夜空の星空に捧げる五重奏19
休む暇なんてものは無かった、剣を納めて事態の収束を見届けようと気持ちを落ち着けていたが、それすらままならなかった
サガンを固定していたと思っていた数十本の鎖は瞬きの間にいつの間にか消滅していて、鎖はただの一つになっていた
何が起きているんだ?と口に手を当てる時間なんてものはなく物語は進み続けた、自由落下を開始していた二人の片割れは指を一つだけ示しながら言葉を短く繋げる
「本体!!!彼女を!!!」とそんな短い命令に近い言葉を私に向けて発してきた
ソフィアは瞬間的にどろどろと形容したくないような球体と自由落下している彼女を瞬時に目に入れる
その後に自分も落下しているのにも関わらず成すべきことを指し示し、恐ろしい吸血鬼に偉いはずの国王に物怖じすることなく、ただ今必要な物事を端的に乱暴に伝えてきた彼女にため息が一つ漏れ出した
一応ここの国の主をしているんだがな…駒のように使いやがって、私よりも王様みたいだな、畜生め
「だがまぁ」
頼られることに関しては…
「悪い気がしねぇなぁ!」
ソフィアは赤い目を輝かせながら鞘に納めていた剣を瞬間的に抜き、ほぼ同時に地面を抉るように蹴り飛んだ、それからはもう人の目に追えるほど速度を優に越していた、上がり続けた速度でも止まることを知らずされど制御ができないわけでもなく、ただただ完璧に一寸の狂いも見せず、見せることなく、仕事を完璧にこなす
それを傍から見ていた人がいるのならばこう口を漏らすだろう「炎を纏った桜のような流星であった」と
ソフィアは桜色の刀身を纏った剣を黒い球体目掛けて振った、一閃、結局のところ技を考えず、自身の全てを乗せた剣が一番強いからこその一閃、それだけで十分であった、その気合を乗せた一閃は外れることなく、的が狂うはずもなく、瞬間的に黒い塊は生命を断ち切られる
だがそれとは裏腹に達成感もなく、実感もなく、切り伏せた感覚すらなかったソフィアであったが剣を鞘に納め自由落下をしていた少女を衝撃を和らげながら空中で捕らえた
それから数秒数えたところでぐちゃりという不快感が増幅させるような音とともに黒い何かが落下した、その黒い何かは動くことはなく、ただただ地面に横たわり、ただただ空中へと自身の身体を霧散させていくだけであった、黒い粒子が薪の炎のように夜空へと向かっていく
ソフィアはゆっくりと降下を始めたところで地面で爆風が発生した
「ぐえ!…いったぁ~」
何とも情けなく、それでいて締めに悪い言葉がソフィアの耳に聞こえてきた
何やってんだか
ソフィアはそんな情けない姿を見てまたもう一度溜息が漏れ出た




