41:耳の裏も洗えよ
「な、なぜ、うぬが・・・ま、まさかっ!殿、殿はご無事か!?」
痩身で鎧武者の格好をした赤鬼、六道衆[剣豪羅刹ビシャモンテン]は、本丸より堂々と現れたアズベルに驚愕していた。
本丸は深い堀に囲まれており、この橋だけが唯一、出入り口に通じる通路だ。
ビシャモンテンはクウカイ様を出迎えるべく、橋の先で待機していたのだが、そこに現れたのは君主ではなく、捕らえたはずのアズベルだったことに理解が追いついていない。
「それはご自身で確かめて下さい。けど、先に先日の続きをしませんか?今度は邪魔者もなく、一騎打ちで」
橋の中央で止まり、巨大な盾に収納された剣を抜くアズベル。
先日の夜襲の際、均衡した二人の勝負はクウカイの言葉により中断されてしまった。
アシノミヤ王国最強の騎士アズベルは、六道衆最強のビシャモンテンとの決着を望んでいた。
その提案に、困惑していたビシャモンテンも冷静さを取り戻して、不敵な笑みを浮かべながら腰に携えた二振りの長刀を抜き放つ。
「いいだろうっ!最早語るまい・・・参るっ!」
瞬間移動のように姿が消えるビシャモンテン。
それと同時にアズベルも流れるような動作で、舞うように動き出す。
ガキンッ!と大きな音とともに、盾と長刀が重なり、つばぜり合いのように至近距離でにらみ合う二人。
そして示し合わせたかのように、同時に脱力して一歩下がる。
「「 ハアァァァッ!! 」」
二人の鬪気が同時に爆発した。
それを合図に超高速の熾烈な打ち合いが始った。
演奏のように不規則に響きわたる剣戟音。
橋の両側で見守るファウスト王子とビシャモンテンの部下たちは、その様子に飲まれてしまい、身動きすら出来ずにいた。
均衡した二人の実力。
永遠に続くとも思えてしまう、二人の打ち合い。
だが、終結はすぐにやってきた。
「フ、その若さでここまでの研鑽、見事なりっ!だが、我は使命を優先する・・・[雷刀ヌエ][嵐刀クラマ]っ!顕現し、我が敵を討ち滅ぼせっ!!」
大きく飛び退いたビシャモンテンは、二振りの長刀を左右に広げ、自らが使役する大妖怪を召喚して一気に勝負をかける。
暗雲をまとい、雷をほとばせる獣が、弧を描きながらアズベルへと迫る。
同時に反対側より、竜巻をと化した天狗が、同じく弧を描いて突き進む。
そして正面ビシャモンテン自らも、光を失った長刀を前面へと構えて、アズベルへと強襲する。
「穫ったぁぁ!!」
三方向から同時に迫り来る驚異に対して、アズベルはため息を一つ。
「ハァ・・・剣術だけで勝負したかったのに、仕方がない、[スティングマ]セカンドフェイス解放」
ボソッと呟いたアズベルの言葉に反応して、衝突する三つの驚異を弾き飛ばしながら現れた巨大な翼。
白と黒の両翼は、アズベルを包み込むように顕現する。
「これだと、つまらない結末になってしまうんだ。師匠より譲り受けた力だから、使いたくはなかったんだけど」
その秘められた神気は、明らかにビシャモンテンが使役する大妖怪とは桁が違っていた。
「ヴァーチャ・ロー・・・」
開いた両翼は無数の光弾へと変化して、屈折したレーザー光線のようにビシャモンテン達を襲う。
体勢を崩しながらも長刀で光弾を打ち落とそうと対抗するが、光弾はその刀すらを貫き、ビシャモンテンや大妖怪たちを呆気なく消滅させてしまった。
「神や魔神に対抗する師匠の力です。スミマセン、技量でアナタを追い抜きたかったのですが・・・けど、死ぬわけに、は、、、ボクも」
ドサッと、その場に倒れるアズベル。
完全なマナ切れだ。
アズベルは師匠ルシフェルより三枚の翼を授かっている。
堕天したとはいえ、元大天使長。
その力は最も神に近く、人族のアズベルが扱うには二翼だとしても過ぎた力でしかない。
「アズベルっ!」
その様子に慌てて駆け寄るファウスト王子。
それに反応して、ビシャモンテンの部下達もこちらへと走り出す。
その数、15体。
オークやオーガで構成された中隊は、隊長ビシャモンテンの敵を討つべく決死の覚悟で突っ込んでくる。
「クソッ!このままでは・・・」
いち早く到着したファウスト王子は、気を失ったアズベルを守るため、津波のように押し寄せる鬼達へと対抗する。
一体、二体と、ギリギリのところで打ち倒すファウスト王子。
だが、もう時間の問題だ。
その質量や勢いを、これ以上耐え凌ぐ技量は王子には無かった。
「くっ、これまでか」
お約束ともいえるセリフが無意識に漏れ出た、その時。
===ズガァァァンッッ!!===
鬼達の後方で、爆発にも似た衝撃波が起こった。
「フェルディナンド卿っ!ヴァーミッド団長っ!」
部隊後方より、凄い勢いで鬼たちを蹴散らして現れた二人に、複雑な感情になる。
「くそっ、今は助かった。だが、キサマら」
「ファウスト殿下、糾弾は後ほど。いまはこの窮地を脱することに集中しましょう」
「・・・・・・」
フェルディナンドの正論に、今は従う他なく、協力して鬼たちを全滅させる。
西門側より騒がしい声がする。
どうやら、鬼たちも誘導されたことに気付きだしたのかもしれない。
すると、本丸横の小城の屋根が爆発した。
たぶん、ジュンペイ殿だろう。
いよいよ、脱出を急がなければ。
それを察したかのように、フェルディナンドは倒れたアズベルを肩にかかえる。
ヴァーミッドを先頭に、モザークの森がある東門へと走り出す。
途中、後方で大爆発が起こり驚きもしたが、立ち止まることなく走り続け、無事ズマ城より脱出した。
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「ふぅー、、、無事だったみたいだな」
いち早く森へと到着したオレは、マップレーダーで動きをトレースしている王子一行を先回りして出迎えていた。
「はぁ、はぁ、、、そちらも派手にやったみたいだな」
息を切らしながらもニヤリと笑う王子。
そして、ゆっくりとアズベルを降ろすフェルディナンド。
「ハ、ハハ。ボクは勝ち逃げされてしまった気分です・・・」
辛うじて意識を取り戻したアズベルは、技量で少し劣っていた自覚があるのか、悔しそうにしている。
「ふぅー、、、試合じゃねぇんだ。そんなこと言ってるから負けてるんだよ。ほら、これ飲んどけ」
高級ハイマナポーションをアズベルの口へと突っ込む。
「ジュンペイくん、君だったのか・・・いろいろと言いたいことはお互いにあるのだろうが、今は部下たちの仇を討っていただき心より礼をいう、有り難う」
ボロボロな姿とフェルディナンドだが、そのイケオジっぷりは健在だ。
無口なヴァーミッドと共に、敬意を払い一礼される。
「礼を言われるほど、立派な思惑で動いた訳じゃないよ。オレも謝る気はないので、お互い借り貸しは無しってことで。けど、いいですか?このまま戻ってしまって」
ザンダ採掘場の件は、オレも謝罪する気はない。
だが、暗躍が明るみになった二人は、国に帰れば確実に重い処罰が下ることだろう。
「王子殿下の前でなんだが・・・今でもコーヴァを思えば間違えていたとは思っていない。だが、ここで私たちが逃げれば、あの夜襲で死んでしまった部下たちの名誉を裏切ることになってしまう。だから謹んで裁きを受けようと思う」
真剣に覚悟を決めた二人のオジサン。
これ以上、なにかを言うのは野暮ってもんだ。
空気を察したのか、王子も黙っている。
「ふぅー、、、オレが仕切るのも変だけど、まだ安全って訳じゃねぇ。コーヴァの街まで戻るとしよう。ほれ、アズベルも歩けるか?」
そしてオレ達は、ハンター達と合流して無事街まで帰還することが出来た。
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LV59 ジュンペイ 32歳
クラス:[奇術師]A
職業: Dランク ハンター
フィジカル:B-
メンタル:A
称号:[怪盗][五氏族殺し][対師団級]
[城落とし]
固有仕様:[最適化][ストレージ]
[マップレーダー]
[サポートシステム」[合体モード]
固有スキル:[リロード][アクセレーター]
[テンカウント][グライドシステム]
[ミラージュ][サイレンサー]
[ブラスト][ペルソナ]
ポイント:370P
カテゴリースキル:[奇術師A][商人C]
[魔法使いF]
装備: デザートイーグル50AE
黒鉄の短剣
巴百式
トレント樹脂の胸当て
トレント樹脂の小手
トレント樹脂の脛当て
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