3節
主人公が徴兵に赴く話です。
団長さんって結構すごい人なんだよなぁ…(大活躍するとは言わない)
「ここだ、荷物をおいたらすぐこいよ」
モトトがアリーナに連れてこられたのは騎士団の寄宿舎の3階の端の部屋だった。
備付きのベット2つと大きめのクローゼットと机、2つの椅子が置いてあるがモトト以外の荷物も気配もなかった。
(2人部屋みたいたけど…今は俺の1人部屋か)
アリーナに早くこいと言われている為、荷解きはせずに机の上に置いて部屋を出る。アリーナは扉の横で壁に背を預け待っていた。
「早かったな、モトト」
「あはは…ありがとう」
アリーナが歩き出すとモトトもそれに続いて歩きだした。その間にアリーナが寄宿舎の説明をしてくれた。
「ここは4階まである、1階が台所と大食堂、応接間があるな、台所は茶とか料理は材料持参なら使用可能だ。飯の時間は朝昼晩に鳴る鐘の音だからな、まぁ絶対参加じゃないし、少しばかりなら早くても遅れても大丈夫だ。2階は団長室と私の副団長室、でっかい図書館がある、調べ物は図書館を使えば大体の事はわかるだろ。3、4階は一般兵士の部屋だ。外には訓練場と武器庫、後風呂場と洗濯場があるな」
「この寄宿舎だけですっごくデカいんだね。村ぐらいある気がする」
「寄宿舎の他にもいろいろあるから、村の5倍くらいじゃないか?」
2人は階段で2階まで降りて、廊下の最奥の豪華な扉をノックした
「団長、入ります。」
ギィイと見た目通りの重い音を立てて開く扉
「し、失礼します」
おずおずとモトトが入ると見た目三十代の優しそうな顔立ちの男性がしっかりとした黒の皮椅子に座り立派な机の上で書類作業をしていた。アリーナとモトトに気づくと顔を上げ、椅子を立った。
「やぁ、アリーナ。もしかしてその子は、君が近頃くると言っていた幼馴染君かな?」
見た目にピッタリな優しい声に、モトトは緊張した表情を少し緩めた。
「はい、そうです。僕の事、ご存知なんですね」
「あぁ、アリーナが良く自慢げに素晴らしい幼馴染君の事を話してくれたからね。君の名前も知ってるよ、モトト君だろ。はじめまして、私の名前はリナイ、王国騎士団53代目団長を務めているよ。よろしくね。」
ニコリと笑って差し出された手にモトトも笑って握手をした
「団長、何度も話したけれどモトトはすごいスキルを持ってるんだ。」
「アリーナ、落ち着いて。立ち話も何だし、そこにあるソファにでも座って待っててくれ、お茶を入れよう。」
「あぁいえ、お構いなく」
「そう緊張しなくてもいいさ、待っててくれ、すぐに入れる」
そう言って団長は2人をソファに座るよう促すと、ポットとカップを取り出してポットに茶葉を入れた。すると懐から細長い棒を取り出してピュイっと振るった。
すると棒の先端に水が生成されその下に火が出現してしばらくすると火が水を包んで消えた。そのかわりに水は湯気を出しておりゆっくりとポットに入っていき、団長がカポッとポットの蓋を閉じた。
「お待たせ、ハーブティーだよ。お口に合うといいんだけど」
「ありがとう」
「あ、ありがとうございます。すごいですね、魔法…ですか?でも、下級魔法じゃないような」
「どうも、あれは下級魔法というか…下級魔法に使う魔力を少なくしてるから生活魔法って言われているものだよ。まぁ、魔法に頼らなくても普通にできる事だから実用性はあんまり無いんだ。コントロールが緻密になるし、魔力がもったいないって人もいるよ」
(コントロールが緻密に…なら団長さんは本当にコントロールがうまいんだ。俺にはできそうにないなぁ、下級魔法で手一杯じゃ)
団長が入れたハーブティーをた 堪能していると、団長が話を切り出した。
「アリーナから聞いているんだけど、君は小さい頃から《全属性使い》と《上級剣術》のスキルを会得してるんだってね。」
「あっ、はい…」
(やっぱその話になるか…仕方ない、アリーナとヒスリーさんに小さい時教えちゃったからな)
「ずばらしね、天性の才だよ。《全属性使い》は稀にあると聞く、だが《上級剣術》を幼少期から手にしているなんて聞いた事がない。私やアリーナだってまだ《中級剣術》しか会得できていないのにね。」
そう熱く語る団長にアリーナも同調して話し出す。
「そうだ、だからもっとすごい事ができるのに全然しようとしないのはおかしいって、《火属性》と《水属性》と《風属性》以外の属性を覚えようとしないで!」
「おお、落ち着ついて。俺は魔力コントロールが下手だし、魔力もすくないって知ってるだろ。どっちみち下級魔法ぐらいしかできないって」
「だからって、可能性を捨てるのはダメだぞっ!」
そんな感じでワイワイとしているとアリーナより一足早く少し冷静になった団長が1つの提案をした。
「モトト君、今のステータスを教えてくれるかい?昔と今じゃいろいろ変わっているだろう」
「それいいな、団長!」
「は、はいっ!」
モトトが返事をした途端、バッと目の前に紙とインク瓶と万年筆が置かれた。準備が早い。
モトトはあわあわと紙にステータスを一部改変して書き込んだ。
ステータス
体力90 攻撃力100 防御力10 魔力60 速さ70
職業
魔法剣士
スキル
《全属性使い》《上級剣術》《ステータスチェック》《超動体視力》
「ほぉ」
「体力と攻撃力はすごいな、あと速さが上がってる。それに新たなスキルで《超動体視力》が追加されてるな。職業は私と同じ魔法剣士なのだな」
まじまじとステータスを書いた紙を見る2人にモトトはう〜と目を逸らした。
(だって魔力のコントロール練習してたから"ウィングカッター"で自身が吹き飛ばないように体鍛えたりとか、吹き飛んだり流されても周りを確認できるように特訓したら動体視力よくなったりしたんだもん…)
そんなモトトの事など気にせず、2人は話してくる
「幼少期からあまりステータスは変化してないみたいだね。」
「でも、やっぱ《上級剣術》はすごいぞ!今度手合わせしような、モトト!私の方が攻撃力は高いが、モトトは技量が私より高いからな、楽しみだ!」
「俺負けると思うよぉ」
「やってみなきゃわからないだろ」
そんな会話をしていると遠くでカーンカーンと音が響いた。窓から空を覗くと日はすっかり沈み、月が夜を照らしていた。
「おや、もうこんな時間だ。長い時間すまないね。もうお開きにしょう。」
「いえ、こちらこそ長居してすみません。」
「いやいや、引き留めていたのはこちらだからね。そうそう、モトト君は明日から訓練に参加して貰いたいのだか、明日の朝に君と同室になる子が来るので出迎えをお願いしたい、いいかな?」
「はい、構いませんよ」
「なら、お願いするよ。アリーナは少し残ってくれるかい?少し仕事を頼みたい」
「はい、団長」
「では失礼します」
モトトが一礼をして部屋を出ると2人は顔を見合わせた。
「団長、モトトは大丈夫か?」
「大丈夫だろうね。アリーナの言う、年下でも同い年でも年上でもどこか子ども扱いするような子なら」
読んでいただきありがとうございます。
悪いところがあればビシバシドドンと指摘していただけると飛んで喜びます。
御感想お待ちしております。