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5:私、気になりますっ






 「・・・結構、重たいんだな」


 しっかりとした重量。

 ひんやりとした手触りに、寒々しい雰囲気のある存在感。

 色々な角度から観察し、イジりまくる。


 「ふふふ、賭は私の勝ちのようだな、世界のシステムよっ!ざぁま~みろだっ!にょはははは・・・」


 初代ガン○ムのラストシーンばりに銃を空へと掲げて叫び笑う。

 そして中学生男子がモデルガンを手にしたら行うであろう恥ずかしい構えを一通り実行してみる。


 「・・・なかなか悪くない」


 むしろちょっといいかも・・・

 我ながらタバコとハンドガンの組み合わせは最強だと思う。

 無意味なポージングに納得したところで、そろそろ実践へと意識を向ける。


 「ちょっと、ドキドキする・・・」


 試し撃ちである。

 ブローバックを行いコッキングするが、弾切れのためスライド上部が戻らない。


 「むっ、弾は無いか・・・だが想定内っ!」


 銃を選んだ時点で、そんな事態は百も承知。

 あるのだよ、ワタシには・・・

 ふははは


 「・・・リロードッ!」


 具現化スキルと補充スキルの夢のコラボレーション。

 この閃きにより、強気なスキル選択を選ぶことが出来たのだ。


 デザートイーグルを片手に[リロード]を使用してみたが、特に変化は感じられない。


 「あれ?・・・」


 これは想定外。

 弾丸が補充されない。

 ヤッベェー・・・

 ここでつまずけば、ただのモデルガンである。

 焦りつつ何度もリロードを使用してみるが変化はない。


 「あっ、もしかして」


 失念していた。

 グリップ部分にある、マガジンを抜き出してからリロードを掛けてみると、一瞬の発光の後に弾丸は補充された。


 「ふぅぅぅ焦ったぁぁぁ・・・マガジンに直接掛けないと弾丸は補充されないのね。ま、けどこれで、予定路線に戻れる訳だ」


 ドキドキしつつ、20mほど先にある木に向かって両手でしっかりと構えてみる。


 「・・・いくぞ」


 バァァンッッッ!


 もの凄い破裂音とともに、想像以上の衝撃が両腕を襲う。


 「痛ってぇぇ・・・ヤッベェな、デザートイーグル」


 弾丸は木には当たっていない。

 数m横の地面へと着弾し、巻き上がった腐葉土の激しさからその威力が推察される。


 正直なところ、ビビった。

 改めて自覚すると、ガタガタと体が小さく震えだす。


 オレはミリタリーや兵器に詳しい訳ではない。

 マンガやゲームの知識で、威力の強いハンドガンと言えばデザートイーグル50AEかな?くらいである。


 ただ、そのルックスが好きで選んだに過ぎない。


 「こりゃ、もっと扱いやすい銃にするべきだったかな」


 一度、岩の上にデザートイーグルを置き、タバコに火を付ける。


 「ふぅーー・・・けど、手段は手に入れた」


 生き残るための手段。


 タバコを吸いながら、先ほどの轟音や衝撃を頭の中で反復させ、イメージトレーニングをする。


 「しゃ、やるかっ!」


 タバコを投げ捨て、覚悟を決めて再度デザートイーグルを握りしめる。

 また同じ木を狙って射撃をするが、なかなか当たらない。

 繰り返し射撃練習を行う。

 轟音と衝撃の痛みに耐えながら、その耐性をしっかりと体に馴染ませる。

 リロードを何度も掛け直し、試行錯誤をしながら自分の得た力を理解していく。



 「だぁぁ、限界だっ!」


 10分ほど射撃練習を行った。

 キィィィンと響く耳鳴りが酷い。

 両腕もビックリするくらい酷使してしまった。

 超痛い・・・


 ペチャッとその場に腰を下ろし、感覚の薄い痺れた手で時間を掛けてタバコに火を付ける。


 視線を的にしていた木へと向ける。

 直径1mくらいの木は、見事に倒れていた。


 「ふぅー・・・威力だけはスゲーな・・・」


 短い練習だったが、分かったことがある。


 全然当たんねぇ・・・


 反動スゲーし、無駄にいろいろ力強い。

 片手撃ちなんてとんでもない!

 けど、的の木に当たった時には、貫通というより破裂といった印象だった。


 「・・・あれは、ちょっと快感かも」


 やっぱりオレも男の子だ。

 射撃の快感を得るのに、このデザートイーグルの威力は十分な高揚感をオレに与えてくれた。


 「ふぅーー・・・・・おや?」


 ふと、視界の隅にゴブリンを発見する。

 森の切れ目から、緩やかな草原の中腹にいるオレを観察している様子だ。

 よく森の切れ目を観察すると、結構な数のゴブリンが隠れてオレを見ていた。


 「げっ、そらそうか。あんだけ轟音響かせてたら」


 ヨッコイショと立ち上がり、森から離れるようにゆっくりと草原を上がっていく。


 不思議と危機感はない。

 数十匹のゴブゴブに襲われれば、ただでは済まないだろう。

 けど、手段を手に入れた余裕なのか、なんとかなりそうにも感じている。

 むしろ経験値として、積極的に狩るべきなのかもしれない。


 「ふぅー・・・気分じゃねぇな」


 んぅぅっと、体をほぐしながら、ゆっくりと小高い草原の頂上へと歩みを進める。


 不思議とゴブゴブ共は追っては来なかった。







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