夜空の星空に捧げる五重奏23
夜の独房の中で綺麗な音色が聞こえてくる、声は明らかに幼いどこまでも幼く聞こえるが、だがその歌を聞いているとどこか妖艶な雰囲気を感じ取ることができた
アルが独房の前へと音もなく立つ
「やぁ昼ぶりだな」
どんな言葉をかければいいかわからなかった
「あぁ!お姉さんだ、助けに来てくれの?」
「あーあーまぁまぁ‥‥うーん」
アルは歯切れの悪い返事を返す、その様子を見てアヤノは不思議がりながら首をかしげた、それは少女らしい少女のような振る舞いをする紛うこと無き少女であった
だからこそ人は騙されてしまうのであろう、だからこそ人は本質を見間違えてしまうのであろう、本物は何か、ということを
「どうしたの?助けてくれないの?………。」
アルの目の前、ある程度整備されている独房の奥には今にも泣きそうな顔をした少女がそこにいた
少女の気持ちをトレースするならばそれが正解だろう、そのように振る舞い、そのように演技し、そのように動作をする
それは言ってしまえば自動人形さながらの決まった動作にしか見えなかった
さぞ苦しいだろうな
「なぁそれで楽しいか?」
「……何を言ってるの?お姉ちゃん」
「そんな窮屈な皮を被っていて楽しいのかって聞いてるんだ」
「おっと、先に言っとくが私はどっちの味方でもないぜ?火の粉が降りかかれば屠るぐらいのことはするがな」
「……………」
アヤノは口を開き言葉を紡ごうとした、その顔は酷く大人びていた
だがお前ではない、私がお話をしたいのはお前ではない
その顔をしたお前ではないのだ
アルはアヤノの目を除く、奥底にあるであろうその人物の目を
「お前と話したいって誰が言ったんだ?私はアヤノと話したいって言ったんだが?ルディアに負けた悪魔さん?」
「……………。」
また顔が変わる、大人びていた顔からまた変わった、全てがつまらなそうな顔、全てに興味がなさそうな顔、煌びやかな未来に夢を見ていたような少女の顔ではなく、嫌なほどに大人びていた少女の顔でもない
ただただ興味が薄く、何も見ていない少女の顔がそこにあった
「何故分かった?どこで分かった?お前とはお昼しか喋ってないぞ」
「いや私は気づいてはないぞ、情報があっただけだ」
アルはいつも通りに普段通りに魔術を使用して独房に侵入し壁にもたれあぐらをかいた
「まぁどーせ時間はあるんだ、ゆっくりと喋ろうぜ?時間が無くなったら伸ばせばいいしな」
けたけたと笑いながらアルはアヤノに伝えた、そこには緊張感なんてものはなく、本来の姿を見れて嬉しいのかはたまた楽しいのかアルは上機嫌に言葉にしていた
配信やってて楽しくてね、やれんくね。まぁのんびりと




