第五話 無限爆炎地獄
「おい。起きろ。もう時間だぞ」
「んぅー……。うぅ……」
「あと30分でチェックアウトだぞ」
「んんー……。頭が痛いよ……」
「そりゃそうだろう。飲み過ぎだ」
「……あんまり覚えてないや」
「そうか……。まぁいい。早く準備してくれ」
「ああー……。頭いたいぃ」
「どこまで覚えてるんだ?」
「うー……。南君が苦いのを無理して飲もうとしてたところ……」
「最序盤だな!」
「楽しかった気はするんだけど……。ごめんね……」
「いや、構わん。そういう事もあるだろう。だが以後……控えてもらおう」
「うん。そうする。何か変な事言ってた?言ってなかったよね?」
「あ。ああ。……大丈夫だ。問題無い……。多少、滑舌が悪くなっていた程度だ」
「ん?……あれ?怪しいなぁ。なんでちょっと赤面してるの?」
「なんでもない!早く準備しろ!追加料金を取られてしまうだろう!」
「もー。そんなに怒んなくてもいいのにっ!ちょっとシャワー浴びてくるから」
「……南君は僕が守る。って叫んでたなんて……。伝えられる訳ないだろうがっ……」
「んー?何か言った?」
「……もう時間が無いぞ!早く出てこい!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「ドライヤーが無いなんて不便だね」
「こんだけ晴れてれば、すぐ乾くだろう」
「うん。だけどもしかしたらこっちの人は魔法とかで乾かすのかもよ?」
「シャワーも何故暖かいのがでるのか分からなかったな。あれも魔法か」
「きっとそうだよ。水が流れてるのもそうだよ。多分」
「実際に早く見てみたいな。魔法」
「そうだね。僕達、ほんとに使えないのかなぁ」
「うむ。試してみたいが、ここじゃ往来が激しいな。一度、町の外に出てみるか」
「使えなかったら無駄足じゃない?」
「こんな所で試せるか!もし炎が出たりしたらどうするんだ」
「希望は捨ててない訳だね」
「俺が常日頃から鍛えている魔力を発現出来る時がやっと来たんだ」
「ノートに『ぼくのかんがえたひっさつわざ』を書いてただけじゃないの?」
「お、お前こそチート能力に拘っていたじゃないか!」
「間違えて召喚されて、チート能力の一つも無いんじゃ納得いかないでしょ?」
「間違えたからこそ無いんじゃないか?」
「うぅー」
「大丈夫だ。純。俺の秘められた才能が、今ここに開花する。お前は歴史の始まりを見るんだ」
「何にする?やっぱり最初は『黄昏蜃気楼』にしとく?どっか燃えちゃったりすると迷惑だしね」
「……」
「あ、やっぱり出るときも門番さんに言うのかな?」
「昨日捕まったが、誤解は解けたからな」
「うん。そうだよね」
「ああ。すまん少し町を出たいんだが。ああ。そうだ」
「どうもー」
「話は通ってたみたいだな。次、町に入る時は番号札を貰うらしい」
「それで出る時に返す。って事だね」
「ああ。きっと住民票的な物があればいいんだろうが……」
「僕達は元の世界に帰るからね。必要ないね」
「ああ」
「で、また森に戻ってきた訳だけど」
「あの川よりこちらに居れば襲われることも無いだろう」
「昨日はそうだったね」
「よし。やるか」
「うん。まず何をするの?」
「ふふふ。……ステータス!オープン!」
「……」
「そういうシステムは無いらしい」
「ちょっと期待したんだけどね。っていうかそのポーズ要るの?」
「要る。よし次だ」
「要るんだ……。そりゃ町じゃ出来ないね」
「我身を焦がす深淵の炎……。血の流れよりも紅く深く……」
「詠唱始まってた……」
「轟け!!!!『無限爆炎地獄』
「でたー!!『無限爆炎地獄』……え」
「え」
「え」
「…………くくく。……あーっはっはっはっはぁああ」
「南君……!森、大火災だよ!?!?」
「ふはははは!我が才能!恐ろしい!!」
「いや、すごいけど!すごいけど、その前に!この火事は僕らもやばいよ!消さなきゃ!!」
「任せておけ!……天の恵み命の源……。我が身に集え……」
「熱いよー!はやくー!」
「降り注げ!『聖豪雨天来』
「おおおおお。消えたよー!すごいよ南君!……南君?南君?!」
「……」
「どうしたの!?南君!起きてよ!!南君!!!?」