夜空の星空に捧げる五重奏21
ルディアはゆっくりと服についた土やら何やらを叩き落としながら立ち上がり呆れながら私を眺めていたソフィアを見る
そのソフィアは悪魔に取りつかれていた少女、アカネを担いでいた
ルディアはその様子を目に入れながら静かにソフィアに問いただした
「その子はどうなるんですか?」
それは”その子”を気にするという様子ではなく、その言葉はただの興味からだった、哀れみや同情や心配などの感情なんてものは無い
「あー?あーーー、んーー、どうなんだろうな、まぁこれからの事を話すのであれば一旦は留置場で過ごしてもらうかな、経過観察も含めてで」
「そうですか、ま、だったら面倒は任せましたよ、もう私はくたくたなんですよ、どっかの早とちり馬鹿に喧嘩は吹っ掛けられるわ、どっかの妹には連れ去られるわで大変な一日だったんですよ」
「っは、楽しそうな一日だな」
「その感想が出てくるなんて驚愕ですよ、はぁ能天気阿保吸血鬼の脳内がどうなってんのか見てみたいですね…空っぽなんですかね?まぁいいや・‥‥‥一応聞いときますがその留置所に持っていくのには私も同行した方が良いですか?」
「いやもう必要ないと思いたいな、ま、何かあっても私一人でも対処ができるだろうしな、てか小さい奴はもうおねんねの時間だろ?帰って寝たらどうだ?」
「妹馬鹿吸血鬼を地面に寝かしつけることは可能ですよ?そんぐらいの余力は残っていますし、やってみせましょうか?」
「ちびっこがなんか言ってるなぁ?、まぁ寛大な王様はそんぐらいの無礼は見逃してやるとするよ、じゃーな良い夜を過ごせよ、ちみっこ…それと妹を任せた」
そういうと踵を返してソフィアは留置場があるであろう道へと歩き出した、ルディアはその背中に夜の最後の言葉を投げかける
「うるさいですよ、良い夢を見てくださいね、妹馬鹿さん」
その言葉を周りの住人に迷惑が係らない静かな声であった、ソフィアもその言葉が耳に入ったのか顔をソフィアに向ける事無く右手を挙げてプラプラとルディアに向けて夜の挨拶を返していた
ゆっくりとゆっくりとソフィアは闇へと消えていく、その背中を最後まで見送ることなくルディアも踵を返していつもの魔道具店へと足を向けた
その時にタイミングよくもしくは鳴らす時を狙っていたのか分からないが可愛らしい音が鳴り響いた、ルディアは疲れたように自身のお腹をゆっくりと眺めて誰も聞いていないのにも関わらず呪いのようにしがれた声で一つ呟いた
「はぁ流石にお腹が減りましたね…。」
そんなボヤキを吐き捨てながらルディアは帰路へとついた
夜の歌は鳴り響く、夜はどうしてこんなにも長いのだろうか、夜はどうしてこんなにも声が響くのだろうか?夜はどうしてこんなにも、こんなにも楽しいんだろうか?これが叡智を授かっても分からなかった、まぁ気持ちだからだろうな
‥‥‥‥‥‥‥
「はぁ~只今帰りましたよ」
からんからんとルディアは魔道具店の扉を開けながら帰ってきた、私はその様子を見ながらコーヒーを一杯啜った、隣にはちっこい妹の方の吸血鬼もコーヒーをちびちびと飲んでいた
「おう、お帰り、夕飯は一応できてるぞ」
「おかえり~」
気の抜けた声だった




