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「夢?」
「そう、夢です。」
怪訝?な顔でこちらを見下ろす金色の竜に、導き出した結論を伝える。だってそうでしょ?見たこともない風景。突然現れた竜。ひらひらと舞い踊る妖精たち。
どのひとつをとっても『現実』を肯定できるものがない。むしろ『夢』という結論に至らないほうがおかしい。
やれやれ、ファンタジックな光景に若干テンションがおかしくなりましたが、そうと分かれば話が早い。
『眠くない』・・・そりゃそうだ。だって『夢』のなかだもの。ドラゴンだって妖精だっているさ。だって『夢』だもの。きっとペガサスやユニコーンもいるし、エルフやドワーフ・勇者や聖騎士・魔法使いもいるのでしょう。
何故なら『夢』なのだから・・・。
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「・・・夢かの?」
「夢じゃないんですか?」
ヒリヒリと痛む額をさすりながら『竜』を仰ぎ見る。デコピンされました。ええ、もう一度言いましょう。ドラゴンにデコピンされました。
指一本が僕の体ほどもあるドラゴンのそれは、果たしてデコピンと呼んでいいんでしょうか?約3メートルほど後ろの茂みまで吹っ飛びましたが、確かに痛むのは額だけです。
『痛み』があるなら『夢』じゃない・・・?
まあ、一般的にはそう言われてますけど、『夢』のなかって『痛く』ないの?夢のなかでデコピン喰らって、痛いと思ったら『痛い』んじゃないの?まあ、色々経験則的なあれやこれで・・・
そういえば、やたらと『眠い』夢を見たことがあるような・・・夢のなかで蝶々が云々は、荀子だったか荘子だったか・・・ん?デカルト・・・か?
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「まあ、半分正解のようなものじゃ。」
「はんぶん・・・?」
つらつらと湧き出る疑問に答えが見いだせない僕を見て、『竜』が続けます。
「ここは、お主が生きてきた世界とは違う現実世界。じゃが、お主にとっては夢のなかに居るようなモノ。・・・つまりそう云う事じゃ。」
・・・いや、全然分かんないですけど。あれかい?僕は寝ている間に誘拐でもされたのかい?でも僕は夢を見ているようなモノ?じゃあココは僕の夢のなかなんじゃないの?でも現実の、でも違う『世界』に居る?
・・・分かんないですけど~。超わかんないですけど~~。泣いちゃいそうなんですけど~~~。
「要は、お主の『夢』をこの『世界』と繋げて、お主の『意識』だけ、こちらの『世界』に持ってきたのじゃ。」
さも当たり前のように『竜』は言います。
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・・・それはそれは突然に。ある日ホントに突然に。
僕は、いや僕の『精神』は、『異世界』にやってきました。姉さん事件です!ええ、僕の『意識』はいま、異世界にきてしまいました。これは、新手の、誘拐事件なんじゃないでしょうか・・・
・・・笑えない・・ヨ・・・・・・?