閑話 アリスお嬢様との出会い
じいちゃんとばあちゃんに連れられて、将来俺が使える事になるお嬢様とやらを見に来た。
その時の感想、一言で言うと可愛い。
毛先に少しクセのある綺麗な金髪、ぱっちりとした二重にサファイア色の瞳、長めの睫毛、子供のわりにはスッとした鼻筋に、さくらんぼのように赤い小さな唇。
人形とも見間違うような容姿の、小さな女の子。
「どうだ、可愛いであろう?」
「アリス様と言って、三歳になられたばかりなのよ」
「じいや、ばあや、そのおにいちゃんはだあれ?」
ばあちゃんがアリスに説明をして、じいちゃんが俺にアリスの事を説明してくれた。
「アリス様とお兄様方は、仲があまり良くないのだ。だから、お前が面倒を見て差し上げなさい」
(俺が、アリスの…?)
男の俺が、アリスを見られると思ってるのか?じいちゃんは。
「わたし、アリス。よろしくね、ルーにいさま!」
とびっきりの笑顔で俺を兄様と呼ぶアリス。
キュン。…なんだこれ、ときめいたぞ。
アリスの可愛さに、ときめいてしまったぞ。
じいちゃんを見ると、アリスの可愛さに見悶えている。
「…あー、アリス。俺の事はルーイで良いからな」
きょとんとした顔で頷く姿も、また可愛らしい。
「アリスのことも、アリスってよんでね!ルーイ!」
「アリス様、呼び捨てを許すなど…」
「いいの!じいや、ばあや、ルーイ、おにわいこ!」
小さく柔らかな手が、俺の手を取る。
庭に行くと、調えられた赤バラたちに出迎えられ、その圧巻さに驚いた。
そんな俺にもっと驚く事を言ったのは、紛れもなくアリス本人だった。
「ルーイ、わたしだけのひつじさんになってね!」
急に言われて理解出来なかったが、専属執事になれと言う事なのか?
「まぁ、アリス様…。“ひつじ”ではなく、“しつじ”ですよ。ルーイ、今日からビシビシ鍛えるかな!」
「じいちゃん、羨ましがるなよ」
良いな良いな!と思ってるのバレバレだかんな。
アリスは嬉しいのか、明るい笑顔で俺を見ている。
…はぁ、執事になる気はなかったんだけどな…。
アリスがこんな顔をしながら俺を見るんだ、少しくらい頑張ってみるのも良いか。
「じいや、ルーイにやさしくしてね!アリス、ルーイがだいすきだから!」
…あっ、じいちゃんのオーラがメラメラと燃えてる。
ばあちゃん、笑ってないでじいちゃん止めて。
ヤキモチ妬いてんのバレバレじゃねぇか。
この日から俺はアリスに惚れ、じいちゃんのスパルタな日々が始まったのは、言うまでもない。