五歳の誕生日02
誕生日会も早めのお開きとなり、私は自室のバルコニーから外を眺めていた。
明後日には、親戚のお家に行って久々の顔合わせするみたい。
そう考えると、憂鬱で仕方がないのだけど。
私はまだ五歳の子供で、聞き分けの良い子としての設定を、貫かなきゃいけない。
じいやとばあやには、バレてしまって…甘えまくっているけれど。
…一番バレたくなかったのは、じいやとばあやの孫に当たる男の子。
名前はルーイで、私の五つ年上。
じいやとばあやの孫と言う事で、この屋敷に出入りを許されている。
この家の、未来の執事候補だとオースティンが笑いながら言っていた。
…だって、オースティンとサラの子供でもあるから。
シャノンにしてみれば、可愛くない甥っ子…とでも言うのだろう。
彼奴は生意気にも程がある!
って憤慨していたくらいだもの。
(…でも、何故か憎めないのよね…)
そりゃ…私にも生意気な口を叩くけれど、それは私が五歳の女の子としか知らなかったから。
私の中身を知ってから、ルーイは少しだけ私に対する態度を変えた。
「――また考え事をしてるんですか?お嬢様…?」
開きっぱなしの扉をノックしながら、片腕を組んで此方の様子を伺っているルーイ。
…イケメンだからか、そんな姿も絵になる。 十歳なのにね?
「おはよう、ルーイ。今日は早いのね?」
「質問に答えてませんね。…何を考えてた?」
真剣な表情のまま、私の目を真っ直ぐに捉えるルーイ。
十歳の子供が、こんな表情をするなんて…。
「貴方の事を考えていたのよ、ルーイ。私の事を知っているのは、じいやとばあやを除ければ、貴方だけだから。サラとオースティンに話すと思っていたけど、話さなかったみたいね?」
私の答えに少し表情を綻ばせるけど、すぐに怪訝な表情に変えてしまった。
「…俺は、お前からすれば口の軽い奴に見えていたのか?」
(あらあら、口調が戻っちゃってるわよ? もう、仕方のない子ね…)
「そうじゃないわ、信用してるもの。…けど、私の話を信用してくれた事に驚いてはいるわ」
あんな途方もない話を、じいやとばあやだけでなく、ルーイまで信じてくれるなんて。
私からすれば、信じられないもの。こんな話。
「アリス、眉間に皺が寄ってるぞ」
眉間の皺を指で指され、ぐりぐりと遊ばれる。
…ルーイは豆腐の角で良いから、頭を打てば良いんじゃないだろうか。
イケメンなんだから、そんな事しないでよ。
おばさん勘違いしてしまうし、照れてしまうじゃないの。