五話
(ФωФ)
(アイリス視点)
俺が悲鳴のした所の上空に着くとそこには、今にも襲われそうな二人の人影と襲いかかろうとする黒い大きな虎の魔物
人影の片方は怪我をしているのか、木に寄りかかってぐったりとしている。
もう片方は、身長に合わない戦槌を構えて怪我をしている方を守ろうとしているようだ。
そんな二人組に対して黒い虎は余裕があるのか、その動きに隙が見てとれる。
(あの虎、殺戮を楽しむタイプか、全身を邪気で覆われてるな。)
俺は、アイリスの能力の一つである《天瞳》を発動させていた。
《天瞳》見た相手の今までの行いをオーラとして見る事ができる。
黒い虎の全身には暗く赤黒いオーラがまとわりついて、なかなか気持ち悪い状態に成っていた。
(あんなオーラを纏うのはたいていが弱者をいたぶるのが好きなクソヤロウだな。)
ゲームの時にも負のオーラを纏っていた者は大抵ろくでもない奴ばかりなのだ。
そんな黒い虎に対して二人組は、怪我をしている方のオーラは弱ってはいるが全てを包み込むような優しげな金色のオーラ、武器を構えた方は攻撃的な紅のオーラを纏っているが、その中には傷ついた相方を心配している慎ましやかな銀のオーラが隠れている。
(あの二人組は、綺麗な色を纏ってるな、この危険な状況でなお相方を気遣いあっている。)
二人組の清んだオーラに少し当てられていると、黒い虎は二人組めがけて突撃しようとするのに気ずいた。
(あの虎もどきにあの二人を殺させはしない!)
俺は突撃してくる黒い虎と武器を構えた人物の間に降下し、虎に対して右手の人差し指でその突撃を受け止めた。
ピタッ!
「!?」
出来ると思って人差し指だけで黒い虎を止め、少しの殺気のようなものを込める。他の魔物と戦った際に試した時には睨んだだけで死んだ者もいたのだが、この黒い虎は硬直するにとどまったようだ。
目前の黒い虎を見ていると、後ろの人物が声をかけてきた。
「あ、あなたは一体?」
その声は可愛らしい少女のものであった。どうやら女の子は、いきなり目の前に現れた俺を警戒しているようだ。そりゃ空からこんな真っ黒な奴が降りてきたら警戒するのは当たり前か
「私か、私はただの通りすがりの一般人だ。」
少女の問いにとっさにアイリスの口調で返した。
アイリスは物静かで口数が少なく軍人のように仕事をこなすという設定なので口調も男口調を基準にしている。
(といってもただの人見知りで他人と話すと自然と口調が固くなるんだけど、)
(ルナマリア視点)
目の前にいきなり現れたその人物は、全身を黒いローブに包み顔すら見えない、身長は姉さんより高く190センチ以上はある。そして、その声は男性のものであった。
「ただの一般人って!その指一本だけでフォレストタイガーを止めているのを見てただの一般人だなんて思えるはずが無いでしょ!」
男は、自分がただの一般人だなんて言ってるが、あのフォレストタイガーを、しかも、他のフォレストタイガーよりも明らかに異常な個体をたった一本の指で止めるなんて事が一般人にできたら冒険者はいらないのだ!
「………?それもそうか。なら訓練をした、ただの一般人だ。」
「だから!それもおかしいわよ!」
さっきまで命を捨てる覚悟をするような緊迫した空気が霧散して後に残ったのは目の前の怪しい人物と未だ人差し指を当てられて止まってるフォレストタイガー、そして、力の抜けた私と気を失った姉さんがいた。
(アイリス視点)
(?この娘は一体どうしんだ?怒ったと思ったら何か疲れたように肩を落として、しかし小さいなちゃんと食べてるのかな?ローブで顔は見えないから健康なのかわからないなぁ。)
アイリスはアイリスで何か勘違いをしてた。
こんな緊張感が抜けた空間で次の行動を起こしたのは無視されているフォレストタイガーであった。
彼には自分は強者であり今もその自信に揺らぎは無い、なのにどうだ?
今の自分はたった一本の指でまるで体の自由を、いやその命すら相手に握られたかのように動かないでわないか、こんなのを彼には認められない!認めてしまえば己はただの負け虎になってしまう。そんなのは森の蹂躙者であるというプライドが許さない!
フォレストタイガーは地面を激しく叩きその反動で後方へ下がり、こちらに対して殺意をむき出しにしている。
「なるほど、あれを受けて動けたか。他の魔物で試したらだいたいは何も出来なくなるか絶命するんだがな。」
黒い虎が俺の殺気(ミクロ単位ほどを)を受けて動いたことを感心していると、
「注意して!あのフォレストタイガーはかなりのスピードで突っ込んでくるから!」
後ろの少女から黒い虎の情報教えてくれるが、実際あの程度のスピードならこちらに突っ込んでくる来るまでにその体をバラバラにするなんて手を上げるより容易い。
(やっぱりあの娘は優しい性格のようだ、そんな娘をこの虎もどきが襲おうなんて)
「許せんな(元から許さないけどな)」
俺は、《原初の蔵》から一本の槍を取り出す。
その名は、
「【呪槍・怨念写し】」
その槍は長さが150センチほどで穂先は黒く柄は紫の短槍、
グル!? 「!?」
いきなり何も無い空間から出てきた槍に前の虎と後ろの少女は驚いているようだ。
「貴様のような獲物をいたぶり殺してきたようなヤツにはこの槍をくれてやろう。」
そう呟いた瞬間、俺はすでに黒い虎の懐にいた。
距離にして40メートルほどだが、そんな距離は意味は無いものと同じ
虎がこちらに気がつくよりも速く右手の短槍をヤツの横っ腹に突き刺す。
ドス! !ガァーーー!?
黒い虎はいきなりの痛みに動揺し俺を探すが、その時には俺は元の位置に戻っていた。
ギャオ? グルァグルラァ!
しかし.その痛みはすぐに無くなったのか、ただのこけおどしだと思っているのか、その態度は余裕を取り戻していた。
そもそもこの短槍には相手を物理的に傷つける目的の物では無いため痛みも脳の錯覚が起こしたものなのだ。
なぜならこの短槍の真の力は槍に宿る能力にある。
ガァ?!ギャオ?!ゴァーーー?!
突然、黒い虎は苦しみだしその場にのたうちまわる。
「貴方、いったい何をしたの?」
少女は黒い虎の突然の様子に気になったのか聞いてくる。
いきなり黒い虎が苦しみだしたのは、この短槍の能力にある。
【呪槍・怨念写し】
対人宝具
レア度 B-
能力
この槍を刺したモノに取り憑いている怨みある怨念に力を与えその怨みを果たさせる。
つまり、あの虎のように殺戮を好み酷いおこないしてきた奴はその報いを受けながら死んでいくのだ。
(フォレストタイガー視点)
彼は今まで数多の弱者を殺してきた、それは己が強く弱者を虐げるのが当たり前だと思っていたからだ。それがどうだ、今の自分はその弱者に殺されそうに成っている。
ある者は人の姿を、ある者は獣の姿で、今まで殺してきた者の姿で襲いかかってくる黒影どもの攻撃が当たるたびに体から何かが抜けていくのを感じる。
グギャーアー!?
その影どもは、時間をが経つほどに数が増えてくる。そして、数が増えるということはその分何かが抜けていくのが早くなる。
グゥ………グル…ル……
さっきまでの威勢は見る影もなくその大きな体はどんどん衰え、まるで死にかけの老体になっていた。
カヒュー………カヒュー………
彼が死に際に見たのは最後に殺したフォレストタイガーの親子だった。
レア度 G 誰にでも入手可能な物
薬草や布の服など
レア度 F ー
レア度 E ー
レア度 D 下級のアイテムや武具
レア度 C 中級のアイテムや武具
レア度 B 名刀や名剣など名のある人物の手で作られた物や上級ポーションなど
レア度 A 魔剣や魔法の力が宿った優れた武器防具
AA 一つレア度が上がるたびに能力が上がる
AAA
レア度 S 神話の神器や伝説の武器防具やアイテム
SS 一つレア度が上がるたびに能力も上がる
SSS
レア度 EX このクラスの武器や武具は神ではなく星によって鍛えられ物