第零話 名無しの奴隷
ふと思いついたタイトルで書いてみました。
恋愛ありの作品にする予定なので緊張しています。なんせ恋愛ありの異世界小説を書くのは初めてなもので……。
──人は皆、生まれた時はとても小さな存在だ。
私は生まれつきただの奴隷。だから名前なんてないし、親と呼べる人もいない。
いつも私は小さな檻の中にいて、外の人達が私が必要な時だけ檻から出す。檻の中はとても窮屈で、とても暇。だけど今日は、いつもと少し違う日。
「九十九番、出ろ」
外の人が檻の鍵を開ける。檻から出ようと開いた扉に向かって外に出る。その後すぐに目隠しと手首に手錠を付けられる。
今日は私を買った人の元に向かう日。と言っても、これが初めてじゃない。何度か私は買われたことがある。
最初は大富豪の男の人に玩具として。二回目は同じような男の人のメイドとして。だから今回で三回目だ。でもどうしてまた檻にいるのかと言うと、単純に必要ないと売られたから。
私みたいな身分が奴隷の生き物は人によって買われ、また売られる商品だ。一度付けられた名前も売られれば無くなる。商品に必要な名前は種族名だけだから。
「こちらが奴隷ナンバー九十九番。いかがでしょうか」
「……ちとボロっちいが、まあいい」
「それと、この首輪はもしも命令とは違った行動した時にお使いください。首輪を付けた対象に死なない程度の電流を流せます。電圧の調整はこちらで行ってください」
しばらく歩かされた後に声の数が増えた。姿が見えないけど、声からして男性。それも中年くらいの。一体どんな目的で奴隷なんて買ったんだろう。
「代金は先払いで払った。そんじゃ貰ってくぞ」
「お買い上げありがとございました」
急に私の手が引っ張られる。多分さっきの中年くらいの男性が私を繋ぐ手錠の鎖を引っ張ったのだろう。
それがわかると、私は手が引っ張られる方向に向かって歩き始める。まだ目隠しが取られていないのでまっすぐ歩けても男性との距離がわからない。だから、私はその男性にぶつかってしまった。
「ちっ、奴隷の分際で俺に触れるんじゃねぇ!」
その瞬間、ドスッという鈍い音が辺りに響き渡った。頬を思いっきりグーで殴られた。当然の報いだ。
「俺が許可した時だけ触れるんだな」
「………」
「ちっ、無愛想な奴隷が」
「っ……」
また一発、今度は私が立ち上がる寸前に私のお腹に強い衝撃が来た。感覚が拳じゃないから多分蹴られた。でも、決して声を上げてはいけない。逆に気分を悪くしてしまうだけ。
それから私は歩き続け、また何度も殴られて蹴られ続けた。一体いつこの仕打ちが終わるのか。そんなことを考える余裕もなく、私はただひたすらに歩き続けた。
しばらくして目的地に到着したのか、男性の足音が止んだ。立ち止まったのかと思い私も歩みを止める。
「今日からここがお前の住処だ」
そう言って私の目隠しを外す。ずっと真っ暗だったから光が来るんじゃないかと目をゆっくり開ける。だがそんなことはなかった。何故なら今の時間帯は夜だから。
そして、生まれてから一度も切ったことの無い銀髪のせいで見えにくいが、今私の目の前にはボロボロの小屋が一つぽつんとあった。その小屋の大きさは人がギリギリ一人入れるか入れないかくらいの狭さ。元々小柄な私でもか窮屈なくらいの狭さだ。中からは何故かとても鉄の臭いがした。
「俺は結構有名な探検家でな。お前の役割は洞窟にある罠の解除。もちろん道具なんてない。お前自身の身を道具として使うんだ」
なるほど。そんな使い捨ての道具と同価値だから、こんなにも狭い小屋を私の住処にしたのか。普通の人なら文句を言うだろうが、私の場合まだ雨風を凌げる場所があるだけ有難いと思う。
そして多分この小屋から臭ってくる鉄の臭いは血の臭いだ。きっと前にいた奴隷の物だろう。
「もし十回以上の洞窟探検の中生きてたら解放してやるよ。サプライズだ!」
「っ……」
背中を靴の裏で押され、そのまま小屋へと倒れ込む。今着ているのがただの布一枚なので今の倒れ込みだけで腕と膝を擦りむいた。
「ま、精々頑張るんだな」
そして男性は私の怪我のことについては特に気にもせずに。地面に鎖で繋がっている首輪を私にした後にどこかへと去って行った。
結局、今回もいい人ではなかった。いや、そもそもこの世界にはいい人なんていないのかもしれない。だからこそ、こんな世界になっているのかもしれない。
……そんなことを考えても無駄だ。ただの現実逃避だ。今はもう、明日に備えて眠ることにしよう。少しでもいい夢が見られるように、神様にお願いしよう。
第零話を読んで頂きありがとうございます。
見てわかる通り、第零話です。物語で言うプロローグできな感じです。
実を言うと次とその次辺りの話は人によって胸糞悪い展開になってます。まあでも、また人によってはよくある展開だなーって感じになると思います。
まあ、これ以上教えるとネタバレになるかもしれないので少し黙ります。
意見やら感想などくれると大変嬉しく思います。
次回の投稿はこの話を投稿した約一時間後になります。