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それでも竜は・・・ ~幻想世界の就業日誌~  作者: 富田ホッケ
第一章 黄金の竜は、かく語りき(コガネノリュウハ、カクカタリキ)
6/23

1-2

 ・・・長々と、ずいぶん長々と、説教とも愚痴ともつかない話を聞いてやっと理解できました。

 要は最近の『竜』の扱いが酷い。もっと自分たちを敬えと・・・


 ・・・で、僕をこの世界に呼んだの理由は?まあここまで延々と愚痴(断定)を聞かされれば、なんとなく理由は分かります。

 異世界の住人の夢と『この世界』を繋げて精神を召喚する。それがどれ程の労力かは分かりませんが、ただ愚痴(断言)を聞かせるためだけにそんなことする程、このドラゴンも暇じゃぁ無いでしょう。・・・暇じゃないよね?


「要するに『竜』の地位向上のために働けと?」

「うむ、さすがワシが見込んだ人間じゃ!理解が早くて助かるわぃ!!!」

「・・・何故僕を選んだんですか?」

「・・・その理由(ワケ)は追々話してやろう・・・」


 如何にも大層な理由がある様な言い草ですが、なんという胡散臭さ。だいたい、大して面識もない人間が「君を見込んで」なんて言ってくる時は、『特に理由なんてない』か『禄でもない理由』かだと、相場が決まっているのです。


 それにしても、何と云うか・・・そこはかとなく理由が情けないと云うか・・・『竜』って、承認欲求が高いのか?


-------------------------


「まあ、そこは置いておきましょう。つまり僕は『竜族(アナタ方)』への敬意を集める為に『この世界』で広報活動の様なことをする・・・と?」

「そうじゃ!!!」

「では、雇用形態と雇用条件はどの様になるのですか?」

「・・・うン???」


 いやいや、そこで怪訝な顔?はオカシイでしょう。だって僕、寝てる間に働かせられるんですよ!?


「つまり、『わたし』はあなた方の為に労働をするわけです。幸い私は『あちらの世界』で生活していく為に十分な報酬を、労働の対価として頂いています。」

「・・・ふむ。」

「しかし『こちらの世界』で広報活動を行うと云う事は本来は就寝中、要は休息に充てるべき時間を割いて『労働』する訳です。」

「・・・・・・」

「であるならば、その『労働』に対する対価が必要になるかと思います。しかも、毎日眠る度に強制的に『こちらの世界』に来てしまうのだとしたら、流石に『精神的』にしんどいと云うか・・・」

「なるほどのぅ・・・」


 おっ、理解を示してくれました。まあ下手をしたらそれこそ「24時間働けますか~?」状態ですからねぇ。理知的な上司?で助かりました。


-------------------------


「要するに、この世界でワシらのために働く『理由』が欲しいと。」

「まあ、そんな所です。」

「よかろう、ではこうしよう。お主を呼び出すのは『お主の世界』でひと月に10日、お主が寝ている間の8時間。報酬は『この世界』で不自由なく生活できる程度の財。勿論、活動資金はこちらで提供しよう。」

「成程・・・ひとつ確認したいんですが・・・この世界には『魔法』とかありますか?」

「もちろん存在するわい。お主も『こちら』にいる間は使うことが出来るようになるぞぃ!!!」


 ドラゴンがビシッ!と親指を立てそうな『したり顔』で断定しました。

 ・・・魔法が使える!!!「いい歳こいて何を言ってるんだ」とか言わないように。大切でしょ?魔法。

 ここがどんな世界で、どんな魔法が存在するのか?分からないことだらけですが、ワクワクするでしょ?魔法が使えるって!!!

 それでも少し考える。月に10日間か・・・それってどうなんだろう?少し不安なペースかも知れません。

 学生時代は徹夜でバイトの掛け持ちなんかもしましたが、いくら若いつもりでも今年で36歳。昔の様にはいかないだろうな~~~


 しかし、『竜』の言葉は、僕の不安を嘲笑うように続けられました。


「・・・・・・・・じゃ。」

「・・・・・・?」

「Eじゃ。」

「??????」

「この世界の平均は、『E』じゃ!」

「ま、まさか・・・」

「そうじゃ!この世界の女子(おなご)は、平均で『E』なのじゃ!!!!!!!」


 グウゥゥ!なんという破壊力!!なんと官能的な響き!!!

 『平均がE』!その言葉が奏でる魔法の力!!まるでビロードのような艶やかな耳触り!!!魅惑的、いや蠱惑的なまでに妖しく輝く魔性の言霊!!!!!!

 エレガントでエクセレントでエキサイティング!!!それが『E』!!!!!!

 しかもそれが『平均』だとぅ!ファンタジスタもグローリアもヘブンまでもが射程圏内だとうぅあぁぁぁ!!!!!!!


 -------------------------


 ・・・悲しきかな男の(さが)。いや、むしろ抗い難い人の業と云うべきか・・・

 そこに罠がある。だが、退くわけにはいかない。男には、何があっても退いてはいけないときがあるのだ・・・!!!


 いま、高らかに宣誓しよう。


「佐々木 大和。謹んで、辞令、拝命致します。」

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