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第四話 ビアエール

 

「南君!南君!露店がたくさんあるね!お祭りみたい!」

 

「はしゃぎ過ぎだろう。あまりキョロキョロすると田舎者だと思われるぞ」

 

「見て!ハンターっぽい人達があの建物から出てきた!きっと『ギルド』ってやつだよ!」

 

「定番だな。クエストを受けて報酬を貰えたりするんだろうか」

 

「行ってみようよ!」

 

「誰でも入っていいのか?俺達字が読めないぜ?」

 

「ほら、早く!」

 

「おい!引っ張るな!元気だなぁ……」

 

「うわぁ。強そうな人達ばかりだね」

 

「おい。猫耳だ……!猫耳のお姉さんがいる……!まさか拝める日が来るとはっ!!」

 

「異世界って感じだね」

 

「けしからんな異世界。肌の露出もけしからん」

 

「鼻の下伸ばさないでよ。掲示板にいろいろ貼ってあるけど読めないから分からないね」

 

「おい純。金髪女騎士だ!くっころ!くっころ!」

 

「ダメだこりゃ。行こう南君。恥ずかしいよ」

 

「おい!引っ張るな!」

 

「結局南君の方がはしゃいでたじゃない」

 

「すまん。生くっころを見て我を忘れてしまった」

 

「生くっころって何さ。でもいつかお金も無くなっちゃうからお世話になったりするのかなぁ。ギルド」

 

「ハンター……。憧れていたハンターになれるのか……!」

 

「今のまま僕達がこの世界で役に立てる事なんてありそうもないけど、とりあえず文字は読めるようになりたいね」

 

「うむ。そうだな」

 

「本屋さんとかあれば売ってるかな?教科書みたいな本」

 

「やはり児童書的な物になるんだろうか」

 

「そうだね。言葉は通じるから本屋さんがあったら店員さんに聞いてみよう」

 

「ああ。そろそろ夕食時だな。どうする?」

 

「露店は無数にあるし、飲食店もたくさんあるみたいだけど……」

 

「だけど……?」

 

「ファンタジーって言ったら、酒場じゃない?!」

 

「酒場か。情報収集の基本であり、情報収集の基本だな」

 

「何で二回言ったの?」

 

「しかし俺達は未成年だぞ?」

 

「異世界の法律は都合よく15歳が成人だったりするんだよ」

 

「そう都合よくいくか?」

 

「それに、お酒を頼まなきゃいけないって事もないと思うよ」

 

「まぁ確かに。じゃあ行ってみるか」

 

「うん!レッツゴー!」

 

「元気だな……」

 

「ほら南君。看板に酒樽みたいな絵が描いてある。ここがきっと酒場だよ」

 

「だな。わかりやすい」

 

「見てこれ。西部劇みたいな入口。趣があるね!入ってみよう」

 

「おお。活気があるな」

 

「あ、はい。二人です。はい。南君。あっちの席に案内されたよ!」

 

「繁盛してるようだな」

 

「ね!角の席だから店全体が見えるし、情報収集もしやすいね!」

 

「ところで何の情報を収集するんだ?」

 

「何の情報を収集するかを収集するんだよ」

 

「……そうか。お、メニューを持って来てくれたぞ」

 

「うん。でもまったく読めないね!」

 

「どうしよう。えっとじゃあ銀貨2枚でオススメをお願いします」

 

「……おい純。店員さん驚いてなかったか?」

 

「2000円くらいのつもりで言ったけど……。読めないから仕方ないよ」

 

「まぁそうだな。早いところ文字を習得しよう。当面の目標はそれだな」

 

「うん。その後お城で教えてくれたように、南の国に居る高位な魔術師さんにも会いに行こう」

 

「行く方法も調べなくてはならんな。ふはは。忙しそうだ」

 

「ワクワクするね!」

 

「心躍らんと言ったら嘘になるな」

 

「あ、飲み物が来たよ!」

 

「木のジョッキなんだな」

 

「風情があるねー!お酒かな?」

 

「だろうな……。純は飲んだ事あるのか?」

 

「僕が法律を犯す人間に見える?南君は?」

 

「ふはは。酒に逃げるなど俺の覇道には必要無いな」

 

「無いなら無いでいいじゃない。当たり前の事なんだから。とりあえず、乾杯しよう?」

 

「うむ。そうだな」

 

「はい。かんぱーい」

 

「乾杯」

 

「……ぷはぁ。美味しいね!」

 

「……ああ」

 

「あれ?そうでもない?」

 

「いや。美味いぞ。五臓六腑に染み渡るな。ふはは……」

 

「表情と言葉が合ってないよ」

 

「……少し苦みを抑えた方がいいかもしれんな」

 

「苦いなら苦いって言えばいいのに。水もらう?」

 

「……ああ」

 

「あ、料理も運ばれてきた」

 

「……漫画みたいな肉だな」

 

「うん……。あ、また持ってきたよ」

 

「漫画みたいな魚だな」

 

「うん。尾頭付きっていうのかな?サイズがおかしいけど」

 

「この量……二人でいけるか?」

 

「いくしかないね。フードファイトだよ」

 

「異世界で最初に戦うのが食事とはな……」

 

「あ、すいません。水ください」

 

「おお。うまい」

 

「ほんとだ!おいしいね!」

 

「こんな柔らかい肉食った事が無いぞ」

 

「このお魚も濃厚!あ、水はこっちで。あとこれもう一杯ください」

 

「おい。まだ飲むのか?!」

 

「いいじゃない。今日はパーティーだお」

 

「だお……って。顔赤いぞ?」

 

「南君!楽しいね!」

 

「お、おう」

 

「このサラダもおいちー!」

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

「……ああ。大丈夫だ……。これ追加の銀貨。ごちそうさま」

 

「……すぴー」

 

「純は酒で失敗するタイプか」

 

「ふひゅー……」

 

「……まぁ、いつも俺の為に……俺のせいで……」

 

「……すぴー」

 

「異世界……。お前と一緒で良かったよ……」

 

「ふひゅー……うひひ」

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