第三話 レッドベリー
「城だ」
「お城だね」
「めちゃくちゃ平伏してるな」
「うん。平伏してるね」
「実験中に誤って召喚したうえに座標も間違えた。特に召喚された理由も無い」
「そのうえ牢屋に入れらちゃって。しかも帰る手段も無いんだって」
「どうするこの状況」
「うーん。謝られてもしょうがないしね。全然気にしないでください」
「心広過ぎだな!」
「でも素敵な服も貰えたし。お詫びにお金も。なんだかわくわくしない?」
「……しないって言ったら嘘になるな」
「でしょう?どうせ元の世界に戻っても……」
「ああ。でも……いや。うん」
「どうしたの?」
「……ミミちゃんの世話。俺がやらないと……。きっと寂しがってると思う」
「……うん。じゃあ帰る手段を探そうよ!」
「ああ。そうだな」
「そうと決まれば冒険だね!」
「わくわく感が過ぎるな」
「では皆さま!失礼します」
「あ、南の国に高位な魔術師さんがいる?わかった。訪ねてみよう」
「じゃあ目的地は南だね。レッツゴー!」
「……お、おう」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「お金を貰ったけど、どれくらいの価値があるのか分からないね」
「もうちょっと城でいろいろ聞けばよかったな」
「うん。でも何だか気まずかったし」
「確かにな。召喚士の子震えてたな」
「南君くらい震えてたね」
「俺は震えてなどいない」
「そうだね。えっと金貨と銀貨。銅貨。20枚ずつあるよ」
「……。ちょっとそこの露店で果物でも買ってみるか」
「あ、早弁しちゃったもんね。お腹空いたね」
「お前は禍々しい何かを食っていたもんな」
「あの、すいません。この果物一つください」
「ほう銅貨1枚か」
「あ、じゃあもし10個買ったら……。ああ銀貨1枚。じゃあ100個なら金貨1枚ですよね!いえいえすいません。そんなに要らないです。ごめんなさい。当たり前のこと聞いて」
「わかりやすいな」
「うん。このリンゴっぽい果物が100円だとしたら、今20万円くらいあるね」
「ああ。お、おい。あの奥にある果物見てみろ」
「あれ。さっき僕が食べたやつだ」
「すまん。あれはいくらだ?」
「え。金貨1枚……。いや、要らないです。お邪魔しました」
「高級品だったんだな」
「うん。だって美味しかったもん」
「俺も食えばよかった」
「ね?はい。このリンゴっぽいの食べたら?」
「おう。貰おう」
「どう?」
「……リンゴだな」
「そのまんまだね」
「ああ。そろそろ日も落ちてきそうだな」
「うん。今日はこの町に泊まろう」
「そうだな。宿屋的なものがあればいいんだが」
「あるよ。定番だもの」
「脳内の定番が通用すればいいが……」
「ほら。あった」
「ほんとだ。都合がいいな」
「定番ファンタジーだよ。きっと」
「召喚士に召喚されたもんな……。実際に魔法とか見てみたいな」
「きっと使えるよ!ほら!みなみ君の得意な『永久黄金斬』やってみて!」
「それは魔法じゃない。剣技だ。……二人宿泊で。ああ。銀貨5枚か。わかった。11時までにチェックアウト。3階だな。ありがとう」
「二人で銀貨5枚ならいいね。」
「ああ。時間の概念も同じようだ。とりあえず部屋を見てみよう」
「階段キツイね」
「森で走ったのが効いてるな」
「ここだな。ほう、いいじゃないか」
「ちゃんとベッドもあるし外の景色も見えるね」
「まぁ寝るだけなら何の問題も無さそうだ。掃除も行き届いている」
「二人で銀貨5枚って……5000円くらいかなと思ったから床で寝る感じを想像してたよ」
「確かに。この世界の相場がわからんからアレだが。良かった」
「うん。まだ日も暮れてないし外歩いてみない?」
「そうだな。夕食の事も考えなくては」
「よーし!じゃあレッツゴー!」
「……元気だな」