従兄襲来02
お父様とお母様の許可を貰いに、スティーブは客間を後にした。
なんなんだ、と声を大にして叫びたい所だけど、レディとしてはそんな事をしたらお家にキズが付く。
眉間に皺を寄せてしまうのは、仕方ない事よね?
「アリス様、可愛い顔が大変な事になってるよ?」
「…シャノン。スティーブ兄様は一人でお父様たちの所に?」
扉からヒョコッと顔を覗かせたのは、シャノンだった。
…今更だけど、家の執事とメイドは美男美女揃いよね。
そう言えば、アンリの妹のアンナも美女だった。…家で雇われないかな。てか、働いて。
「お嬢様、スティーブ様が来ているそうですが、本当ですか?」
慌てて来たのは、驚いた事にルーイだった。
私がスティーブを嫌いなのだと、ルーイに話してあったから。
ニコニコ笑顔の裏に、なにか隠してる。 そんな気がしてならない。
「…それにしても、胡散臭い笑顔ですね。十歳の筈なのに、中身は大人なのかって違和感があります」
あぁ、気付く人は気付くのね。
私だけではなかったみたいで、良かったと思う半面、何故そんな態度を取っているのか。
「…シャノン、ちょっと付き合って?」
燕尾服の裾をちょんと引き、シャノンに付いて来て貰う。
確認をしなくちゃいけない、私の事を…。
「私には、なにも感じない?」
率直に聞いてみた。シャノンははぐらかすような聞き方より、素直に聞いた方がちゃんと答えてくれるから。
「んー、アリス様は子供のような大人のようなって感じがするんだよね。あっ、胡散臭い笑顔は見た事ないから。スティーブ様のような子は、子供とは言い難い。寧ろ、大人と言われた方がしっくり来るよ」
(ふーん、シャノンてば見てる所は見てるのね)
「アリス様がそんな事を聞くって事は、自覚があるんてしょ?」
自覚? ありまくりだね。
子供の姿ではあるけど、中身は大人だからね。
シャノンには答える変わりに、ニコッと笑っておいた。
「アリス様、子供のフリはしなくて良いよ。俺の前ではね。姉さんや義兄さんには通せても、俺は見抜いちゃったからね。俺以外で知ってるのは、ルイズ爺とアイリ婆、後はルーイでしょ。あの慌てぶり、アリス様がなにか話してるからでしょ?」
シャノンの人に対しての観察力は凄いわ。
シャノンも仲間に入れちゃおうかしら?
シャノンが仲間に入れば、私の為に動いてくれるだろうし。
シャノンにナイショ話をする為に、屈んで貰う。
私の事を話すんだから、私の為に尽くしてよね?
…なんちゃって。