聖なる乙女の従騎士（エスクワイア）

乙女騎士。

それは存在するだけで生命と大地を蝕む、邪なる瘴魔を討滅し生き延びることのできる、唯一の存在。
可憐にして清純を定められた乙女騎士には、その身を護る従騎士が必要だ。
かつて瘴魔を殺し、その呪いを全身に受け顔の半分が変色し、親兄弟––––––果ては生まれ育った村、そして将来を誓い合った幼馴染にすら捨てられてしまった少年『ヴェノ』はとある乙女騎士に助けられ、いずれ乙女騎士の従騎士になることを夢見た。

それから数年後、『黒曜の地』アラクシャーシに移り住み、従騎士として仕官を願うヴェノは身に受けた呪いのせいでどの乙女騎士からも避けられてしまう。
最終手段として、己の腕を見せようと剣技大会に出ることになったヴェノはその決勝で一人の嫌われ者の乙女騎士と相対する事となる。

彼女の名は『リアライラ＝アストライエ』。

出自と性格のせいで従騎士に恵まれなかった彼女は、ひょんなことからその身を救ったヴェノを従騎士として雇い入れた。

呪われたヴェノと、嫌われ者のリアライラ。

誰もが鼻で笑い指を指した二人が、やがて世界を救い伝説を遺す事になるとは、この時––––––当の本人達ですら思いもよらなかっただろう。