氷が大きな音をを立てながら全てが一瞬で水と化す


一部の、既に溶けていた氷の水が炎の温度によって蒸発したのかあたり一面は白い霧に覆われる


一部では炎が水に打ち勝ち、めらめらと炎を地面に宿していた


だが大部分は床は水で埋まっている


まだです!!!


ぎりっと奥歯を噛み締める、連続の魔術の使用によって、莫大な魔力量を持つルディアでも多少なりとも疲れを見せる


だがそれを気合でカバーした、手を止めている暇はないから


炎の球体の着弾と共にぴりりと空中が魔力によって震える、ルディアを中心として魔力は、空気は震え続ける


ルディアは次なる魔術を展開する、ルディアの腕は青白い電流が流れる、バリバリと電流が流れ始める


ルディアは水に手を着け、魔術を発動させる


同時にルディアを覆うように緊急防壁も張る


「雷!!!撃!!!」


ぱんっと轟音が鳴り響く、それは何かがはじけ飛ぶような音であった、その音よりも速く目に見えない速さで電流は暴れまわった


凄まじい電流によって地面に広がっている水を伝い、雷の龍は全てを食らい尽くす、触れるもの全てををはじけ飛ばす、近ずくものすらも食らいつき貪り食らう


氷漬けにされ、光の剣で一刀両断され、巨大な巨大な炎の球を打ち込まれた”彼女”は雷撃によって食われた


すべての水は電流によって水蒸気と化し、地面は霊撃の熱によってぷすぷすと音を立て水蒸気をゆっくりとゆっくりと上げていた


水蒸気は先よりも濃い白い世界へと変貌させた




ばっと白い霧の中から黒い影、小柄なシルエットががルディアに迫った


ルディアは瞬間的に反射的にシャルルが愛用していた魔術を無詠唱で使用した


「っつ!!」


ブラッドソード!!


体内に存在し、循環し続けている自身の血を使い、強引に血液を出現させ、赤黒い、だが麗しい剣の形へと昇華させる


黒い和服の彼女が霧を切り裂いて目の前に現れる、歪んだ笑顔と共に、吊り上がった口が私の喉元を食い殺す形相、彼女の右手には真っ黒な、深淵の色をした剣を握り、振り上げ切り込んでくる


その剣に対してぎりぎりの所、ブラッドソードで彼女の剣と鍔迫り合いの形に持ち込むことに成功した


お互いの目が、視線が交差する、驚愕、悪意、敵意、殺意、悪意、悪意、憎悪、憎悪、憎悪、ルディアはギラリとにらみつけるように彼女へ向ける、彼女は楽しむように、醜悪な目をルディアに向ける


ルディアの剣と彼女の剣はお互いの剣を折ろうとする、お互いの剣は折られまいと目が眩むほどの火花を放ち続ける、微々たる剣の動きですら火花という綺麗な花が空中に咲いた


だがその鍔迫り合いは長くは続かなかった


彼女はルディアからトントントンとバックステップで二三歩、大きく距離を取った


一息だけ息を吐き呼吸を整える


私は今少しだけ驚愕していた、いや多少なりとも気づいていたことだが、魔王の娘のシャルルと勇者の旅仲間のオーローンが居てもなお封印という手段しか取れなかった、それを考えると彼女の自己回復能力は凄まじいものということが窺い知れるだが、私の全力を放った後の彼女には傷どころかここで出会った形から何一つ変わっていなかった、氷や水滴、やけどの跡すら見受けられない


確かに手ごたえはあったが彼女は何も変わっていなかった


「あら?貴方・・・勘もいいのね、シャルルだけかと思ったわ」


「そんな弱い剣にやられるほど私は柔くないですよ?」


ぱっと彼女は自身が持っていた剣を放ち、その剣は空中で砂のように黒い粒を空中にまき散らしながら霧散していく


「それもそうよねぇ、私ってあくまで自分が戦うスタイルはどうにもしっくりこないのよねぇ、そうそう私が好きなのはストラテジーゲームであってね~あれっていいわよね、自分が手を下すだけで駒が勝手に潰し合う様を見れるのって、糞みたいな蟻どもがうじゃうじゃと下らないことで命を散らしていくの・・くだらない命を私の娯楽のために使い潰してくれると考えると、蟻でも多少なるとも愛着が湧くのよね~だからね、私はストラテジゲームが好きなのよ、あっは!そうそうだから貴方たちが戦っている様も面白かったわよ、えぇえぇ、本当に無様にお互いを傷つけあう、アホみたいな様を見るのは中々、趣があるわよねぇ、くふふ」


彼女の言葉は全て本心だった、人間という、いや人類という種を嫌悪し、憎悪していたように受け取れる言葉だった


だからこそ一つだけ疑問が湧く


彼女に対しての嫌悪感をひたすらに押し殺して一つだけ彼女に問う


同時にもう一度魔術を展開するために魔力を身体中に回し始める、一種の時間稼ぎだ


「そこまでして人類を嫌悪しているのに貴方はどうして私たちと同じ容姿を?どうして同じ言語を話すんですか?」


「何を勘違いしているのか分からないけども、私は人類は憎んでいないわよ、というか別段どうでもいいわよ、一々気に留めないわよ、まぁ牙を剥けてくるんだったら話は別だけど、あぁそれと私は人類の声は好きよ、だって悲鳴を奏でるもの」


そういうと彼女はピッと腕を振り上げる、振り上げただけだ、魔力の操作すらもなかった、だが


同時に顔近くに鋭い音を通り過ぎる


ルディアの先ほど風が通り過ぎた場所からぼとりと重い生ものが地面に落ちる音を耳で拾った、同時に身体の感覚が、平衡感覚が偏る、ぐらりと重心が傾いた


同時に鮮血が宙を舞った


目を見張る


誰の?何処から?なんて思わなかった、頭はすぐさま状況を理解した、だが理解したくなかった


ルディアは恐る恐る、音がなった、生ものがべちゃりと地面に落ちた方向を覗き込む


そこには綺麗な綺麗なルディアの片腕、左腕が綺麗に転がっていた、転がった腕からは腕と身体を繋げる部分の切り口からは白い骨が見え、一つの凸凹すらないほどに、鏡のような骨の断面が見えた


転がった腕から血がどろり、どろりとケチャップをゆっくりと押し出した時のように、ゆっくりゆっくりと腕に残っていた血が溢れ出てきていた


その間もルディアの肩口からは命の源である血が止めどなく溢れ出る、空中を鮮血に彩る血もあれば、血液がルディアの服を伝い赤い色をつけ足していた


その赤色はどんどんと服を侵食していく


瞬時に片方の手、残った手で傷口を塞ぐように置く、その手の感覚はぐじゅぐじゅに溶けたトマトの中心に硬い棒の先端があるのを感じ取れた


手の隙間からも血が溢れ出る


触れた瞬間から脳が理解したのか、腕を斬られ、皮膚が断絶され、骨が切り落とされた痛み、普通の私生活を糸なんでいれば空気に触れることがない骨や肉が風に触れ、空気に触れ、痛みを身体中に伝え続ける、激痛が身体を襲った、それは削がれた部分が火に炙られたような痛み、傷口を棒でぐちゃりぐちゃりと抉られるような痛み、頭の中で火花がちかりちかりと飛び続ける


痛い痛い痛い!!!痛い痛い痛い!!!あぁあああああああああああああ!!!痛いよ


声にはださなかった


「------------------っつ!」


奥歯を噛み締める


がりっと何かが欠ける音が口内で聞こえた、だがそれでも噛み締めた


すぐ様、今まで体中を回していた攻撃用に用いようとしていた魔力を、回復魔術に回し、応急の手当てを始めながら、ルディアは”彼女”の事を睨み続ける


「あら、悲鳴を奏でてほしかったんだけどね、ま、貴方の歪んだ顔だけでも見れたんだから!私は嬉しいわ!」


冷汗をかきながらルディアは声を出す


「良くもまぁ・・そこまで口が回りますね・・・・その汚い口を閉じたらどうですか?」


回復魔術によって痛みは多少なりとも引いてくる


「あっは、貴方こそ汗がすごいわよ??ま、私は貴方に直接一撃入れられたから後は傍聴に戻るわ~」


”彼女”はぱちりと空間を揺るがすほどに大きく一つ指を鳴らした


そのすぐ後に、何一つ音を立てずに黒い人影がずらりとルディアを囲うように陽炎のように、人の影のようにパッと瞬間的に表れていた


それらは数十、数百、数千の数がいた、ルディアを囲うように壁のように佇んでいた


その黒い人影はウィルフレッドが召喚した奴らだった、剣を持ったもの斧を持った者の二種類しかいないが技量が桁違いに可笑しい奴ら


それらは佇んでいた、全てが現れた今、彼らは剣を鳴らし、斧を鳴らしながら佇んでいた


そいつらは数によって戦闘能力、身体能力が下がるなんてことはなかった、むしろウィルフレッドが召喚した奴らよりも一人一人が強い


あの時は何がモデルだったか分からなかったがこいつらは・・・・・・・・・・・・・昔の勇者と魔王だ、剣を持っている影が勇者の写しで、斧を持っている影が魔王の写しだ


ようやく強さの原因が分かった・・・・・気付きたくもない事実に気付かされた


身体が震え始める、機械のように身体は小刻みに震え始める


それは血の抜きすぎ、血液不足なのかもしれない、あるいは、それは今、眼前に広がる無数と言っても過言ではない量の黒い影たちのせいなのかも知れない


あるいはその両方なのかもしれない


だがルディアは確かに震えていたがそれもすぐに収まりを見せた、心の中心が奮い立たせる


「何人いるんですかね」


身体の痺れや痛さによって顔をしかめながら、ルディアは未だにどろりどろりと手の隙間から出血している片腕を抑え、回復魔術を使用しながらぼやく


黒い影たちは何も喋れなかった、勇者と魔王は何も喋らずにただただ剣を鳴らし、斧を鳴らしながら楽しそうに待っていた


彼らの顔は見えないがきっと歪んだ笑顔を見せていたのだろう、これから殺戮ができると・・・・血を見ることができると・・・・・


ルディアの眼前は黒く、黒く、黒かった、ルディアの背中すらも黒く、黒く黒かった、逃げ出すような隙間すらなく、隠れるような隙間すらない


絶望というのはこのような状況にぴったりな言葉なのだろう





だがルディアの目は曇らなかった、地面を見なかった


ルディアは額に浮かんでいた汗を残った片腕で拭い、汗を空中に捨てる


腕は未だに血の海よ化している地面に落ちたままなのだが、片腕からは血は流れていなかった




ルディアの治療は終わりを迎えた




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