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私と貴女は同じ

作者: スパゲチィロ

第一作目

ぼくが彼女と初めて会ったのはぼくがまだ20だった時だ


ある日、友人にクラブハウスに行かないかと誘いを受けたがぼくには妻もいたのでご丁重にお断りを入れたのだが本当は自分よりもスペックが低い人を連れていれば少しは女を捕まえ易くなるのだと本音を言ってくれたのに免じて酒代全額負担と日をまたぐ前に帰れる保証を取って友人のナンパに付き合ったのだ


ぼくは学生時代から1人が好きだった

昼休みは仲良くなった生物の先生から鍵を借りて生物準備室に篭っていたぼくは外から聞こえる木々の小音を耳に本を読むのが好きだった

友人とのくだらない楽しい会話よりも今でいえばどんな金で買える気持ちいい行為よりもだ

この部屋の鍵を手に入れるために先生を教授なんて言って擦り寄ったのは否めないがまぁいい

友人もこの頃クラスメイトだったやつだコイツはコイツでコネクトが多いので助かるのだった


「貴方なかなか面白い人ね」

クラブハウスの隅の席で騒がしい周りの席を他にし彼女は綺麗な孤立を保っていた

私は誰かと居るよりも1人でいるのが好きなのと彼女が言うと友人はクラブでそんなこと言っても説得力ないだろとゲラゲラ笑っていたがぼくの目は光っていたぼくには彼女の言うことが本当なのだと分かった彼女はぼくと同じなのだとぼくの中のぼくがわめき散らす

ぼくの頭は彼女でいっぱいだった、ドーパミンが大量に分泌され快感を感じていたら気づいたら自分で酒代を払い涙目の友人を置いてクラブの2階の個室で行為に至っていた


ぼくは快楽に溺れること無く互いについて話していた

「ぼく達は同じだ」

「貴方はどうしてそう思うの?」

彼女は目を細めて言った

「ぼく達は1人が好きで本が好きで知識が好きだ」

「そうね、つまり貴方はそのバイアスに従って私に近づいたのね」

そう言われると突き放されてる気しかしないし下も萎えそうだ

「まぁそうかな、でも人を好むって言うのはそういう事だろ」

「そうね、でもそれは貴方の考えであって絶対の考えじゃないわ、私もそこは同感だけど」

彼女は少しだけへそ曲がりだ同感なのに否定したがる、ぼくと同じだ、ぼくは面白くなって笑っていた

「ねぇ一つ教えてあげる、私と貴方は同じかもしれないけど違う点があるの、それは例えるなら奥さんがいるかどうかかしらね」

この言葉がぼくの心に引っかかり行為の後も考えていた、彼女には結婚しているともしてないとも言っていないのだ

答えを彼女に求めることも考えた、がしかしぼくはぼくに賢者であるというプライドを持っている以上彼女に聴き続けてるのは嫌悪感があり同時に彼女に怠惰であると思われる事への恐怖で頭を悩ませるのは想像に硬くない


それというものぼくの中で彼女の姿かたちが更に分からなくなって行った、どうやら本当に心から萎えてしまったようだ、今思えばぼくは人が好きじゃない無論そこに女性という性別が含まれるのは至極当然だ

そんなことを考えて月が経ち彼女のことも意識の外へ追いやられていった時、道端でこんなフレーズを耳にした

「着ている服を変えて新しい私へ」

よくありそうな洋服店の宣伝、ぼくはその〈新しい私〉と言う言葉によって気づかされた


私 それは彼女であって彼女でないのだまさに貴女は物語〈フィクション〉だった

まるで学生時代の小テストの答え合わせをするかの如くぼくは友人に連絡を入れた

案の定だった、ぼくは正しかった


ぼくはその日から人とよく話すようになった、今までのぼくはもういない今は今のぼくだ過去とはまさに過ち、上手く言ったものだそのお陰でぼくはもう彼女を忘れないだろう忘れられないだろう誰にも理解どころか知ることも出来ないこの気持ち…

まるで今までの自分を知っている新しい誰かのようにぼくは生きていく

「最近元気になったんじゃない」

妻がそんなことを言ってきた、前までうちの嫁がなどと言って愚痴や文句を吐いていたが案外悪くない嫁だなと思う

「そうかな?でもまぁ会社でも上の人に気に入られたからさ嬉しいよ、うん嬉しい」

「そう嬉しかったのね、じゃ仕事頑張って」

ぼくは会社へ向かった

家の鍵、車の鍵、仕事に必要なバッグ

そしてあの夜1銭も減ってなかった財布を持って

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