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24:撃っちゃうんだな、これが






 「突然付き合わせてしまって申し訳ない。どうしてもアナタと二人っきりで話しがしたくてね」


 口調は柔らかいが、油断のならない緊張感はそのままだ。


 オレの前を誘導するように歩くアズベルは、誰もいない街の外までオレを連れ出すようだ。


 あ、オコなのですね

 分かります、、、


 それにしても、視察団の到着は5日後だと聞いている。

 てっきり護衛をかねて、お偉いさんと一緒に来るものだと考えていたので、お忍びで先行しているとは驚きだ。

 そんなことしてるから、疑いがかかんだよ


 「ふぅー、、、気にすんなよ♪まだまだ夜は長いんだ。マッタリ過ごそうぜ」


 酒場からテイクアウトしたワイン瓶をラッパ飲みでグビッとする。


 <なぁ、いっそこのまま後ろからバキュンしてまわへんか?専用装備は持ってないみたいやけど、化け物やで、コイツ>


 化け物じゃねぇよ。

 主人公だろ、コイツは。

 たぶん、そんなことしても絶対当たらねぇよ。

 それが主人公補正ってヤツさ。

 まぁ、どう足掻いても勝つことも逃げることも出来ねぇんだ。

 なるようにしか、ならんだろ。


 街より少し離れた草原。

 見渡しの良いこの場所では、隠れることも不可能なので、オレ達以外誰もいない。


 足を止めるアズベル。

 オレもそれに合わせ、5mくらいの距離を空けたまま立ち止まる。


 「今さらですけど、この外套には認識阻害の効果があるのですが、よくボクだと分かりましたね」


 振り返り、フードを下ろして顔を出すアズベル。

 それとタイミングを合わせたように、曇り空は晴れ、月明かりがスポットライトのようにアズベルを照らす。


 マジもんの主人公や~


 身長は180cmくらいだろうか。

 23歳とは聞いていたが、高校生でも通りそうなほどに若々しい。

 優しげな目元に月光に輝くブロンド。

 その姿は、男のオレですら見とれてしまいそうなほど、整ったキレイな顔立ちをしている。


 「不公平だっ!」


 突然のオレの叫びに、目を丸くするアズベル。


 「不公平だっ!どこで間違った?、、、ここまでとは言わないが、どこでこんなに汚れっちまった?不公平だっ!!」


 完全にひがみである。

 キレイなモノに向かい合うことで、己の汚れっぷりを自覚して、それを認めたくないばっかりに、ゴロンゴロンと転がりながら駄々をこねる。

 そして、ひとしきり満足したところで、立ち上がって砂を払い、タバコを取り出して火をつける。


 そして、シレッと話しかけた。


 「ふぅー、、、そういうのが得意なんだよ。オレはジュンペイ、奇術師だ。勇者様ってのは名乗りもしねぇのか?」


 <今さら対抗してカッコつけても、哀れなだけやで>


 だまらっしゃいっ!

 いま、自分を保つのに必死なのっ!!


 「これは失礼。確かに礼を欠きましたね。ボクはアシノミヤ王国、聖護騎士団団長アズベル。重ねてこんなところまでお付き合い願い、申し訳ありません」


 コイツ、、、

 、、、キレイだ

 緊張感は保ったままだというのに、

 なんだろ?

 性格の良さが滲み出ているというか、

 全く擦れていないというか、

 少しキレイ過ぎて怖いくらいだ。


 「へーへー、そうですか。で、そのお偉い勇者様が、こんなとこに連れ出して、ネタにされた屈辱に、オレをボコッて腹癒せでもしたいのかな?」


 「まさか。むしろ友達になりたくて誘ったんだ、、、アナタが言っていたことを否定する気はないし、怒ってもいないさ。そんなことより、あんなふうにボクをただの男として扱ってくれたのが嬉しくてね、大げさに聞こえるけど、師匠以外ではアナタが初めてなんだよ。だから興味が沸いたんだ」


 良かったぁ~

 正直、内心バクバクだったの。

 殺されちゃうかと思った。

 セェ~フゥ


 「その割にはシチュエーションが噛み合ってないぞ。言っておくがオレは弱いんで暴力は無しでお、」


 <っ!ぺーはんっ!!>


 サポ助の一喝と共に、アズベルが放とうとしている細いレーザー光線のような軌跡が攻撃予測ARとして表示される。


 「クッ!」


 オレは形振り構わずに、緊急回避で横へと飛ぶ。

 そして、いつでもデザートイーグルを抜けるように右手を背中へとまわし、アズベルを睨みつける。

 

 「・・・・・・ハメられたのか」


 確信犯のようにニコッと微笑むアズベル。

 どうやらフェイントで、試されたようだ。


 「やっぱりね。今の殺気を感知して動けるなんて達人の域ですよ。思った通りだ、、、ボクはただ、語らいたいんです。アナタを知りたい、ボクを知ってもらいたい。だから、、、いきますっ」


 アズベルの重心が、踏み込む体勢へと移行する。


 アクセレーター全開の緩やかな時間。

 すでにサポ助合体は行っている。

 そんなテメェ勝手な理由に付き合ってやる必要はない。

 命の危険がないのなら、さっさとやられてラキシスに泣きついてやるんだっ、と思う反面、少しだけ興味もある。

 最強の強さ。

 この国で4人しかいない次元の違うAランクホルダー。

 その中でも最強と呼ばれる者の力だ。

 アズベルではないが、オレもコイツを知ってみたい。


 ヤツは聖騎士。

 本来のスタイルは、大きな盾を活かして剣で戦うと聞いている。

 どこかの団長さんみたいだ。

 だが、今は専用装備は無く、素手で殴り掛かって来るようだ。


 攻撃予測がAR表示される。

 顔面や腹、スネなど予測が絞りきれないのか、複数の表示に面を食らう。


 どんだけバリエーション豊富なんだよっ!

 いつでも攻撃内容を変化出来るってことか?


 踏み込んだアズベルの姿が消えたかに見えた。


 速っ!

 サポ助、30%だっ


 身体能力のリミッターを開きながら、斜め後方へと飛ぶ。

 だが、すぐにまたアズベルからの攻撃予測ARが飛んで来る。


 反応、速っ!

 けど、今度は攻撃予測が顔面1つに絞れている。


 無理な体勢ながらも、予測ARに合わせて、いままで出番の無かった[風魔の小盾]でガードする。


 「?、、ぐわぁっ!」


 足を払われて尻餅をつかされる。

 どうやら、右手のパンチにオレが反応したので、しゃがんでの回し足払いに攻撃を変更されたようだ。


 くそっ、全然反応出来ねぇ

 オレのダメなところが浮き彫りになっちまう。

 圧倒的な身体能力で臨機応変に対応されたら、ARスタイルでも意味はないってことか。

 それ以前にARの精度は、オレの経験が反映されているので、まだまだ戦闘経験不足ってことだ。


 「スミマセン。当てる気はなかったのですが、余りにも反応が良くて、つい」


 尻餅のついたオレに、右手を差しだして謝罪するアズベル。

 その完璧超人で爽やかな雰囲気が、逆にオレを逆撫でした。


 余裕かましやがって、、、


 予定変更

 先のことなどどうでもいいっ

 ゼッテェ、一泡吹かせてやる!


 オレは差し出された右手を無視して、自分で立ち上がりながら話し出す。


 「けっ、テメェーで仕掛けといてご立派なことだぜ。オマエは稽古でもつけてやるくらいの軽いノリなのかもしれんが、真っ平御免だ。売られた喧嘩だ、どうなっても文句言うんじゃねぇぞ、、、そこにいるんだろっ!?ラキシスもいいな!」


 「えっ!?」


 オレは左の方向へと顔を向けて、ラキシスへと問いかける。

 アズベルは驚き、オレの視線を追いかけてそちらへと顔を向ける。


 「おりゃっ!」


 「えっ!?」


 その動作と同時に、アズベルへと殴りかかるが、クリーンヒットはせずに掠る程度でかわされてしまう。


 なんちゅう反応速度だ。

 はい、嘘です。

 ベタな騙し討ちです。

 汚いですが、なにか?

 知ったことか

 オレはオマエを倒したいんだよ!

 サポ助、全身の主制御は任せる!

 50%でコイツを押し込めっ


 <うしゃ!いくでぇ>


 休む間もなく、見事な連続攻撃でアズベルを押し込んだいく、オレ。

 まるでロデオに振り回されているような気分だが、不意を突かれたアズベルに少しだけ焦りの色が見える。

 それでも一度もガードすることなく、全てをかわしていくアズベルの実力は、やはり相当なものなのだろう。


 「く、こんな動きまで出来るのですか。奇襲とはいえ、ボクに攻撃を当てた人も師匠以外では初めてです。ボクも全力で、」


 「るっせぇ、もう終わりだよ」


 かわしつつ体勢を整えたアズベルは楽しくなってきたのか、笑顔で本気宣言をしようとするが、その時にはもう、オレの仕込みは終わっていた。


 オレ達の足下より様々な色の煙が立ち昇り、視界を塞ぐ。

 

 「なっ!」


 驚愕するアズベルを余所に、AR表示されたアズベルの人型へと殴り掛かる。


 しかし、アズベルも視界を塞がれたとはいえ、オレのその気配を感じたのか、動揺を抑えて、カウンターで反撃を入れるつもりのようだ。


 コンマ数秒の世界。


 アズベルの顔が見えるほどに接近した瞬間、勝ちを核心したアズベルの口角が少しだけ上がった。


 その瞬間、



===ジィリリリィィィィィ!!!!===



 大音量の目覚まし時計のベルが、アズベルの足下で鳴り響く。


 「っっ!!」


 「オゥリャッッ!!」


 オレはそんな大音量など気にもせずに、驚いたアズベルの頬を70%の力で打ち抜いた。


 ドサッ!!


 吹き飛ぶアズベル。


 だが、


 「痛ってぇぇぇ!!」


 オレが右手をかばいながら、ゴロゴロと転げ回る。


 <な?50%以上はアカンって言ったやん。下手したら筋が切れてヤバイことになるよ>


 うん、そうする

 マジで痛ぇぇ

 腕もそうだが、拳にヒビが入ったんじゃねぇかと思うほどに痛い。

 

 くっそぉ~、と思いながら上半身を起こすと、そんなオレの様子を、同じく上半身だけ起こして、鼻血も拭かずに放心状態で見つめるアズベルと向かい合わせとなった。


 「・・・・・・」

 「・・・・・・」


 しばらく無言で見つめ合ったが、オレはタバコを取り出して火をつけた。


 「ふぅー、、、ザマァみろだ。今回はこれくらいで勘弁してやる。こ、これに懲りたら軽率に人を襲ってはいけないよ。フハハハ」


 先に勝ち鬨をあげる。


 <ぺーはん、流石に小者っぷりがハンパないよ。勘弁もなにも、向こうはまともに攻撃もしてないし、手加減丸出しやで。たぶん本気だされたら、瞬殺やで、瞬殺>


 だまらっしゃいっ

 いま、自分のプライドと、襲って来ませんように!っていうのがグルグルしてるの。

 お願いだから、これで終わりたいんだよっ!


 下を向くアズベル。

 そして、


 「フ、フハハハ、、、、」


 笑い出した。


 怖っ

 壊れた!

 逃げろっ!


 飛び上がるように立ち上がって、必死に逃げだそうと背を向けた瞬間、


 「凄いですっ!感動ですっ!!お強いのですねっ、ジュンペイさんっ!!」


 キラッキラした目で、両手を握られた。


 ぇぇぇ~、、、

 いつの間に正面に回り込まれたの?

 両手掴まれてるし、、、

 つか、これが本気のスピード?

 全然、分かんなかったんですけど、、、


 「本当に師匠以外でダメージを受けたのは初めてです!凄いですよ、ジュンペイさんっ!キングスナイトの誰一人、ボクに攻撃を当てることも出来ないのですよ!それを当てたうえに、クリーンヒットまでさせるなんてっ!!あれ、あれはなんですか?煙幕やあのベルの音、どうやったんですか?魔法じゃなさそうですし」


 さらにキラッキラしながら詰め寄って来る。


 いや、オレが言うのもなんですが、まともに攻撃してないですからね。

 全て卑怯な騙し討ちですからね。

 そんな純粋に感心されると、逆に非難されているように聞こえちゃうんだからね。


 全ては一ヶ月前に手に入れた称号[魔導姫の救済]から作り出した、新しいオリジナルスキルの力だ。


 「お、おう。奇術師が種明かしなんてする訳ないだろ。つか、オマエ、キャラ変わってない?すっげぇ可愛くなってんですけど、、、」


 身長こそ高いが、張りつめた緊張感のようなモノが無くなって、顔がキレ可愛いだけに大型犬に懐かれている感じだ。


 「あ、これが素なんです。普段は騎士団長ってことで、いつも周りに凛としてくださいって怒られるんですよ。それでジュンペイさん、ボクの初めてのお友達になってください」


 「イヤだよ、バァ~カ。テメェなんて大嫌いだ」


 オレはアズベルの両手を振り解いて、タバコに火をつける。


 くそ、あの手でラキシスの、、、

 収まるのかな?、、、

 、、、収まるのかな?

 チィッックショォォォ!!

 羨ましぃぃ!!


 「アナタだけなんですっ!アナタだけがボクの理解者なんですっ!!」


 「へ?」


 顔を赤らめて真っ直ぐに見つめられる。


 「自惚れる訳ではないのですが、ボクは有名です。媚びるにしろ、利用するにしろ、ボクという偶像でしか、人はボクを判断しない、、、けど、ジュンペイさんっ!アナタはっ!」


 これは予想外、、、

 、、、、、心なしか月は陰り、雲行きも怪しくなってきた。


 「もう一度言います。ボクと友達になってくださぃっ!」


 そのままの勢いで、ハグされた。


 「ヒッ!」


 反射的に、膝でアズベルの股間を蹴り上げる。


 「ハヌゥッ!」


 股間をおさえ、内股で崩れ落ちるアズベル。


 「ハァ、ハァ、、、ビックリした。展開に頭がついていかねぇ、、、なに?どういうこと?キモいんだよ、オマエ」


 一瞬、マジで死を覚悟したほどのコイツの殺気。

 オレの全力の動きでも、全く対処出来なかったアズベルのスピード。

 そして、ハグ。

 緩急が効き過ぎて、動揺が隠せない。


 うずくまるアズベルを見下ろしながら、タバコをくわえる。


 「ぅぅ、、、これです。こういうとこです!ボクに対して全く物怖じしないこの感じ!師匠とラキ姉くらいです、こんなの」


 股間をさすりながら立ち上がり、またも興奮し出すアズベル。


 「ふぅー、、、ぇぇ~と、、、M、なの?」


 ジリジリにじみ寄るアズベルから一定距離を保つように後退する。


 「違いますっ!、、、ぃぇ、チョットそうかもしれませんが、違います。たぶん?、、、けど、そうじゃないんですっ。ボクはアナタと友達に、」


 「いや、だから!?、、、ふぅー、まぁ、なんとなく状況はつかめてきたけど、イヤです。無理です。キモいです。男色の気はないです。老後の楽しみです。オレ、オマエ、嫌い、じゃあな」


 つまりは、オレがさっきギルドで調子乗って言ってた内容が図星で、普段普通に接するヤツが、今までいなかったってことだろ?

 え?

 そんなことで感銘受ける?

 あ、

 そう言えば、常識に疎いってミッシェルが言ってたな。

 けどさぁ~

 それにしたって、こんなとこまで来ずにギルドで普通に話せよ、まぁ結果は同じだけど。


 オレが街へとスタコラ戻り出すと、それに続いて後ろでノーマルをアピールしてくるアズベル。


 だから、そうじゃないんだよ!

 オレがオマエを嫌いなのはっ!!


 もう、面倒臭いのではっきりと言ってやる。


 「ふぅー、、、オマエは敵だ。けっ、ラキ姉?なめんなっ!羨ましい、、、あの、あの爆乳がオマエのモノだと思うだけで、、、くそっ!ちくしょぉぉ!ちくしょぉぉぉ!!」


 また、ゴロゴロと転げ回る。

 あ、

 また我慢出来ずに興奮してしまった。


 すぐに立ち上がり、今度こそ冷静に別れを告げる。


 「ふぅー、、、勇者様。アンタのように[持てる者]に[持てない者]の気持ちなんて分かんねぇよ。オレ等虫けらは最下層でウダウダ僻んでるだけの存在だ。そこにオマエのような光り輝く者が、気まぐれに降りて来られても、それだけでオレ達は嫉妬の炎で身を焦がして自滅しちまうんだよ。だからアンタは近付くな。幸せな光の世界で、オレ達が思い描く理想を、どうぞ心行くまでお楽しみ下さい。さようなら。二度と関わらないで下さい」


 「・・・・・・」


 キレイにお辞儀して、その場を離れる。

 アズベルも流石に空気を読んだのか、下を向いて追いかけては来ない。


 その様子に少しだけ胸は痛んだが、無理でしょ?

 好きなアイドルの旦那をひがんでネタにしてたら、旦那登場で、怒られるんじゃなく、友達になって下さい?

 誰得?

 そんなの。

 お互いに傷つくだけでしょ?

 主にこっちだけど。


 そんなふうに自分を正当化しながら街へと歩いていると、不覚にもアズベルより漏れ出た声をひろってしまった。


 「、、、、、ないですよ」ボソッ


 「っ!」


 足を止めた。

 そしてゆっくりと振り返り、アズベルへと問いかける。


 「いま、なんて言った?、、、そ、そんなこと、ある訳ないだろ?」


 オレは狼狽えた。

 しかし、アズベルはそんなオレの様子になど見向きもせず、先ほどと同じく下を向いたまま、ワナワナと肩を震わして絞り出すように言葉を続けた。


 「したこと、ないですよ、、、なんでそんなこと言うんですか?アナタが言う[持てる者]というのは童貞のことですか?ジュンペイさんっ、アナタも童貞ですか!?では、どちらが勝ち組なんですか!?答えて下さいっ!!」


 「っ!!!」


 段々と声を荒らげ、こちらを睨みつけるアズベル。


 「い、いや、、、そんな、、え?23だろ?、、つか、結婚してんだろっ!そんな見え透いた嘘、ついてんじゃねぇよ」


 動揺こそしたが、段々と腹が立ってきた。

 ズカズカとアズベルへと歩み寄る。


 「、、、不能、なんです」ボソッ


 「っ!!!」


 その呟きに頭が真っ白になってしまう。

 そしてアズベルは、地面へとしゃがみ、指で地面にモジモジと何かを描きながら話し始めた。


 「別にいつもという訳じゃないんです、、、ボクは師匠との暮らしが長くて、彼が作る創作物に囲まれて育ちました。師匠は芸術家でもあり、その作品は素晴らしいものでした。ボクの初恋です、、、16歳になり、初めて山を下りて師匠以外の人達に出会いました。なかには美しいと思える女性たちもいましたが、ボクの心は震わないのです。そんな時、ラキ姉に出会いました。驚きました。まるで師匠が作り出した立体物のようでした。必死に求婚して、なんとか結婚までしましたが、いざ、その時になると、、、」


 「け、けど、オマエ、、、それまでに、いくらだってチャンスはあったろ?それこそラキシス以外とだって」


 「いいえ、ラキ姉はボクが求婚すると、すぐに王都を離れてしまいましたので、、、結婚だってボクが強引に押し掛けて、周囲のプレッシャーから半ば仕方がなく、というのも知っています。ですが、それでも良かった!ラキ姉といられるのなら!!他の女性から誘惑を受けたことなど沢山あります。でも、ダメなんですっ!ラキ姉じゃないとっ!ピクリとも動きません!!」


 「・・・・・」


 なにも言えずに、ふと視線を落としてみると、そこには立派な萌えキャラが描かれていた。

 

 、、、ぇぇ~

 もしかして、勇者アズベルって、、、


 「師匠の作品にしかダメなんです。そんなボクが唯一反応できるのがラキ姉なんです」


 筋金入りの二次元の住人なのですね(汗

 分かります、、、

 つかっ、何者!?その師匠!


 だが、


 「贅沢言ってんじゃねぇよ!そのラキシスと結婚したんじゃねぇかっ!あ~、肩凝っただろ?どれ、とか言ってその下までマッサージしてんだろ!?顔に挟んで寄生獣ゴッコして楽しんでるだろ!?シスター服着せて、首からぶら下げてるクロスを探したりしてんだろがっ!羨ましぃぃぃ、、、オレも山脈越しにメガネ見てぇぇぇ」


 <ぺーはん、願望出てもてるよ>


 だまらっしゃいっ

 これで落ち着いていられるかっ


 「それっ!それなんです!ボクもそういうのがいいんです!!、、、ですが、ラキ姉は、そういったことにロマンを求めていまして、、、何度かあったチャンスの時には、アロマキャンドルにワインから始まり、ムードやシチュエーションが最優先で、当てがうだけで揉むことすら許されません、、、ボクも、師匠の描く絵本みたいなことがしたいんです!けど、そんなことをラキ姉にお願いする勇気はボクには無いんですっ!そしてグルグル考えて緊張して、いつもダメで、、、そして、ラキ姉が寝てから、ボ、ボクは、、、トイレで、一人、ひ、ひとりで、、、うっ、、、」


 「アズベルっ!」


 ガバッ


 オレはアズベルの頭を抱きしめた。


 「ボ、ボクはひっ、ひとりで、、、グス」


 「もういい、、、もう、なにも言うな。疑って済まなかった。今は黙ってろ、、、有り難う、アズベル。オレはオマエを勇者だと認めるよ」


 「ジュ、ジュンペイさん、、、」


 オレの胸で嗚咽し、小さく震えるこの漢を、力一杯抱きしめた。





 しばらくして、




 「こんなもんか?」


 「いえ、もう少し大きいですよ」


 オレ達は酒を飲みながら、足下の土を集めて、2つのお山を作っていた。


 、、、なるほど

 こうして見ると富士山に人が集まる理由がよく分かる。


 「でだ、少なからずそういうチャンスがあったからには、ラキシスも覚悟を決めてのことだろ?ってことは、オマエも遠慮せずにオラオラいくべきなんだよ。だってよく考えてみろよ。あ~ゆ~タイプは強気でグイグイ来られるのに弱いんだよ。昔の人は言ってたぜ、イヤよイヤよも好きのうちってさ。ふぅー、、、アズベル。オマエもう今から帰って押し倒しちまえよ、、、今頃サブマスの執務室で事務仕事でもしてんだろ?そこ行って、ガバッていっちまえ。なぁ~に、下は酔っ払いが騒いでるから誰も来やしねぇし、声も聞こえねぇよ。本当にラキシスのことを愛してるなら顔色伺ってねぇで、ガヴァッていっちまえ、ガヴァッてっ!途中で引くんじゃねぇぞ!いくら嫌がっても、それは羞恥心から来る本心じゃねぇ!女に恥じをかかせるなっ!!グヴァッてズンドコ逝って来いっ!!」


 「な、なるほど、ヒックッ、、、確かに一理あります。でも、、、」


 オレのアドバイスを酔っぱらいながらも聞き入るアズベル。


 よし

 あと少しだ、、、


 「バーロー、嫁だぜ、嫁っ!その辺の見ず知らずの女を襲うのとは意味が違うんだよっ!もうこれ以上、童貞と処女をこじらす方が問題だ。ふぅー、、、あの大きな机で、タイトスカートのスーツ姿。夢にまで見た着衣プレイ、、、なんだろ?」


 その言葉が引き金となった。


 アズベルはオレが差し出すワイン瓶を、一気に飲み干して立ち上がる。


 「はいっ!ボク、逝ってきます!!ヒックッ、有り難うございます、ジュンペイさん!ラキ姉、愛してるよぉぉ」


 アズベルは酔っ払いながらも、凄いスピードで街へと走って行った。


 ニヤリ


 くっくく、、、

 そんな訳ねぇだろ。

 あのラキシスなら、そんな強姦まがいに襲われたら、マジ引きするに決まってんじゃねぇか。

 くっくく、、、

 オレ、タスケル、オマエ、キラワレル、ナグサメル、イタダキマス、、、

 くっくく、、、

 完璧だっ!

 完璧なNTR計略だっ!

 もうすぐ、ラキシスがオレのものに、、、


 さて、

 こうしちゃいられない。

 オレもギルド行って、ポロリのタイミングで突入せねば。



 「待ってろよぉぉ、、、奇跡の子供たち!不死鳥狩りじゃ」







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― 新着の感想 ―
[一言] 素晴らしい小物っぷり、アッパレです。 そして勇者を利用してNTR狙うのも人としてどうかしていますし、、、 ((゜艸゜)フフフ
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